みかん小説
本棚

"保険金つき同居" 第1話

「母さん、もうで頑張らなくていいよ。これからは俺たちがいるんだから」

息子の優太からそう言われた、渡辺みよ子は、胸の奥に張りつめていたものがしだけほどけるのをじた。70歳になったばかりの、定期検診で糖尿病と血圧の数値が悪化し、医師から暮らしについて考え直した方がいいと言われた直のことだった。

夫の健くして3になる。45連れ添った夫が突然の筋梗塞で帰らぬとなったから、みよ子はの古い戸建てで暮らしを続けていた。朝起きれば仏壇に茶を供え、夕方になると分作る癖が抜けない噌汁をみ、夜には夫のいない寝へ戻る。

「今、ありがとう」

きていた頃、寝るに必ず言ってくれた言葉だった。何か特別なことがあっただけではなく、洗濯物を畳んだにも、夕飯がし焦げたにも、夫は同じように笑ってそう言った。

息子の優太を育てるために、夫婦で贅沢らしい贅沢はほとんどしなかった。優太が学へ学したには健が休勤を増やし、みよ子も所の仕でパートを始めた。卒業、就職、結婚との節目を迎えるたびに、は「これでし肩の荷がりたね」と笑いったものだった。

優太は現43歳。

広告

妻のゆかりと、学2になる息子の斗と3で暮らしている。数までは度ほど孫を連れて遊びに来ていたが、斗がになってからは部活や塾が忙しくなり、族全員で顔をわせる会も減っていた。

だからこそ、優太から突然同居を提案された、みよ子は驚いた。

「でも、あなたたちのマンションじゃ狭いでしょう」

「そこなんだけどさ、母さんのを売って、もうし広いを買うのはどうかなとってるんだ」

話の向こうで、優太はためらいながら計画を説した。みよ子のを売却し、その資に加えて4LDKの築戸建てを購入する。残りは優太夫婦が宅ローンを組み、階にみよ子専用の部を用するという。

「母さんのが売れれば、俺たちだけじゃ買えないような広いめる。だけど俺たちが得するためじゃないよ。母さんが階段を使わなくても済むにして、何かあったらすぐそばにいられるようにしたいんだ」

その夜、ゆかりからも話が来た。

「お母さん、私からもお願いします。斗も、おばあちゃんと緒にめたら嬉しいって言ってるんです。これから先は、誰かが誰かを支えるんじゃなくて、4で支えにしたいんです」

あまりにもまっすぐな言葉だった。夫を失ってからの3、「自分はまだ丈夫」

広告

と言い聞かせながら暮らしてきたみよ子にとって、族から必とされることはっていた以に嬉しかった。

ただ、つだけ決められないことがあった。

を売ることだった。

築40を超えていたが、健緒に買っただった。優太が初めて歩いた廊も、の頃につけた柱の傷も、夫が休になると入れをしていたさな庭も残っている。

仏壇のでみよ子は考えた。

「お父さん、どうう?」

写真のの健は何も答えなかった。

それでも翌朝、みよ子は優太へ話した。

「分かったわ。族みんなで暮らすなら、お母さんもい切ってみる」

話の向こうで優太が息をむ音がした。

「本当? 母さん、ありがとう」

売却はったよりく決まった。がよかったこともあり、古い代を含めて1500万円で買いがついた。

売買契約の、担当した産会社の配社員がつだけ確認した。

「渡辺さん、この1500万円は息子さんご夫婦の宅購入資へ入れるということでよろしいですね。ただ、同居を提にした資提供ですから、簡単でも条件を面に残しておいた方がですよ」

優太はすぐ笑った。

族同士でそんな堅いことまで必ですか?」

族だからこそです。になって言った、言わないになるケースもありますから」

みよ子はし迷った末、担当者が用した簡単な確認に署名した。

そこには、1500万円は「みよ子の居を含む4の共同活を提に宅購入へ充当する資

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: