"水槽裏の金歯" 第3話
だが、警察はその言葉を信じなかった。
からもからも、犯を示す証拠は発見されなかった。消えた400万円が健の座へ入った形跡もなかった。
遺体も、凶器も、決定な証拠もない。
健は証拠分で釈放された。
しかしでは、すでに「妻を殺した男」と見なされていた。
健が釈放されてから1週、渡辺刑事は関係者の再聴取を始めた。
最初に呼ばれたのは、居酒のである佐藤浩司だった。
「鈴さんがトイレへ向かった、何がありましたか」
渡辺が尋ねると、佐藤は迷うことなく答えた。
「鈴さんは裏からました。私が厨で皿を洗っている、この目で見ました」
「裏をてからは?」
「通りでタクシーを止めていました。をげて、乗り込むところまで見ました」
具体で、よどみのない証言だった。
佐藤の言葉が事実なら、恵子は自分のでをたことになる。厨や内で事件が起きた能性はきくがった。
その2、義子が警察署を訪れた。
取調に入るなり、義子はハンカチで目元を押さえた。
「恵子が、こんなことになるなんて……」
渡辺は静かに尋ねた。
「鈴さんについて、何かっていることはありませんか」
義子はしばらく涙を拭った、ためらうようにをいた。
「恵子は夫のことで苦しんでいました。ギャンブルのせいで殴られることもあったそうです」
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それから声を落とした。
「積を受け取ったら、くへ逃げると言っていました」
渡辺は顔をげた。
「いつ、その話を聞いたのですか」
「受け取る数です。私にだけ、秘密で話してくれました」
義子は涙を流しながら続けた。
「400万円があれば、しい所でをやり直せるって。子供たちさえいなければ、とっくにをていたとも言っていました」
で最も信頼されている義子の証言だった。
佐藤の目撃証言とも致していた。
捜査チームは、恵子が夫から逃げるため、積を持って自ら姿を消した能性がいと判断した。
全国に配がされた。
しかし座の利用記録はなく、携帯話も使われなかった。病院や役所を利用した形跡もなかった。
恵子がきていることを示す記録は、何ひとつ現れなかった。
健はにチラシを貼り、妻の写真を持って歩き回った。
「このを見ませんでしたか」
だが、々の線はたかった。
「あのが妻を追い詰めたんだろう」
「夫婦で積を持ち逃げしたんじゃないか」
噂は子供たちにまで及んだ。
学の男は学で「父親が母親を殺した」と言われ、学の娘は「母親がを盗んで逃げた」とからかわれた。
2は学へけなくなった。
昼、健は妻を探し続けた。夜になると酒をみ、自分を責めるようになった。
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「俺が殺したのかもしれない」
酔うたびに、そうつぶやいた。
その言葉が、さらに疑いをめた。
20029、捜査本部は解散した。
恵子の失踪は、計画なとして暫定に処理された。事件の記録は、未解決案件の保管箱へ移された。
ただ1、渡辺刑事だけは納得していなかった。
恵子が本当に自分から消えたのなら、なぜ子供たちに度も連絡をしなかったのか。
なぜ400万円を使った痕跡が、どこにも残っていないのか。
そして、居酒の厨に漂っていた、あの異様な漂剤の臭い。
答えのない疑問を残したまま、8のが流れた。
科学捜査班は、発見された歯を慎に回収した。
配管の専も現へ呼ばれた。30以、排設備を扱ってきた松本は、歯が見つかった部分を指差した。
「ここはPトラップです」
排管がU字型に曲がり、がたまる部分だった。から悪臭や虫ががるのを防ぐため、ほぼ全ての排設備に設置されている。
「のから、この歯が逆流して入ることはありますか」
渡辺が尋ねた。
松本は即座に首を横に振った。
「物理に能です。これは必ずから、つまり厨側から流れてきています」
「どの設備につながっているんですか」
図面を広げた松本は、配管を指でたどった。
「厨のシンクと、槽の裏にあった掃除用排です」
渡辺の胸がく脈打った。
8、佐藤は恵子が裏からて、タクシーに乗ったと証言していた。
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