"ブサ婿の正体" 第2話
これしかない」
父は当然のことを説するような顔をしていた。
私はしばらく言葉を失った。
「私の結婚で、どうして借がなくなるの?」
「相は持ちだ。向こうに払ってもらえばいい」
父はさらにたく続けた。
「嫌ならていけ。どうせおには、ここをて暮らしていくもないだろ」
すると母が、待っていたように顔をげた。
「咲ちゃん。お父さんもお母さんも、もう限界なの」
目には涙まで浮かべていた。
「あなたが助けてくれなかったら、このは終わりなのよ。それでいいの?」
父が脅し、母がに訴える。
22、何度も繰り返されてきた方法だった。
だから今回も、私は断れなかった。
相の名は、御堂剛。
28歳。
元で3代続く産会社、御堂ホールディングスの息子だった。
母がどこから聞きつけてきたのかは分からないが、御堂の資産は100億円を超えるらしい。
額を聞いた父は、もう私が御堂へ嫁ぐことを決定事項として扱っていた。
「これで全部片づく」
その言葉を聞きながら、私はのでった。
結局、私は最までこのたちにとって娘ではなかった。
を稼ぐための具だった。
お見いの、私は初めて御堂剛と会った。
第印象を正直に言えば、なだった。
柄でしふっくらとしており、縁の鏡をかけていた。濃いのスーツはし窮屈そうで、向かいに座っていてもがく、レストランの背景へ溶け込んでしまいそうだった。
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言葉もなかった。
目がえばさく会釈をするが、笑顔もどこかぎこちない。
世般でいう「格好いい男性」ではなかった。
母はそんな剛の横で、満面の笑みを浮かべていた。
「本当に素敵なご縁ですね」
何度同じことを言ったか分からない。
父も向きの穏やかな顔を作り、御堂の両親へをげた。
「娘をよろしくお願いします」
そして、あの言葉をにした。
「この子のことは好きにしてくださいね。性格も悪くないし、料理もできますから。本当によろしくお願いします」
私は湯呑みに目を落とした。
では鳴り散らしている父が、ではこんなにも礼儀正しい。
昔からその落差が議だった。
御堂の両親は、父の言葉をく考えなかったようだった。
「綺麗なお嬢さんですね」
「うちの息子を末永くお願いします」
そう言って笑っていた。
私は静かにお茶をみながら、ので覚悟を決めた。
どうせ逃げられない。
それなら、この結婚を私も利用してやる。
両親の借から解放され、自分が自由になれるなら分だ。
なんて必ない。
これは結婚ではなく取引だ。
ではなく戦略だ。
そう考えると、しだけ気持ちが楽になった。
私は顔をげ、御堂のたちに笑顔を向けた。
それが、嶋咲としてのを終わらせる第歩であり、同に私が初めて自分のを取り戻すための発点になった。
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結婚の居として用されていたのは、都内にある2LDKのマンションだった。
「最初は2でゆっくり暮らしてみてください」
剛の母はそう言った。
結婚式や細かな続きが終わり、私と剛はほとんどのような状態で同じ部へ入った。
その夜。
荷物を理しながら、私は剛の様子を横目で見ていた。
剛はスーツ姿のままソファに座っていた。
テレビもつけない。
スマートフォンも見ない。
ただ静かに座って、何かを考えている。
「お腹、空いていますか?」
私が声をかけると、剛はし驚いたように顔をげた。
「いえ。丈夫です」
「そうですか」
それだけで会話は終わった。
再び沈黙が落ちる。
壁掛け計の秒針の音だけが、部のへ定の隔で響いていた。
名以ほとんど何もらない男女が、今から夫婦として同じ部にいる。
考えてみれば、とても奇妙な状況だった。
これから何も緒に暮らすかもしれない相なのに、私は剛の好きなべ物すららない。
名だって、本格に覚えたのは3週ほどだ。
何か話さなければならない気がした。
だが、何を話せばいいのか分からなかった。
私は荷物を畳むふりをしながら、そっと剛を観察した。
鏡の奥の目は、どこかくを見ている。
っているようには見えない。