"止まったカードと空の家" 第3話
しずつして、しずつ貯めて。
その先に、自分たちのが待っている。
そうっていた。
正文の帰宅が遅くなり始めるまでは。
あるの夜、正文がいつもより1以遅く帰ってきた。
玄関の鍵がく音を聞き、私はキッチンから顔をした。
「おかえり。今、残業だったっけ?」
「ただいま。あ、ああ。急に仕事が入ってさ」
正文は靴を脱ぎながら、しだけ線をそらした。
世のの景気が良くない響なのか、正文の会社では以より残業が減っていた。そのため、珍しいとはったものの、わざわざ疑うほどではなかった。
「連絡できなくてごめん」
「いいよ。夕飯温めるね」
私は蔵庫へ向かった。
すると正文が慌てて止めた。
「あ、いい。べてきた」
「で?」
「同僚に誘われてさ。断れなくて」
それも珍しかった。
正文のお遣いは2万円。
昼代など仕事に必な分は計からしていたが、み会や趣は基本に遣いから払ってもらっていた。そのため正文は、よほどの用事がなければ夕飯をでべる。
「まあいいけど、お遣いの範囲内でやってよ」
「分かってるって」
正文は苦笑すると、そのまま浴へ入った。
その度だけなら何もわなかった。
ところが、それを境に残業が増えた。
週に1度だったのが2度。
そのうち3度。
「帰り遅くなるから、夕飯いらない」
そんな連絡が入るようになった。
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正文は、
「が何回も温め直すの変だろ?」
と私を気遣うように言った。
確かにありがたい。
だが、その頻度になると別の配がてくる。
おだ。
「そんなにでべて、遣いりるのかな」
本が自分のおで何を買おうが、逐報告させるつもりはなかった。
以、美津に、
「そこまで管理されたら正文君も息が詰まるよ」
と笑われたこともある。
私も締めつけすぎるのはよくないとい、結婚しばらくしてからは、2万円の使いには切をさないようにしていた。
それでも、毎週何度もできる額ではない。
ある夜。
正文がまた遅く帰宅した。
「今もご飯べた?」
「うん。司が奢ってくれた」
「このも?」
「ああ」
正文はそう言うと、着替えを持って浴へ向かった。
シャワーの音が聞こえ始める。
私はリビングでしばらくけなかった。
何かがおかしい。
理由を説しろと言われても、この点ではうまく言えなかった。
ただ、胸の奥がざわついていた。
今えば、第のようなものだったのかもしれない。
普段なら絶対にしないことを、その夜の私はした。
正文の着をに取る。
ポケットから財布を抜いた。
「ごめん」
誰にともなくさく呟く。
目は、遣いがどれくらい残っているのか確認することだった。
使い切っているなら、今し増やすべきか考えようとった。
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もしくはのレシートがてくれば、どの程度使っているか分かる。
財布をく。
私は目を疑った。
1万円札が1枚。
5000円札が1枚。
1000円札が数枚。
ほぼ2万円残っていた。
「どういうこと……?」
今の遣いを渡してから、すでに2週以。
ランチ代は計負担とはいえ、み物やちょっとした買い物はする。
何より残業のには何度もしているはずだ。
全部司が奢っている?
そんなことがあるだろうか。
しかも正文なら、本当に毎回奢ってもらっているなら、
「今も部にしてもらった」
くらいは嬉しそうに話すだ。
私は財布を戻しかけた。
その、ソファのに正文のスマートフォンが置かれていることに気づいた。
普段なら絶対に見ない。
夫婦でもプライバシーはある。
それは分かっている。
しかし財布のの2万円を見たでは、どうしても気になった。
私はスマートフォンをに取った。
帳型ケースをく。
画面にはロックがかかっていた。
数秒迷った末、正文の誕を入力した。
解除された。
「嘘……」
あまりにも簡単だった。
そしてロックが解除された直、最にいていたメッセージアプリの画面が現れた。
そこに表示されていた名を見た瞬。
私は息を止めた。
美津。
最初は、友同士のやり取りかとった。
美津は私の親友なのだから、正文と連絡先を交換していても議ではない。
けれど番しいメッセージを見た瞬、その考えは消えた。