みかん小説
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"泥まみれの客と黒塗り5台" 第11話

自分では隠しているつもりだった。

それでも娘には、ずっとが伝わっていたのかもしれない。

美咲は結を抱きしめた。

「これから、もっと笑おうね」

「うん」

1週

美咲は老からの申しを受けることを決めた。

専属運転として初めて勤する朝。

美咲は鏡ので何度も制えた。

これまで着ていた営業所の制とは違う。

濃紺のジャケット。

いシャツ。

胸元にはさな社章。

髪もきちんとまとめた。

「ママ、かっこいい」

玄関で結が言った。

「本当?」

「うん」

「緊張してるんだけど」

「なんで?」

「初めてのお仕事だから」

し考えた、美咲のを握った。

丈夫だよ」

「どうして?」

「ママ、運転だから」

美咲は笑った。

「ありがとう」

「それに優しいから」

その言に、美咲はしだけ目を潤ませた。

ってきます」

ってらっしゃい!」

迎えので向かった先には、1台の黒塗りのまっていた。

あの、営業所へ並んだと同じようなだった。

美咲は周囲を確認し、体を周する。

タイヤ。

ライト。

ドア。

部座席。

点検を終えると、老を迎えに玄関を移させた。

しばらくして、会が姿を現した。

美咲はりる。

「おはようございます」

げた。

「本より、よろしくお願いいたします」

を止め、美咲を見た。

「似っているな」

「ありがとうございます」

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美咲は部座席のドアをける。

「どうぞ」

はゆっくり乗り込んだ。

美咲も運転席へ座る。

ハンドルにを置いた瞬、あのの夜をした。

だらけの老

止まらないタクシー。

黒田の笑い声。

自分の瞬の迷い。

そして、

「シートなんて洗えばいいんです」

と言ってりた自分。

たった数来事なのに、い昔のようにじた。

「佐藤さん」

部座席から声がした。

「はい」

「1つ頼みがある」

美咲は緊張する。

「何でしょうか?」

「その会という呼び方、ではし堅すぎるな」

「え?」

「まあ、仕事だから仕方ないか」

は楽しそうに笑った。

美咲もつられて笑う。

「では会、本の目をお願いいたします」

「やっぱり会か」

「最初のですので」

「そうか」

き先を告げた。

美咲はナビと状況を確認する。

「かしこまりました。では発いたします」

静かにアクセルを踏む。

黒塗りのした。

しばらくすると、老が窓のを眺めながらいた。

「佐藤さん」

「はい」

というのは、議なものだな」

「そうですね」

「あの、台が来なければ、わしは君のタクシーに乗らなかった」

美咲はバックミラーを見る。

「私も、いつものっていたら会に気づかなかったといます」

「黒田君がわしを乗せていたら?」

美咲はし困った。

が笑う。

「冗談だ」

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信号でが止まる。

を、齢の女性がゆっくり歩いている。

その姿を老が見つめていた。

「あのな」

「はい」

「わしはけなかった」

美咲はそうにミラーを見る。

けない、ですか?」

「何台も無されると、自分がとして価値がないような気分になるものだ」

の声は静かだった。

「わしはってきた。普段なら皆がげる」

その目がし寂しそうになる。

「だが肩もなく、だらけの作業着を着た途端、誰も止まらなかった」

美咲は何も言わず聞いていた。

「だから君のが止まった、本当に驚いた」

が笑う。

「しかもからりてきた」

「会が全然乗ってくださらなかったので」

「シートを汚すと言ったら、笑って洗えばいいと言った」

「今考えると、会社のなのにし勝でした」

「そうかもしれんな」

2は笑った。

「だが、あの瞬

はゆっくり言った。

「自分がまたに戻れた気がした」

美咲は息を呑んだ。

「君は会を助けたんじゃない」

はバックミラー越しに美咲を見る。

「ただのだらけの老を助けた」

美咲の目がくなる。

「それが嬉しかった」

信号が青になる。

が再びす。

「会

「何だね」

「私も、あの助けてもらったんだといます」

議そうな顔をした。

「わしが?」

「はい」

美咲はを見たまま答えた。

「私、ずっと自分のやり方が違っているのかなってっていました」

営業成績は最位。

領が悪い。

客を選べない。

を助けてを使う。

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