"5枚で消された妻" 第2話
兄の浩司も、言葉を失ったまま座っていた。
その、よし子の線が葬儀に参列していた健へ向かった。
健はった喪を着ていた。
参列者が声をかけるたび、くをげる。
折、いハンカチで目元を押さえる仕も見せた。
だが、よし子は気づいてしまった。
ハンカチを顔からした瞬の健の目に、涙が浮かんでいないことに。
しみではない。
むしろ、何かきな問題がようやく片づいたのような、異様な静けさがあった。
よし子はわずをいた。
「あの子が……自分でこんなことをするはずがありません」
しかし、隣にいた親族は何も答えなかった。
警察はもう、自ら命を絶ったと判断している。
証拠はない。
母親の直だけでは、何も変えることができなかった。
葬儀が終わり、々が帰った。
よし子は娘の遺を見つめながら、震えるで膝のの数珠を握りしめていた。
この、彼女はる由もなかった。
自分がじている違が違っていないことを証するまでに、12ものが必になることを。
そしてその12、娘をへ追いやったが、別の町でしい族を作り、「真面目で優しい父親」として穏やかに暮らしていくことを。
美幸と健が会ったのは、1987のだった。
野県内でわれた親戚同士の集まりに、共通のを通じては参加していた。
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当、美幸は24歳。
内のアパレル会社で経理を担当し、数字にく、仕事も丁寧だった。派なタイプではなく、勢ので積極に話す方でもなかったが、誰かに頼まれれば嫌な顔つせず伝うような女性だった。
健は、美幸より数歳だった。
元の建設資材会社で営業を担当し、ではよく笑い、話題も豊富だった。
そので健は、美幸に何度も話しかけた。
仕事のこと。
好きなべ物。
休の過ごし方。
美幸がし笑うと、健はさらに冗談をねた。
になって兄の浩司は、初めて健と会ったの印象をこう振り返っている。
「がうますぎる男だとった」
表面は柔らかい。
当たりもいい。
だが、何となく掴みどころがない。
作られた笑顔の奥に、別の顔が隠れているような気がした。
しかし美幸は、そこまで警戒していなかった。
半ほど交際した、1988のには結婚した。
母のよし子は、娘が結婚すると聞いた、からんだ。
「今まで仕事ばかりだったからね。ようやくできるわ」
美幸も嬉しそうだった。
結婚当初、の暮らしは決して悪いものではなかった。
さな賃貸アパート。
古い台所。
狭い居。
贅沢はできなかったが、健の営業成績は定していた。
美幸は勤めていた会社を辞め、健の仕事を事務面で伝うようになった。
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請求を理する。
取引先からの話を受ける。
伝票をまとめる。
卓を叩く音が、毎のようにさな部へ響いていた。
「これ、数字がわないわよ」
ある晩、美幸が帳簿を見ながら言うと、健は笑った。
「さすがだな。美幸がいなかったら俺、商売できないかもしれない」
そんな期もあった。
だが、緒に暮らすがくなるにつれて、美幸は健の別の面を見るようになった。
帰宅すると、必ず聞かれる。
「どこにってた?」
「買い物よ」
「誰かに会ったのか?」
「スーパーでし話したくらい」
「誰と?」
答えがしでも曖昧だと、健の表が変わった。
鳴るわけではない。
殴るわけでもない。
ただ、を閉ざす。
夕を置いても無言。
声をかけても返事をしない。
美幸が何度謝っても、目をわせようとしない。
その状態が1。
2。
には1週く続いた。
狭いアパートのに聞こえるのは、計の針の音と、蔵庫のモーター音だけだった。
美幸は次第に、夫の嫌を損ねないよう常に様子を窺うようになった。
「今は誰とも話してない」
頼まれてもいないのに、自分から説する。
「買い物だけして帰ってきたから」
健はそれを聞いても、ただ聞から目をげるだけだった。
言葉のない支配。
沈黙によって相を追い詰める活。
美幸はそれを誰にも話さなかった。
母のよし子が、
「最、し痩せたんじゃない?」
と聞いても、
「仕事が忙しいだけ」
と笑った。
1992。
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