みかん小説
本棚

"銀行にいた偽妻" 第5話

「泳がせたいんです」

その言葉をにした、かよ子自番驚いていた。

37、夫へ逆らうことを避けてきた自分が、今は夫を罠へ誘い込もうとしている。

「彼らに、計画がまだ成功する能性があるとわせたい。それで油断すれば、必ず何か残すはずです」

「危険です」

法務部の女性は真剣な顔で言った。

「奥様のおっしゃる通り、計画為である能性があります。私どもとしても、むやみにご自かれることはお勧めできません」

「分かっています」

かよ子はがった。

もうは震えていなかった。

「だから今のことを、しばらく主にはらせないでいただけますか。もちろんとして必な対応はしてください。ただ、私がここへ来たことだけは伏せていただきたいんです」

は法務部の女性と線を交わした。

やがて女性が静かに頷いた。

「承しました。内部で慎に対応いたします」

「ありがとうございます」

かよ子はげた。

応接、もう度だけVIPブースが見えた。

とあの女ががっている。

女は腕を組むようにして夫へ寄り添っていた。

その背を見ても、今度は胸が潰れるような痛みはなかった。

あるのは、これから全てを確かめるという決だけだった。

の裏からると、の空が広がっていた。

広告

たいが頬へ当たった。

かよ子はさく呟いた。

「分かったわ、あなた」

37、何もらない妻を演じてきた。

ならば、もうしだけ続ければいい。

夫が最も油断する、その瞬まで。

自宅へ戻ったかよ子は、玄関でしばらくち止まった。

朝までと何つ変わっていない部

族写真。

夫婦で選んだソファ。

使ってきた卓。

それなのに全てが突然、らないのように見えた。

壁の写真では、剣族に囲まれて笑っている。

その笑顔さえ、今はい仮面のようだった。

かよ子はコートを脱ぎ、迷わず斎へ向かった。

が仕事をする部へ入ることは、ほとんどなかった。

「仕事のものがいから、触らないでくれ」

そう言われて以来、掃除も最限しかしていない。

ドアをける。

古いと本のにおいがした。

きな机。

面の棚。

パソコン。

見すると、几帳面な剣らしく全てがえられていた。

かよ子は壁際のキャビネットへ向かった。

な契約類を保管している所だった。

鍵はかかっていなかった。

は妻がここをけるなど、考えたことさえなかったのだろう。

その油断が、初めてかよ子の方になった。

引きしをける。

保険。

産。

投資信託。

会社関係。

様々なファイルが並んでいる。

かよ子は「個資産関連」とかれた分いファイルを取りした。

広告

ページをめくる。

見覚えのない投資信託。

産。

共同名義。

そして、そこに何度も自分の名があった。

斎藤かよ子。

署名もある。

もある。

しかし、契約した記憶がない。

かよ子は震える指でを追った。

すると半付が記された1枚でが止まった。

そこには、自分名義の資産について、夫である剣へ広範囲な管理権限を与える内容が記されていた。

署名は、確かにかよ子自跡だった。

「そんな……」

記憶をたどる。

が何枚もの類を持ってリビングへ来た。

「急ぎなんだ。ここに署名と印鑑を頼む」

「何の類?」

「会社の保証関係だよ。いつものだ」

テレビを見ていたかよ子は、く考えずに署名した。

夫を信じていた。

いや、読みもしない自分を「夫を信じる妻」だとい込んでいた。

ページをめくると、額な命保険の証券もあった。

受取は剣

それ自体がただちに異常とは言えないが、契約したの記憶は曖昧だった。

そしてファイルの底。

類とはらかに違うが1枚挟まっていた。

所にある総病院のロゴ。

かよ子はそれを取りした。

診断だった。

患者氏名。

斎藤かよ子。

目をへ移した瞬、呼吸が止まった。

アルツハイマー型認症、初期段階の疑い。

来事に関する記憶障害。

所に関する混乱。

判断能力の

な財産管理については、族の支援のもとでうことが望ましい。

かよ子は、その病院でそのような診察を受けたことが度もなかった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: