"五人目の白い靴" 第3話
入のファスナーが側で閉じられていた。しかも2つの具が細い紐でまとめられ、その紐がテントポールへ度巻きつけられている。
「何だよ、これ……」
キャンプ経験のある浩には、それが普通の閉め方ではないことが分かった。からがるなら、度へを回さなければけられない。
震える指で紐をほどき、ファスナーをげた。
には寝袋が4つ並んでいた。
陽斗の漫画は読みかけのページを伏せたまま置かれ、枕元にはカセットレコーダーがある。里の熊のぬいぐるみ、美緒のハンドバッグ、正彦の鏡まで、そのでだけが止まったように残されていた。
財布もある。分証もある。美緒のバッグには族写真まで入っている。
荒らされた形跡はなかった。
争った形跡もない。
誰かが品を奪ったようにも見えない。
ただ4だけが消えていた。
浩は里の寝袋のでち止まった。品のピンクの運靴が揃えて置かれている。その横に、さない運靴が片方だけ転がっていた。
見覚えがなかった。
しかも、その靴だけが伊藤の持ち物とはらかに違う雰囲気をまとっていた。
浩は触れずにそのかられた。くの売までり、話を借りて警察へ通報した。
「族がいないんです。兄の族が4とも……荷物だけ残ってるんです」
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18、津警察署から刑事たちが到着した。そのに、38歳の武田慎吾がいた。警察官としての勤務はかったものの、刑事課へ移ってまだ数ヶの刑事だった。
武田はテントのへった瞬、妙な覚を覚えた。
怖いのではない。
静かすぎる。
事件現で見る静けさとは違い、族がつい数まで普通に過ごしていた常だけが、そのまま残されていた。
そして、そのに片方だけのい靴があった。
鑑識がテントへ入った。入に破損はなく、布にも刃物で裂かれた痕跡はない。周囲のを調べても、数が引きずられたような跡や量の跡は見つからなかった。
先輩刑事の酒井が、側に残された紐をしゃがんで観察していた。津署で20く刑事を続けてきた男で、武田が現で迷ったには必ず余計な説をせず、まず自分の目で見ろと言うだった。
「武田。これ、どうう」
「から閉めています」
「それだけか?」
武田は結び目を見た。急いで力任せに結んだのではなく、具がかない程度に度だけ丁寧に巻きつけている。逃げながら慌てて作った結び目には見えなかった。
「落ち着いて閉めています」
酒井はさく頷いた。
「に誰かがいるとって閉じ込めたのか。それとも、誰もいなくなってから閉めたのか。そこが違うだけで、話は全部変わる」
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テント内部の温度から、4がいつ消えたかを正確に割りすことはできなかった。コッヘルには夕にべたらしいラーメンの汁が固まって残り、携帯バーナーにもまだガスが入っている。曜の夜、夕を終えたから曜の朝までのに何かが起きた能性がかった。
武田はい運靴を袋越しに持ちげた。見たところありふれた子供靴だったが、内側のかかと付に爪ほどの黒ずんだ赤い染みが残っている。血液にも見えたが、や錆びたが染み込んだだけにも見えた。
「名がありますね」
かかとの布の奥に、青い油性ペンの痕跡が残っていた。半は擦れて消えているが、文字がかれていたことだけは分かる。武田はライトの角度を変えながら見たものの、読み取ることはできなかった。
い靴は証拠袋へ収められた。
その夜、伊藤の持ち物がつずつ確認された。陽斗のバッグの底からは使い捨てカメラが見つかり、カセットレコーダーの横には録音済みテープが3本置かれていた。
「写真は全部現像。テープも聞こう」
酒井が指示した。
翌朝からの捜索が始まった。テントから際までは約15mしかなく、事故でへ落ちた能性が最初に疑われたからだ。
しかし潜隊は現を見て首を傾げた。
「2と子供2が緒に落ちたなら、何か残るといますよ」
が激しく踏まれた跡はない。に滑った跡もなく、類やサンダルも見つからない。