"勘違い常連の末路" 第9話
黒田は声を荒らげることなく、順番に確認した。
「野から、夫婦関係について相談を受けましたか?」
「直接は聞いていませんけど」
「困っているので助けてほしいと、頼まれましたか?」
「こちらは善でしようとったんですよ」
「個に連絡を取りたいと、伝えられましたか?」
佐々はを閉じた。
黒田は、それ以い調で問い詰めなかった。
「野は本を探しているお客様へ声をかけ、商品をご案内しました。それ以のを示した事実はないと聞いています」
「でも、の気持ちは、はっきり言葉にしなくても分かることがありますよね」
「相が伝えていない気持ちを勝に決めるのは、いささか急ではないでしょうか」
佐々は何も返せなかった。
「確認をせず、ご自の考えを提にされたことで、野は困っています」
佐々は佳奈へ目を向けた。
「本当に迷惑だったんですか?」
佳奈は、佐々から目を逸らさなかった。
「のスタッフの対応を断り、私だけを探されること。勤務を確認されること。話してもいない夫婦の悩みがあると決めつけられること」
つずつ、はっきりと言葉にした。
「個な連絡先を渡され、連絡しなかった理由を確認されること。名刺の『いつでも丈夫です』という文も、何が丈夫なのか、私には分かりません」
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佳奈はく息を吸った。
「全て困っています」
逃げのない言葉だった。
しかし佐々の顔には、恥ずかしさより先に満が浮かんだ。
「だったら、もっとく分かるようにしてくれればよかったでしょう。普通に笑って何度も話しかけられたら、勘違いするだっていますよ」
「笑顔で接客することと、個な好は別です」
黒田が、2のへ半歩入った。
「今も、1のお客様としてご利用いただければといます。ただ、特定のスタッフだけに対応を求めることや、個な連絡先を渡すことはお控えください」
黒田は机の続きについて伝えるような、落ち着いた声を保っていた。
「今回の件は、スタッフでも共します」
「そこまでげさにする必がありますか?」
「スタッフがして働くために、必な対応です」
鳴られたわけでも、から追いされたわけでもない。
それなのに、事実だけを順番に並べられたことで、佐々は何も返せなくなった。
くを通った客が、わずかにこちらへ線を向けた。
佐々はジャケットの裾を引き、にへ向かった。
自ドアので度だけ振り返る。
佳奈は黒田とく確認を交わした、次の客の会計へ戻っていた。
佐々を追いかける様子もない。
申し訳なさそうに見送ることもなかった。
それでも佐々のでは、自分が違えていたのではなく、佳奈が急に態度を変えたことになっていた。
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最初から普通の接客だったのなら、もうしたくしてくれればよかった。
自分にだけ分かるような図を見せたで、までして拒絶するのはおかしい。
をる頃には、佳奈の接客こそが今回の原因へ置き換わっていた。
数、佐々は岸と岡本を、以と同じ居酒へ呼びした。
で起きたことを説しながらも、自分に利な部分はしずつ形を変えた。
佳奈の方から何度も話しかけてきた。
買った本を覚えていた。
自分のために何冊も本を選んでくれた。
夫の話まで個に打ちけてきた。
困っているように見えたため連絡先を渡したのに、突然までてきて、方に勘違いだと決めつけられた。
岸は腕を組み、岡本は黙って聞いていた。
佐々が話し終えると、岸がい声で尋ねた。
「その女性と、ので会ったことはあるのか?」
「まだ、そこまでんでなかった」
「向こうから会おうと誘われたことは?」
「員なんだから、簡単には言えないだろう」
「連絡先を聞かれたのか?」
「聞きにくいだろうとって、俺から渡したんだよ」
岸はさらに尋ねた。
「夫婦仲が悪いって、本から聞いたのか?」
「直接そうは言ってないけど、夫の話をすってことは何かあるだろう」
岸の眉に、い皺が寄った。
「夫がいると伝えて、おに諦めてほしかったんじゃないのか」
「それはたちの解釈だろう」