みかん小説
本棚

"消された妻の逆転乾杯" 第8話

「署名の件は、庭のためだとったんだ。母さんの介護があっただろう。おが仕事へ戻ったら困るとって――」

私はそこで初めて、孝志が本当に何も理解していないのだと分かった。17私の選択肢を奪ったことも、技術を自分の功績として使ったことも、本では「族のため」という都のいい言葉で処理されていた。悪だけでやったのではないからこそ、これまで何度説しても届かなかったのだろう。

「35も夫婦だったんだ。やり直せるだろう」

「そのうち17、あなたは私の仕事を自分のものとして使ったわ」

「これからは切にする。会社だって処分が決まったわけじゃないし、会緒に謝りにけば――」

「肩きもリナさんも失ったから、今度は私が必になっただけでしょう」

孝志は黙り込んだ。その沈黙だけで、答えは分だった。

私はあらかじめ用していた婚届と弁護士の連絡先をテーブルへ置いた。財産関係も調べてあり、今んでいるは父から相続したに、私自が働いていた頃の貯蓄と相続資きく入れて建てたものだった。孝志の持分については清算するが、は退してもらう方針だと伝えた。

「65歳の俺を追いすのか」

「62歳の私を、祝賀会でとして扱ったのはあなたよ」

「俺にはもう仕事ももないんだぞ」

広告

「私も17、仕事を失ったわ。それでもあなたは『庭があるからいいだろう』と言ったでしょう」

孝志はしばらく座ったままかなかった。やがて「せめて事だけでも作ってくれないか」「俺は事なんて何も分からない」とさな声で言ったので、私はしだけしくなった。35緒に暮らして、最に夫が妻へ求めたものが、ではなく事と活の世話だったことが、何より私たちの結婚を表している気がした。

「覚えてください。私も17ぶりに仕事を覚え直します」

「本当に婚するのか」

「はい。今度は、自分で決めました」

数か、孝志は懲戒解雇となった。正経費の部は会社へ返還することになり、退職半も清算や弁護士費用に消えた。リナも会社を退職し、会社経費で購入されたと認定された額な宝飾品について返還を求められた。

婚協議は引いたが、私は度も以活へ戻りたいとはわなかった。35というが無駄だったとは考えていないし、若い頃の孝志まで全部が嘘だったともわない。ただ、で変わるし、その変化に付きい続ける義務まで結婚に含まれているわけではない。

婚が成したの帰り、私は役所のち止まった。空はよくれており、特別な音楽も劇来事もなかったが、自分の名かれた類を自分ので受け取る覚だけが妙に鮮だった。

広告

誰かの妻ではなく。

誰かの介護者でもなく。

誰かの功績をで作るでもない。

久しぶりに、私は佐というへ戻った。

黒川から正式な連絡が来たのは、婚が成するだった。会社は過発記録を調査し、ライフサイン初期設計における私の寄与を正式に認め、社内資料や技術史の記録を訂正すると決定したという。さらに、再発防止のため発成果の作成履歴や共同研究者の管理方法も見直されることになった。

私は会社から提示された常勤顧問の話を断った。

代わりに、介護施設やの医療器メーカーへ全設計の助言をう、さな個事務所をくことにした。17の空を埋めるため、最規格やセンサー技術を学び直し、若い技術者に教えてもらうことも恥ずかしがらなかった。

最初の数か変だった。専用語の部は変わり、ソフトウェアも昔とはまるで違い、オンライン会議つ設定するにも娘へ話することがあった。それでも夜まで孝志の資料を作っていた頃とは違い、疲れていても議と気持ちは軽かった。

ある介護施設から相談を受けた、80代の女性利用者が夜に何度もベッドからがろうとするため、転倒リスクを減らしたいという話があった。私は現を運び、センサーだけを増やすのではなく、本がなぜ夜に起きるのかまで確認した。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: