"勘違い常連の末路" 第4話
突然名を呼ばれ、佳奈は瞬を止めた。名札を見れば分かることだが、常連でもない客から名を呼ばれると、わずかな距のさをじた。
「私はあまり詳しくなくて。話題になっているものを何冊か読むくらいです」
「仕事柄、いろいろ読んでいるんでしょう」
「文芸の担当ではありませんので、本当にしだけです」
「じゃあ、僕の方がし詳しいかもしれませんね」
「そうかもしれません」
「この本を読んだら、次は同じ作の初期作品がいいですよ」
「ありがとうございます」
佳奈は会計を終え、袋を差しした。
「また何かお探しでしたら、スタッフへお声がけください」
員なら、どの客にも使う言葉だった。
しかし佐々には、自分とまた本の話をしたいという誘いに聞こえた。
ここで急いで事へ誘うのは、相へ負担をかける。女性の方が分にし、もうし分かりやすい図をすまで待つべきだ。
自分がけないのではない。
佳奈の気持ちを尊し、焦らずに見守っているのだ。
佐々は、自分の慎さに満していた。
佐々ので、佳奈はただの員から、気になる女性へ変わり始めていた。
自分が佳奈の言葉へ、本のらないを次々と加えていることには気づかなかった。
それから1週のに、佐々は2度、同じへを運んだ。
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1度目は、佳奈の姿がなかった。
レジを確認し、文芸の棚を回り、の奥まで見渡した。目当ての本があったわけではなく、佳奈がいなければ、そこで何かを買う理由もなかった。
佐々は何もに取らないままをた。
2度目に訪れた、佳奈は別の客を案内していた。
佐々はしれた棚のにち、本を選ぶふりをしながら会話が終わるのを待った。くにいた別の女性員が、その様子に気づいて声をかけた。
「何かお探しでしょうか?」
「いえ、丈夫です」
「名がお分かりでしたら、お調べできますよ」
「探している本はないので」
女性員は瞬戸惑ったが、軽くをげてれていった。
やがて客がり、佳奈が1になった。
佐々は待っていたと悟られないように別の棚を回り、偶然くを通ったような顔で声をかけた。
「このの本、読み終わりましたよ」
佳奈は瞬、記憶をたどるように目を細めた。
「先お探しだったミステリー説ですか?」
「ええ。野さんに勧めてもらった本です」
佳奈の表が、ほんのわずかに止まった。
自分は売りへ案内しただけで、勧めた覚えはない。
「お好みにったならよかったです」
「野さんと僕は、本の好みがいのかもしれませんね」
「私はそれほど詳しくないので」
佳奈は、し距を取るように答えた。
だが佐々には、親しくなりすぎないよう周囲の目を気にしているように見えた。
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「次に読むなら、どれがいいといますか?」
佐々が尋ねると、佳奈は文芸の棚へ線を向けた。
「同じ作の作品でしょうか?」
「野さんが選んだものを読んでみようかとって」
佳奈は、文芸担当の員を呼ぶべきか迷った。
しかし目のの客は、自分に本を選んでほしいと頼んでいる。断るほどの理由もなく、売れ筋の作品を2冊に取った。
佐々は本の内容よりも、佳奈の元を見ていた。
2冊の表を並べ、こちらの好みを考えながら選んでいる。
ただ商品を案内しているだけなのに、佐々には、自分のためにを使ってくれているようにじられた。
「こちらは理描写がで、こちらは事件の展が速い作品です」
「じゃあ、こちらにします」
「ありがとうございます」
レジへ向かう途、佐々は何気ない調を装って尋ねた。
「野さんは、いつもこのにいるんですか?」
佳奈のが、わずかに止まった。
「勤務はによって違います」
「に来たは、見かけなかったので」
「そうでしたか」
佳奈はそれ以答えず、レジへ入った。
佐々としては、会えなかったことを残にっていると伝えたつもりだった。そこまで示せば、佳奈も勤務する曜やを教えてくれると期待していた。
しかし佳奈には、自分の勤務を探られているようにしか聞こえなかった。
会計が終わっても、佐々はすぐにそのをれなかった。