"鳴らなかったホイッスル" 第2話
「トイレへくと言っていました。もうし待ちましょう」
島はバスをり、のを歩き回った。しかし、美咲の名を声で呼ぶことはなかった。
乗客たちは窓越しに、島のがので消えたり現れたりする様子を見ていた。
そのだった。
休憩所の裏から、鈍い衝突音が響いた。
属といものがぶつかり、何かが面へ落ちたようない音だった。
「今の音、何ですか」
乗客がそうに尋ねると、島は平然と答えた。
「荷物の扉を閉めた音でしょう」
だが、数の乗客は違を覚えていた。
扉を閉めた音にしてはすぎた。まるで型両が何かに衝突したような音だった。
午8を過ぎても美咲は戻らなかった。
島はようやく警察へ通報した。
警察官が現に到着したのは、すでに夜を回っただった。とはさらに激しくなり、元さえ見えない状態だった。
「正確に何頃、いなくなったんですか」
警察官の質問に、島は答えた。
「730分頃にバスをりました。8まで待ちましたが、戻ってきませんでした」
警察は本格な捜索を翌朝まで延期した。
界が悪く危険だという理由だった。
そのにも、駐に残っていたはずの跡やタイヤ痕は、り続くによってしずつ流されていった。
連絡を受けた健は、祖母とともに警察署へ駆け込んだ。
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の制姿のまま、健は受付の柵をつかんで叫んだ。
「お願いです! 姉ちゃんを探してください!」
「夜がけてから捜索する。今は何も見えない」
「姉ちゃんは、黙っていなくなるようなじゃありません!」
健の訴えは、たい廊に響いただけだった。
翌朝、捜索隊が休憩所へ入った、決定な痕跡はすでに消えていた。
事件翌の午、警察署で捜査会議がかれた。
美咲の鞄や財布などの所持品が見つからないことから、捜査課は々に失踪の能性をにした。
「弟の学費を負担し、活にも苦労していたらしい。将来を観して、自ら姿を消した能性がある」
「しかし、族はく否定しています」
「族は皆そう言うものだ。客観な証拠を優先しろ」
事件の方向を決定づけたのは、島の証言だった。
「休憩所で、美咲さんが男と論しているのを見ました」
担当刑事が尋ねた。
「どんな男ですか」
「が濃くて、顔までは見えませんでした。かなり激しい調でした」
それは、島が作りげた嘘だった。
美咲に交際相がし、その男と緒に逃げた能性がある。そう捜査官たちにわせるための証言だった。
警察は美咲の友や職関係者を調べた。しかし、恋らしい物も、失踪を計画していた形跡も見つからなかった。
それでも捜査の方向は変わらなかった。
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島には、警察がらない経歴があった。
バス運転になる、自備で5働いていた。両の構造だけでなく、タコグラフと呼ばれる運記録装置の扱いにも詳しかった。
島は事件当の記録用のうち、午7から830分までの部分だけをで濡らした。
速度や位置が読み取れなくなるまでを滲ませ、警察へ提した。
「庫に置いていたら湿気でこうなってしまいまして」
捜査官は、単なる保管の注として処理した。
1988当、箱根峠の休憩所に防犯カメラは1台もなかった。科学鑑定の技術も、現ほど発達していなかった。
健と祖母は、何度も警察署を訪れた。
「姉ちゃんは絶対に自分から消えたりしません」
健が訴えると、祖母も杖をついてちがった。
「美咲は弟のために、あんなに懸命きていた子です。健を置いていなくなるはずがありません」
担当刑事は疲れた表で類を閉じた。
「証拠がないんです。ご族の気持ちだけでは、事件として捜査できません」
健は自分で目撃者を探し始めた。
文具でとペンを買い、美咲の写真を貼ったプラカードを作った。
――1014の夜、箱根峠の休憩所で方になった美咲を探しています。
健は休憩所や周辺にち、通り過ぎるを1台ずつ止めようとした。
「この女性を見ませんでしたか。どんなさなことでもいいんです」
しかし、ほとんどの運転は窓を閉め、そのままりった。
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