"五人目の白い靴" 第5話
方、伊藤そのものも徹底に調べられた。正彦のには借入があったが返済は正常で、美緒にも秘密の座や自然なのきはない。夫婦関係にもきな問題は見つからず、陽斗や里が学で刻なトラブルを抱えていた事実も確認できなかった。
そんな、の机から枚のがてきた。
〈今も、あの所へくんですか〉
差はない。コピー用を細く切っただけので、文章もそれだけだった。
「いつ届いたものか分かりますか」
武田が浩へ尋ねると、浩は首を振った。
「兄貴はこういうを机に挟む癖があるから……最なのか、なのか」
跡は伊藤の誰とも致しなかった。だが脅迫文と呼ぶには内容が曖昧すぎて、逆に捜査員たちを迷わせた。
キャンプ所をっていた物として最初に浮かんだのは、くに正彦へ図を描いたという「古い客」だった。しかし浩は名を覚えておらず、当の伝票もすでに処分されていた。
の祝いの写真、忘会の写真、取引先との集写真まで洗った。作業姿の男は何も写っていたが、畔の写真にいる男と特定できる物はいない。
「最初から俺たちは、族の過ばかり見すぎてるのかもしれません」
武田が酒井に言った。
「どういうだ」
「原因が族側にないなら、あの所側にある」
広告
酒井は煙を持ったままし考えた。
「い靴か」
武田は頷いた。
科学鑑定から届いた最初の報告では、靴の内側にある黒ずんだ染みが血液かどうかは断定できなかった。量がなすぎ、当の検査では分なDNA型も得られない。
ただ、鑑定員はひとつだけ言った。
「捨てないでください」
「将来なら分かる能性がある?」
「あります。数で技術は変わりますから」
武田は証拠袋を自分ので保管棚へ入れた。
2004。捜査本部は縮され、事件は未解決案件として理された。別の事件が入るたび担当者は減り、伊藤の分いファイルはしずつ棚の奥へ押し込まれていった。
浩は毎朝のように警察へ話を入れていた。
「何かありませんか」
返事はいつも同じだった。
「まだしい報はありません」
やがて浩も、毎話するのをやめた。
代わりにになると、必ず畔へくようになった。酒と果物を置き、1ほどのに座って帰る。
2005。
2006。
2007。
事件は々の記憶からしずつざかった。
しかし津警察署のキャビネットの奥で。
片方だけのい靴は、暗のに残り続けていた。
2007、先輩刑事の酒井が定を迎えた。最の勤務、武田の机のに枚のコピー写真を置いた。伊藤最の使い捨てカメラに残されていた、い靴を持つ里の写真だった。
広告
「まだ持ってたんですか」
「おもだろ」
酒井は笑った。
武田は43歳になり、刑事課の班になっていた。それでも20038の現に入ったの匂いだけは妙に鮮に覚えていた。乾いた、ガスバーナー、、そして誰もいないテントの空気だった。
酒井は写真の男を指差した。
「俺はな、こいつが里ちゃんを見てるとってた」
「違うんですか」
「靴だよ」
武田は写真へ顔をづけた。粒子が粗く、線の向きを正確に判断することはできない。それでも言われてみれば、男の顔は里本より彼女の両にあるいものへ向いているように見えた。
「だったら、族は最初から狙われてたわけじゃない」
酒井はゆっくり言った。
「里ちゃんがあれを拾った瞬、狙われる理由ができた」
酒井がったも、その言葉は武田のかられなかった。
翌3。津署にしい署が着任した。
最初の刑事課会議で、署は未解決事件のファイルを机に並べた。
「古い事件を、度全部見直しましょう」
誰かが「がりません」とさく言った。
署は頷いた。
「全部を最初から捜査し直す必はありません。証拠を見てください。5には調べられなかった物が、今なら調べられるかもしれない」
武田はそのの夜、ひとりで証拠保管庫へ入った。
棚の奥。
黒い遮布に包まれた袋。
には5と変わらないい運靴があった。
「遅くなったな」
わずにしてから、自分でも苦笑した。
翌朝、武田は靴を阪の鑑定関へ持ち込んだ。