みかん小説
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"5枚で消された妻" 第1話

199441310過ぎ。

野県のあいには、になってもまだの名残があった。くの肌にはが筋のように残り、から吹きげてくる着では耐えられないほどたかった。

沿いに建つ古いビジネスホテルも、その寒々しい景のに取り残されたようにっていた。あせた板は型トラックが通り過ぎるたびにさく震え、窓ガラスの向こうには暗い廊が伸びている。

10を回っても、2階のから宿泊客がてこなかった。

清掃を担当していた女性従業員は、廊の突き当たりくにあるその部を止めた。チェックアウトの刻はすでに過ぎている。

「お客様、失礼いたします。おですが」

コンコン、と扉を叩く。

返事はなかった。

もうく叩き、内線話も鳴らしてみた。廊っている従業員のに、部で鳴り続ける呼びし音だけがかすかに聞こえてくる。

それでも、く気配はなかった。

従業員は度フロントへ戻り、責任者と相談した、マスターキーを持って再び部へ向かった。

鍵を差し込み、ゆっくり回す。

ガチャリ。

い扉がいた瞬え切った空気と、古い煙い酒が混ざったような匂いが廊へ流れした。

カーテンは閉め切られていた。

わずかな隙から差し込むを、さな埃が浮かんでいる。

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は止まっており、からがってくる気が元を包んだ。

「お客様……?」

女性従業員はさな声で呼びかけながらへ入った。

そして、ベッドのを見た。

そこにの女性が横たわっていた。

美幸、31歳。

彼女は仰向けのまま静かに目を閉じていた。顔は透き通るほど青く、掛け布団のに置かれた両かない。

見すると、ただく眠っているようにも見えた。

しかし従業員がづき、胸がしていないことに気づいた瞬、喉の奥から鳴が漏れた。

警察が到着したのは、それからもなくだった。

自然なほどっていた。

テーブルのには販の眠薬の空箱が2つ、みかけのが入ったグラス、そして酒の空き瓶が置かれている。

争ったような痕跡はない。

窓は閉まっている。

ドアにも破損はなく、第者が引に侵入したような形跡も見当たらなかった。

美幸の荷物は、さなハンドバッグだけだった。財布、分証しの現く滞するつもりだったようには見えない。

へ入った担当者たちは、部通り見回した。

「薬か」

誰かがさく呟いた。

婚調

でホテルに宿泊。

量の眠薬。

酒。

った傷なし。

それだけの報が、警察官たちので素つの形にまとまっていった。

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事件ではない。

庭問題を抱えた女性が、自ら量の薬をんだのだろう。

その結論は、現検証が分に終わるから、部の空気のに漂っていた。

司法解剖の結果、美幸の因は薬物の過剰摂取による急性毒とされた。

血液の薬物濃度は通常の用量をはるかに超えていた。

体には目った傷がない。

く抵抗した痕跡も確認されない。

者の関与を示す確な証拠もない。

担当刑事は署へ戻ると、机のの報告い文章を打ち込んだ。

、夫との婚調

精神負担を抱えていた能性。

薬物の過剰摂取。

事件性なし。

捜査記録は、わずか5枚のA4用にまとまった。

美幸がなぜ、自宅かられたこのホテルまで来たのか。

どの交通段を使ったのか。

誰かと会う約束をしていなかったのか。

薬局で購入した薬の量と、現に残された空箱の内容が本当に致しているのか。

夫であるは、そのの夕方から夜に何をしていたのか。

そうした確認は、ほとんど残されていなかった。

、美幸の葬儀がわれた。

の煙が細くり、い読経の声が部に響いていた。

母のよし子は、娘の遺からけなかった。

まだ31歳だった。

婚さえ成すれば、しい活を始められるはずだった。

それなのに、黒の写真のの娘は、何もらないような穏やかな表でこちらを見ている。

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