"ETCに残らない白バイ" 第7話
そしてさく言った。
「分かっていました」
「何がです?」
「いつか、このが来るとっていました」
10閉ざされていた扉が、そこで初めていた。
阪府内の警察施設にある取調で、酒井誠は刑事たちと向きった。
机のには必最限の類しか置かれていない。
酒井は何度も両を組み直し、線を落とした。
刑事が静かに尋ねた。
「2003412、湾岸幕張パーキングエリアへきましたね」
酒井はすぐには答えなかった。
「千葉運輸の配送が映像に残っています」
沈黙。
「当、あなたは配送ドライバーでした」
酒井の肩がわずかにした。
「島さんをっていますか」
いが過ぎた、酒井はさく息を吐いた。
「あの、初めて見ました」
刑事は酒井の顔を見た。
「話してください」
酒井はゆっくりをいた。
「配送の途でした。トイレにきたくなって、幕張のパーキングエリアへ寄ったんです」
午1050分頃。
酒井は会社のいワゴンを駐した。
仕事は予定通りんでおり、特に急ぐ理由もなかった。
建物へ入り、トイレを済ませた。
へようとした、女性のバイ隊員が入ってくるのを見た。
島だった。
「バイを見て……気になったんです」
酒井は両を見つめた。
「子供の頃から、バイクが好きでした。特にバイは、度くで見てみたいとっていました」
広告
が女子トイレへ入る。
酒井はへた。
駐にはいバイクが残っていた。
誰もくにいないように見えた。
「くへきました」
最初は見るだけだったという。
型の体。
警察装備。
通常のバイクとは違う操作器。
酒井は周囲を確認し、ハンドルへ触れた。
「乗ってみたいといました」
刑事が聞いた。
「盗むつもりだったんですか」
「違います」
酒井はすぐに首を振った。
「最初は本当に、そんなつもりじゃなかった。ちょっと触って、しだけまたがってみようとっただけです」
しかし興は止まらなかった。
操作部分へを伸ばした。
エンジンをかけてみようとした。
そのだった。
「何をしているんですか」
背から女性の声がした。
振り返るとがっていた。
酒井がバイへ触れているのを見つけ、急いでづいてきたのだ。
「れてください」
は警察官として酒井を制止した。
「これは警察両です。あなた、何をしているんですか」
酒井はパニックになったと話した。
過に暴事件で逮捕されている。
執猶予を受けた経験もある。
警察官に見つかった。
また捕まる。
仕事を失う。
その考えが気にへ浮かんだ。
「逃げようといました。でも島さんが止めようとして」
は無線へを伸ばした。
酒井はそれを止めた。
「それで?」
刑事の声がしくなった。
広告
「抑えました」
「どうやって」
酒井は目を閉じた。
「を塞いで……声をされないようにしました」
は抵抗した。
訓練を受けた警察官だった。
しかし酒井の方が体格はきく、力もかった。
激しく抵抗するを、酒井は建物の角から駐側へ連れていった。
「自分のワゴンに乗せました」
取調が静かになった。
「きていたんですね」
「はい」
「その点では」
「はい」
酒井の声が震えた。
は内でも抵抗し続けた。
助けを呼ぼうとした。
へようとした。
酒井はさらに追い詰められた。
「ロープを使いました」
配送用としてに積んであったものだった。
のきを抑え、元にもテープを貼った。
「彼女の目を覚えています」
酒井は両で顔を覆った。
「っていました。怖がってもいた。でも……俺をじっと見ていました」
別では、正志が許を得て取り調べの経過を見守っていた。
酒井の声が聞こえるたび、握った拳に力が入った。
10像し続けた。
は事故に遭ったのか。
誰かに連れられたのか。
どこかで助けを待っているのか。
今、その答えがしずつ目のに現れていた。
刑事が続けた。
「その、バイを運転したのはあなたですね」
酒井は頷いた。
「はい」
「なぜです?」
「残しておいたら、すぐに警察が来るとったからです」
をワゴンへ押し込んだ、酒井はバイをそのから移さなければならないと考えた。
内には配送作業に着ていた濃いの作業があった。
顔を隠すためにヘルメットとサングラスを使った。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
灯油札の密告
2005年11月、長野県の山あいにある静かな村で、工藤家の住宅が深夜に炎に包まれた。 家の中には、父と母、そして7歳の息子。近所の人々が助け出そうと駆けつけるが、玄関には外側から鎖と南京錠が掛けられ、勝手口も角材で封じられていた。 これは事故ではない。 誰かが一家を逃げられないように閉じ込め、火を放ったのだ。 村人たちは涙ながらに犯人探しを願い、特に隣人の男は誰よりも深く悲しんでいるように見えた。だが刑事・星野は、焼け跡に残された不自然な痕跡と、その男の身体にあった小さな傷に違和感を覚える。 そして事件から数日後、町の貴金属店に持ち込まれた大量の一万円札が、捜査を大きく動かす。 その紙幣には、かすかな灯油の匂いが残っていた。 炎で消されたはずの夜に、いったい何があったのか。 そして、最後まで燃え残った“匂い”は、誰の罪を指し示していたのか――。ミステリー|遺體発見2.3萬字5 67 -
完結第10話
雪下の赤いマフラー
1998年11月12日、雪の降る旭川で、赤いマフラーを巻いた3人の女子高校生が忽然と姿を消した。 双子の美咲と南、そして親友の彩。3人は放課後の演劇部の練習を終え、いつものように学校を出たはずだった。だが、その日を境に、家族のもとへ帰ることはなかった。 捜索は続いたが、足跡も持ち物も見つからない。吹雪がすべてを消してしまったかのように、事件は未解決のまま17年の歳月が流れていく。 そして2015年。元郵便配達員の古い鞄から、17年間届けられなかった1通の手紙が見つかる。 そこには、こう書かれていた。 「私は、美咲、南、そして彩に何が起きたのか知っています」 手紙をきっかけに再び動き出す捜査。座布団の中に隠された日記、古いカセットテープ、稚内へつながる謎の手紙、そして雪深い小屋の床下に眠っていた赤いマフラー。 3人はなぜ消えたのか。 教師・田中浩は何を隠していたのか。 17年間閉ざされていた雪の中の真実が、今、静かに姿を現す。ミステリー|行方不明1.5萬字5 130 -
完結第11話
雪峠の五発
2006年11月15日、長野県北部。 その年最初の雪が降り始めた高木峠へ、1人の巡査が向かった。展望台に不審な車があるという匿名通報を受け、霧谷慎也は「確認だけ」のつもりでパトカーを走らせる。 だが午後6時15分、現場到着を知らせる無線を最後に、慎也からの連絡は途絶えた。 雪の展望台に残されていたのは、鍵のかかったパトカーと、車内に置かれた制帽と手袋。慎也本人だけが、吹雪の峠から忽然と姿を消していた。 事故なのか、事件なのか。誰かに連れ去られたのか。それとも、自ら山へ入ったのか。 妻と幼い娘は、答えのないまま13年を過ごすことになる。 そして2019年春。雪解けの斜面から、慎也が持っていた古い懐中電灯が見つかった。 13年間沈黙していた峠が、初めて返した小さな手がかり。 その光の先に隠されていたのは、匿名通報の本当の意味と、雪の下に封じられていた一夜の真実だった。ミステリー|行方不明1.7萬字5 1051 -
完結第13話
5枚で消された妻
1994年4月、長野県の山あいにある古いビジネスホテルで、31歳の女性・高橋美幸が冷たくなって発見された。 部屋には睡眠薬の空箱と酒の瓶。夫との離婚調停を控えていたこともあり、警察は早々に「事件性なし」と判断する。記録はわずか5枚だけ。母のよし子がどれだけ訴えても、娘の死が再び調べられることはなかった。 それから12年。 美幸の夫だった男は別の町で再婚し、真面目な父親として穏やかに暮らしていた。一方、よし子は痛む膝を抱えながら、毎年娘の墓へ通い続ける。 「娘は、自分から死を選ぶような子ではない」 誰にも届かなかったその言葉が、ある夜、古い薬物帳簿に残された一つの名前によって動き出す。 12年前のホテルで、本当は何が起きたのか。 そして、たった5枚の記録が隠していた真実とは――。ミステリー|行方不明1.9萬字5 443 -
完結第13話
床下の学級日誌
1995年、福岡の小さな離島・相島に、一人の若い女教師が赴任してきた。 藤野理子、26歳。全校児童わずか11人の分校で、子どもたち一人ひとりに寄り添い、島の人々にも少しずつ受け入れられていく。だが彼女は、ある少女の腕に残る不自然な痣に気づいてしまう。 「このまま見過ごすことはできない」 そう決意した夕暮れ、理子は本土へ渡ろうとしていた。しかし、その日を境に彼女は島から姿を消す。 残された荷物、桟橋で見つかったスカーフ、そして口を閉ざした11人の子どもたち。 警察はやがて、理子が自ら島を出た可能性が高いと判断する。けれど、子どもたちは知っていた。 あの日、桟橋で本当に何が起きたのかを。 それから10年後、取り壊される分校の床下から、理子の学級日誌と万年筆が見つかる。封じられていた記憶が、静かに動き出した――。ミステリー|行方不明1.9萬字5 243 -
完結第10話
白木蓮の偽証
2003年、東京大学法学部を卒業し、都内で弁護士として働いていた藤代優一が、長野の実家へ帰省した後に姿を消した。 継母・沢子は「東京へ帰ると言って家を出ました」と涙ながらに証言し、防犯カメラにも優一らしき男の姿が映っていた。携帯電話の記録も長野から東京へ移動しており、警察は彼が東京へ向かった後に何かに巻き込まれたと考えた。 しかし17年後、空き家となった藤代家の解体工事中、庭の白木蓮の根元から一体の人骨が見つかる。 それは、東京へ帰ったはずの優一だった。 当時の捜査で継母の涙を信じた元刑事・黒瀬は、再び事件と向き合うことになる。防犯カメラに映った男は誰だったのか。なぜ携帯電話は東京まで移動していたのか。そして沢子は、何を守るために嘘をついたのか。 白木蓮の下に17年間埋められていたのは、遺体だけではなかった。ミステリー|行方不明1.5萬字5 151