"勘違い常連の末路" 第5話
レジ横に並ぶ刊へ目を向けながら、佳奈が何か話しかけてくるのを待つ。ろに別の客が並び、佳奈はそちらの対応へ移った。
その客にも、佳奈は笑顔を見せている。
ただし会話はい。
自分と話すの方がらかにい。
佐々は、それを自分だけが特別だからだと受け取った。実際には佐々が会話を終わらせず、質問をねているだけだった。
方の佳奈は、佐々が自分だけを探していることに気づき始めていた。
の員から声をかけられても断り、自分の接客が終わるまでくの棚をき来する。会計もそのをれず、次の言葉を待っている。
勤務まで尋ねられた。
佐々から、はっきり何かを告げられたわけではない。
その段階で自分から「そういうつもりはない」と切りせば、かえって話をきくしてしまう気もした。ただ本が好きで、同じ員へ相談したいだけなのかもしれない。
そうおうとしても、佳奈のには落ち着かない覚が残った。
次に佐々が訪れたのは、休の午だった。
内は族連れや学で混みっていた。佐々は文芸売りへ向かわず、まずレジを確認した。
佳奈はいない。
検索の周辺、サービスカウンター、文庫の棚。
佐々は内を周し、児童売りで絵本を並べている佳奈を見つけた。
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表を軽くえ、偶然見つけたような顔でづいていく。
「やっと見つけました」
佳奈のが止まった。
「何かお探しでしたか?」
「このの本を読み終わったので、次を相談しようとって」
「でしたら、文芸担当の者をお呼びします」
「いや、野さんでいいんです」
佳奈はすぐに返事をしなかった。
「私より詳しいスタッフがおりますので」
「専な説が欲しいわけじゃありません」
佐々は、相をさせるつもりで穏やかに笑った。
「僕の好みも、もう分かってきたでしょう」
その言葉に、佳奈は戸惑った。
数冊の本についてく話しただけで、佐々の好みを理解したつもりなどない。それでも客ので骨に困った表を見せることはできなかった。
「分かりました。いくつかご案内します」
佳奈は文芸売りへ向かった。
佐々は、自分でなければならないという希望を佳奈が受け入れたことに満した。
本当は佳奈も、自分と話すを嫌がっていない。最初は慮していたが、最には案内してくれた。
佐々のでは、断りきれずに応じた接客が、佳奈の本音へ変換されていた。
棚ので、佳奈は気シリーズの1冊をに取った。
「こちらは1冊ごとに事件が完結するので、読みやすいといます」
「野さんも読んだんですか?」
「私は最初の1冊だけです」
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「やっぱり好みがいですね」
「そうでしょうか」
佳奈は本を持ったまま、しを置いた。
佐々は何を答えても、自分との共通点へ結びつける。自分だけを探して内を歩き、の員の対応は断る。
勤務も尋ねられた。
確かなことは何もない。
それでも佐々が、自分との関係を普通の接客とは違うものとして受け取っているのではないか。佳奈は、そうじ始めていた。
いきなり勘違いだと指摘すれば、話をきくしすぎるかもしれない。
夫がいると分かれば、それ以のはないと察してくれるだろう。
佳奈はにしていた本の表へ線を落とし、できるだけ自然な調で言った。
「このシリーズ、うちの夫も読んでいるんです」
佐々の笑顔が止まった。
「男性の方にも気があるみたいで、刊がると夫と貸しっています」
「ご主がいるんですか?」
「はい」
佳奈は、それ以庭の話を広げなかった。
既婚者だと伝えることが目だった。
「こちらの本はどうされますか?」
佐々は、佳奈から線をした。
「今はやめておきます」
本を棚へ戻し、そのままへ向かった。
自ドアを抜けた瞬、胸の奥に苛ちが広がった。
夫がいるなら、なぜ最初に自分へ声をかけたのか。
なぜ買った本を覚えていたのか。
なぜ何度も自分の相をしたのか。
既婚者なら、男性客が勘違いしないような態度を取るべきではないか。
佐々は、自分が方に会話を続け、佳奈を探して通っていたことを忘れていた。