みかん小説
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"泥まみれの客と黒塗り5台" 第6話

へ入ると、田所は腕を組んで待っていた。

机の横には黒田がっている。

美咲はその景を見ただけで、何が始まるのか分かった気がした。

「佐藤」

田がい声をす。

「昨だらけの客を乗せたな」

「はい」

「お、何を考えてるんだ?」

で困っていらしたので……」

「そういう話をしてるんじゃない!」

机を叩く音が響いた。

「会社のだぞ! 自分のじゃない!」

美咲はげた。

「それは分かっています。ただ、昨お客様をろした、私自でシートを拭きました」

「拭いた?」

「はい」

「これのどこが?」

黒田がスマートフォンを取りした。

画面には今朝の部座席が写っている。

だらけのシート。

黒田は呆れたように笑った。

「俺、朝見てびっくりしましたよ」

「でも昨は、こんな状態ではありませんでした」

美咲は必に説した。

度きれいに拭き取っています。も確認しました」

「じゃあ、このはどこからてきたんだ?」

田が睨む。

美咲は答えられなかった。

黒田を見る。

黒田はわざとらしく眉をげた。

「何? 俺がやったって言いたいの?」

「私はそんなこと……」

「言っとくけど、証拠もないのにを疑うのやめた方がいいよ」

美咲は拳を握った。

何かがおかしい。

それは確信していた。

の清掃の状態を写真に残しておけばよかった。

だがそんな習慣はなかった。

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「修理とクリーニングの見積もりを取った」

田がした。

「費用は与から引きする」

美咲の顔が青ざめた。

「待ってください」

「何だ」

「今料からですか?」

「当たりだ」

「お願いします。それだけは……」

美咲は反射に机へづいた。

「娘の術のために貯していて、今もできるだけ残さないと……」

田は面倒そうな顔をした。

らんよ」

「でも、この汚れは本当に私が戻ったには……」

「まだ言うか」

横から黒田がを挟んだ。

「所、俺昨見てましたけどね」

美咲が振り返る。

「佐藤、自分からわざわざりて、あのじいさんに傘差してやってたんですよ」

黒田は笑う。

だらけなの分かってて乗せたんです」

「だから何ですか?」

わず美咲の声がくなった。

黒田の笑みがくなる。

「ほら、そういうとこ」

「困っているお客様を乗せるのは、運転として違っているんですか?」

「会社に損害したら違いだろ」

「お客様を見た目だけで断る方が……」

「佐藤!」

田の声がんだ。

美咲は黙る。

田はく息を吐いた。

「もういい」

嫌な静けさだった。

「え……」

「おには何度もチャンスをやった」

美咲の臓がきく鳴る。

「営業成績は最位。ノルマも未達。そして今度は両まで汚した」

「所

「限界だ」

田は類を閉じた。

「今限りで辞めてもらう」

瞬、が理解できなかった。

音がざかる。

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計の秒針だけが、異様にきく聞こえた。

「……首、ですか?」

「そうだ」

美咲のに結の顔が浮かんだ。

病院。

術。

賃。

活。

次々と押し寄せる。

「待ってください」

声が震えた。

「お願いします」

田は顔を背ける。

「決定だ」

「もう1度だけ」

美咲は気づけば膝をついていた。

自分でも何をしているのか分からなかった。

プライドなど考える余裕はない。

「所、お願いします。何でもします」

涙が頬を伝う。

「娘の術があるんです。仕事を失ったら、私……」

「お庭事は会社には関係ない」

たい言だった。

「でも……」

「会社は慈善事業じゃない」

その言葉は、昨黒田が老へ向けた言葉とよく似ていた。

黒田がろから笑う。

「ほらね」

美咲は顔をげた。

「だから言ったじゃん。女に運転は無理だって」

「黒田さん……」

体、娘の術費くらい自分でちゃんと稼げよ」

美咲の顔が張った。

「それ以、娘のことを言わないでください」

「何ってんの?」

黒田は周囲にも聞こえるような声をす。

の扉はいたままだった。

営業所の社員たちが、巻きにこちらを見ている。

「自分の稼ぎで子供も養えないくせに、偉そうに善ぶって客助けてさ」

美咲はがろうとしたが、に力が入らない。

「シングルマザーになったのだって、自分の選択だろ?」

黒田は止まらない。

「親がそんなじゃ、子供もかわいそうだよな」

「やめてください!」

初めて美咲が叫んだ。

営業所が静まり返った。

涙で界が滲む。

黒田は瞬驚いたが、すぐにで笑った。

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