"勘違い常連の末路" 第7話
そのへ、用してきた名刺を挟んだ。
カウンターへ戻り、佳奈へ差しす。
佳奈は注文用だけだとい、そのまま受け取った。
「入荷しましたら、お話いたします」
「分かりました」
佐々はそのをれず、佳奈の顔を見た。
「この、ご主の話をしていたでしょう」
佳奈の表が、わずかに固くなった。
「はい」
「いろいろあるといますけど、1で抱え込まない方がいいですよ」
「何のことでしょうか?」
佳奈の返事を聞き、佐々はさく笑った。
では話しにくいのだろう。自分が事を察していると分かり、かえって恥ずかしいのかもしれない。
「今は無理に話さなくても丈夫です」
佐々は声をし落とした。
「何か困っていることがあったら、連絡してください」
佳奈はが分からず、元の用へ目を落とした。
「番号は、そこに入れてありますから」
佐々がり、客が途切れたところで、佳奈は注文用をいた。
から1枚の名刺が落ちる。
会社名と佐々の名。
裏には青いボールペンでかれた携帯番号。
そのには、「いつでも丈夫です」という文があった。
佳奈は名刺を持ったまま、しばらくけなかった。
夫がいると伝えたのは、庭の悩みを相談するためではない。それ以のはないと、察してもらうためだった。
それなのに佐々のでは、自分が1で悩みを抱え、助けを求められずにいることになっている。
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本について数回話しただけの客から、個な連絡先を渡された。しかも本は、当然自分が連絡するものだとっている。
佳奈は名刺と注文用を持ち、事務へ向かった。
の黒田は、机のに置かれた名刺を見ながら、佳奈からこれまでの経緯を1つずつ確認した。
最初に売りを案内したこと。
何度か本について質問されたこと。
の員の案内を断り、佳奈だけを探していたこと。
勤務を尋ねられたこと。
そして、夫がいると伝えた、庭に悩みがあると決めつけられ、個な連絡先を渡されたこと。
黒田は話を聞き終えると、名刺を透な袋へ入れた。注文用とは別にして、側の記録として保管する。
佳奈は、袋のに入った名刺から目を逸らした。
「私が余計に話しすぎたんでしょうか」
黒田は静かに首を振った。
「本を案内して、会計をして、聞かれたことに答えたんですよね」
「はい」
「それは普通の接客です」
黒田は袋に入れた名刺を、机の端へ置いた。
「相がそこへ別のをしたことまで、野さんの責任にはなりません」
翌から、佐々は携帯話を頻繁に確認するようになった。
朝、目を覚ました直。
通勤をりた。
昼休みに席をれた。
仕事を終え、会社をた。
見覚えのない番号から着信がないか、何度も履歴をいた。
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着信音がさくなっていないかも確認した。
しかし、佳奈からの連絡はなかった。
1目。
まだ名刺に気づいていないのだろう。
注文用に挟んだため、そのままの類と緒にしまわれたのかもしれない。名刺だけ落としてしまい、困っている能性もある。
佐々は、渡し方がし分かりにくかったかと考えた。
だが、あまり骨に渡せば、周りの員に見られてしまう。佳奈のを考えれば、あの方法が番よかったはずだ。
3目。
名刺には気づいたが、自分へ連絡していいのか迷っているのかもしれない。
佳奈は慎な性格に見えた。自分の方から何度か声をかけておきながら、いざ個な連絡となれば、急に怖くなったのだろう。
夫がいることも響している。
話をかければ履歴が残る。
メッセージを送れば、画面に通が表示される。
夫の目を気にしながら連絡するのは、簡単ではない。
4目。
もしかすると、自分の気持ちを佐々にられることが恥ずかしいのかもしれない。
本の話をしていただけの関係から、突然個な連絡をする。佳奈にとってはきな歩なのだろう。
佐々は、名刺をに何度も迷う佳奈の姿をい浮かべた。
番号を入力しては消す。
話をかけようとして、指を止める。
夫の音が聞こえれば、慌てて名刺を隠す。
像をねるほど、佐々は佳奈の苦しみを理解しているような気分になった。