"嘘を握った右手" 第2話
しかし夜7にわざわざ会うほど、急な話があったのだろうか。
美紀はカレンダーを携帯話で撮した。
寝へ入る。
布団は半分だけ畳まれていた。
タンスにはと着。
引きしには通帳と印鑑。
さな箱には現120万円。
旅へったの部ではなかった。
浴には歯ブラシも髭剃りも残っていた。
玄関には普段使う作業靴。
ただ、いつも着ていた濃いの作業着1着だけが見当たらなかった。
美紀はベッドのでち尽くした。
兄と最に話したのは930の午4頃だった。
健は普段と変わらない声で、が濃いことや気温ががったことを話していた。
話を切る直、に言った。
「美紀。今度の収穫が終わったら、俺もここを理するかもしれない」
「急にどうしたの?」
「を1、信じ違えた」
「誰?」
数秒の沈黙。
健はく笑った。
いつもの笑い方ではなかった。
「俺がいこと目に見てやった奴がいる」
「何かあったの?」
「今度こそ、きっちり責任を取らせる」
詳しく聞こうとしたが、健は「用事がある」と言って話を切った。
あのはか取引の問題だとっていた。
だが、兄が消えた部でい返すと、その言葉のがまるで違って聞こえた。
美紀は携帯話を握った。
110番へ通報した。
約40分、嶺を管轄する警察署から警察官2が到着した。
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さらに1ほどして刑事たちが加わった。
現の責任者として姿を見せたのは、捜査係の鈴だった。
48歳。
数がなく、をほとんど表にさない男だった。
「最に話したのは?」
「930、午4過ぎです」
「それ以は?」
「度もありません。母にもです」
鈴は頷き、のへ入った。
卓。
カップラーメン。
カレンダー。
現。
通帳。
玄関にも窓にも無理に侵入した痕跡はない。
内で激しい争いが起きた形跡も、最初は見つからなかった。
だが鈴は、部があまりに「普通」であることに違を覚えていた。
突然、が消えた。
なのに何も乱れていない。
まるで誰かが、普通の部に戻そうとしたように見える。
寝でへライトを向けた鈴が、ゆっくり腰を屈めた。
「照らしてくれ」
鑑識員が懐灯を向ける。
ベッドの。
板の隙に、透なガラス片が数個残っていた。
割れたコップの破片だった。
部分は片づけられている。
だがさすぎる破片だけが残ったらしい。
「おかしいです」
美紀が言った。
「兄は、こういうものを放っておくじゃありません」
鈴は返事をしなかった。
卓の縁にも、細い傷があった。
何かいものがくぶつかり、そのまま擦れたような跡だった。
血液反応はなかった。
それでも鈴のでは、単純な失踪という言葉がしずつのいていた。
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田健には目った借がなかった。
座からを引きした記録もない。パスポートは宿舎にあり、クレジットカードにも失踪の使用履歴はなかった。
隣の民も、健について似た証言をした。
物静か。
仕事。
付きいは広くない。
だが、積極にのみを買うようなではない。
警察は午からわさび畑と周辺林の捜索を始めた。
健の写真がへ配られ、バスターミナル、病院、旅館にも協力が求められた。
沢。
崖。
放置された。
古井戸。
救助隊も入った。
夕方までに、健を最に見た物が2見つかった。
1は農業資材の主だった。
「930の午2頃ですね。肥料を買いに来ました」
「様子は?」
「普通でしたよ。来週、わさびを部試し掘りするって話してました」
もう1はのスーパーの主だった。
「540分くらいかな。の向こうからバイクでってくのを見た」
「どちらへ?」
「畑へ戻る方です」
そこから先。
健を見た者はいなかった。
ただ1を除いて。
の麓で暮らす72歳の本男は、刑事たちへ議な話をした。
「夜10過ぎにな、軽トラックが1台、ってったよ」
「何でした?」
「暗かったから分からんなあ。もっとったし」
「ナンバーは?」
「そこまでは見えん」
老は細いを指した。
そこは健の宿舎へ向かうとは反対側だった。
昔使われていたわさびの乾燥倉庫と、そのにある農業廃棄物の集積へ続いている。
「あんなに、あっちへく用事なんてないはずだ」