"追放母の25億売却" 第4話
目ののテーブルには、港の夜景がきく印刷された旅案内が広げられている。
里奈は犬のマロンを膝に抱き、丁寧な調で切りした。
「お義母様、お呼びてして申し訳ありません。実は急な話なのですが、から4、港へ旅にくことになりまして」
「港? お盆なのに?」
が聞き返すと、健太は気まずそうに線を逸らした。
「里奈のお父さんたちが族旅を計画してくれたんだ。から決まっていたことなんだけど、言う会がなくて」
その言葉で、はすべてを察した。
お盆に京へ招きながら、自分たちは里奈の両親との旅を優先する。その事実を、が到着するまで隠していたのだ。
全の血が逆流するような覚に襲われたが、は黙って次の言葉を待った。自分を呼び戻した本当の理由が、にあることはらかだった。
里奈はマロンの背を撫でながら、本題へ入った。
「それで、お義母様にお願いがございますの。この子のお世話を、旅お願いしたいんです」
里奈はちがると、サイドボードから1枚のを取りしてのへ置いた。
そこには餌の種類と、散歩の経、排泄物の処理方法、温の設定まで、細かな指示が箇条きで並んでいた。
「この子、とても繊細で、ペットホテルやらないには預けられませんの。
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でもお義母様なら族ですから、して任せられますわ」
族。
その言葉が、あまりにも空虚に響いた。
は世話の覧に目を落としたまま、しばらくけなかった。自分を崎から呼んだ理由は、族で盆を過ごすためではなかった。
旅、犬の世話をさせるためだった。
無料のペットシッターとして呼び寄せただけなのだ。
りを通り越し、乾いた笑いさえ込みげてきそうだった。としての尊厳が、元から崩れていく。
「だから、2に来るように言ったんだね」
が絞りした声は、自分でも驚くほど乾いていた。
健太は母親の目を見ることができず、テーブルの端へ線を落とした。
「ごめん、母さん。急に決まったことだから。でも母さんなら、マロンのこともがってくれるとって」
悪びれる様子はなく、母親なら理解して当然だというぶりだった。
その、里奈がさらに追い打ちをかけた。
「それから、お義母様がこちらにいらっしゃるのお事ですが、なるべくで済ませていただけますか?」
はゆっくりと顔をげた。
「で?」
「私、のにべ物の匂いが残るのがどうしてもできないんです。最はお1でも入りやすいレストランがたくさんございますから」
その言葉は、もはや単なる侮辱ではなかった。
の作るものも、というそのものも、この洗練された空にはだと宣告されたのだ。
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健太が気まずそうに咳払いをし、さらにをいた。
「それと悪いんだけど、泊まるのも昨のホテルでお願いできるかな。ゲストルームは荷物で散らかってるし、その方が母さんも気を使わなくて楽だろ」
楽なものか。
気を使っているのは、母親と同じ部にいたくない自分たちの方ではないか。
はようやく理解した。
自分は健太にとって族ではない。旅の厄介事を処理するために呼び寄せられた、便利な労働力にすぎなかった。
しかも、その労働力をのへ泊めることさえ嫌がられている。
ペットシッター以の。
り、しみ、悔しさといったは、すでに限界を超えていた。その代わり、の最もい所へ、氷のように静かなものがまれた。
それは決という言葉ではりないほどの、固い覚悟だった。
「分かったよ」
は静かに頷いた。
あまりにも落ち着いた反応に、健太と里奈は瞬顔を見わせた。泣きすか、なくとも文句の1つは言うとっていたのだろう。
はゆっくりとちがった。
「し、お洗いを借りるよ」
リビングの奥にあるパウダールームへ入り、内側から鍵をかける。目のには、の縁取りが施されたきな鏡があった。
映っているのは、疲れ果てた老女だった。髪の混じった髪、物のブラウス、の労働で節くれった指。