"追放母の25億売却" 第1話
崎の朝は、甘辛い醤油のりとともにけた。田は仏壇のに正座し、き夫・優の写真へ静かにをわせてから、細くちる線の煙を見つめた。
その横では、きな鍋がことことと音をてている。蓋の隙からは、お盆の卓に欠かせない煮しめのりがちり、古い台所を優しく満たしていた。
「健太の好きな、し甘めのにしとかんとね」
は写真のの夫へ微笑みかけると、煮汁のを確かめるように鍋を覗き込んだ。ひと見をしてから醤油をしだけ加え、べらで具材を崩さないようにゆっくり混ぜた。
1息子の健太から、今のお盆は京へ来ないかと話があったのは、2週のことだった。健太が里奈と結婚して3になるが、向こうから盆に招かれたのは初めてだった。
話を切ったも、の胸は若い頃のように鳴っていた。息子が自分を必としてくれたことが、ただ嬉しかった。
3段ねの箱には、煮しめ、老の艶煮、季節の野菜を使ったぷらが彩りよく詰められていった。どれも健太が幼い頃から好んでべていたものばかりで、何もから材料を選び、しずつ準備をめてきた。
老の向きを揃え、煮物の汁がの料理へ移らないよう鉢を使い、最に隙を青い葉でえる。
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箱の蓋を閉じる、はようやく満そうに息をついた。
「きっとんでくれるよね、あなた」
返事の代わりに、仏壇の蝋燭がさく揺れた。
崎から京までは、幹線を乗り継いでも半がかりだった。箱と着替えの入った荷物が肩にい込んだが、その痛みさえも息子に会えるびへ変わっていた。
京駅の雑踏を抜け、慣れない鉄に乗り換える。窓のに流れる無質な壁や、駅ごとに入れ替わる洗練された々を眺めていると、には京全体が別世界のようにえた。
麻布の駅でりると、の空気まで崎とは違っていた。をき交う々の装も、並んでいるの構えも、すべてが磨きげられているようで、使い込んだ鞄を持つ自分だけが違いなにじられた。
それでも、はスマートフォンの図を何度も確かめながら歩いた。やがて息子夫婦が暮らすタワーマンションのへ到着すると、わずを止めてを仰いだ。
全面をガラスに覆われた層建築は、空へ向かってそびえつのようだった。最階にいペントハウスは、選ばれたしか暮らせない所だと聞いていた。
「健太は、派になったとね」
誇らしさが胸へ込みげる方で、ほんのしの寂しさも覚えた。自分が暮らした崎のと、息子がむ空の部との距が、そのまま2のの隔たりを表しているようだった。
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はエントランスへ入り、健太から聞いていた部番号を入力した。呼びしボタンへ指を伸ばし、返事を待ったが、何度鳴らしても応答はなかった。
今のこのに到着することは、話で確かに伝えてある。になったは管理を訪ね、崎から息子を訪ねてきた事を説した。
しばらく確認を待った、管理の取り計らいで建物のへ入れてもらえることになった。はい荷物を持ち直し、エレベーターで最階へ向かった。
数字ががるたび、の奥が詰まるような覚がした。扉がくと、そこにはホテルのように静かで、柔らかな照に照らされた廊が伸びていた。
息子の部のにち、もう度インターホンを鳴らす。静まり返った廊に、械な呼びし音だけが虚しく響いた。
が途方に暮れ、箱の入った荷物をへろしただった。背でエレベーターの到着音が鳴り、華やかなワンピース姿の里奈が、さな犬を抱いてりてきた。
「あら、お義母様。いらしたんですか?」
里奈の表に歓迎のはなかった。むしろ予定の訪問者を見つけたように眉を寄せ、の荷物をからまで眺めた。
「健太から、今来るようにって言われたけん」
が事を説すると、里奈はさく首を傾げた。
「そうでしたか? お約束はだったはずですけれど。