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"形見を捨てた嫁の代償" 第7話

向はきく頷いた。

その姿を見た瞬、私はある決をした。

「本物の遺言はどうするの?」

が再び尋ねた。

拓哉が止めるような目を向けたが、彩は気づかないふりをした。

向がになったには、どうするつもりなんですか」

私はしばらく答えなかった。

仏壇の妻の写真を見る。

妻はいつものように穏やかに笑っている。

私はこの2、財産を拓哉へ残すことが自然だとっていた。

1息子だ。

自分がくなれば、息子が受け継ぐ。

それ以く考えていなかった。

しかし今し考えが変わった。

「本物の遺言については、これから考え直す」

私が言うと、彩の顔が張った。

「考え直すって……」

「私の財産だからな」

「でも拓哉は1息子ですよ」

「そうだ」

「だったら普通は――」

「普通がどうかは関係ない」

私は言葉を遮った。

「誰に何を残すかは、私が決める」

は唇を噛んだ。

拓哉が再びいた。

「父さん、それでいいよ」

私は息子を見た。

「俺は財産のために来たわけじゃない」

「分かってる」

本当にそうなのかは、今すぐ判断できなかった。

ただ拓哉は、なくともこので財産を求しなかった。

「父さんが自分で決めてくれ」

「そうする」

私は頷いた。

「ただ1つだけ、今決めたことがある」

3が私を見る。

向がになった、妻の形見を渡す」

向が自分を指差した。

「僕?」

「そうだ」

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「エプロン?」

「エプロンだけじゃない」

妻が残したものは、にもしある。

写真。

切に使っていた物。

今はまだ、向にその価値は分からないだろう。

無理に背負わせる必もない。

だから成して、自分で物事を判断できる齢になったに渡そうとった。

「その、いらないとったら断っていい」

私は向へ言った。

「でも度見て、おばあちゃんがどんなだったかってから決めてくれ」

向は真剣な顔で頷いた。

「分かった」

は何も言わなかった。

私はさらに続けた。

「財産についても、向がになったに渡せるものは残すつもりだ」

が顔をげた。

その反応を見て、私はすぐに付け加えた。

「ただし、誰かが途で自由にできる形にはしない」

の空気がまたくなった。

拓哉は私の図を理解したようだった。

「父さん」

「何だ」

「そこまで考えさせて、ごめん」

私は首を横に振った。

「今分かってよかったんだ」

回忌にこんなことが起きたのはしい。

それでも、自分が元気なうちに族の本音の端を見られたことは、悪いことばかりではない。

もし何もらないまま財産だけを残していたら。

妻と私が切にしてきたものまで、値段だけで判断されていたかもしれない。

「彩さん」

私は嫁へ向き直った。

「私があなたに腹をてているのは、目当てだったからだけじゃない」

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線を逸らした。

「妻のものをゴミ扱いしたからでもある。でもしかったのは、向のでそれをしたことだ」

「……」

「子供はを見て育つ」

私は向に聞こえないよう声をし落とした。

「古いから捨てる。役にたないから捨てる。になると分かったら事にする。そんな考え方を向に覚えてほしくない」

は反論しなかった。

もしかすると何も言えなかっただけかもしれない。

けれど、この初めて、彼女は私の顔を真っ直ぐ見ることができなくなっていた。

夕方になり、拓哉たちは帰ることになった。

回忌とはえないほどだった。

私は玄関まで見送った。

はほとんどかなかった。

靴を履き、バッグを持つ。

さっきまでの気な表は消えていた。

拓哉は何度か何かを言おうとしたが、結局玄関でげただけだった。

「父さん、今はごめん」

私はを置いて頷いた。

「気をつけて帰れ」

「うん」

それ以は言わなかった。

今こので息子夫婦の問題を解決することはできない。

拓哉がこれから彩とどう話すのか。

が今のことをどう受け止めるのか。

それは2が考えることだ。

私は向ので激しく争うつもりもなかった。

向」

を呼ぶと、孫が振り返った。

「また来いよ」

「うん」

「今度はもっとに卵焼き作っとくからな」

「今のもおいしかったよ」

その言葉に、私は笑った。

「そうか」

向は靴を履き終えた。

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