"勘違い常連の末路" 第3話
「何冊か読んでいます。この作は事件そのものより、登物の理を読む方が面いんですよ」
佳奈は接客用の笑顔を保ったまま、さく頷いた。
「そうなんですね」
「派な展が好きなには、分良さが分からないといますけど」
佳奈のい相槌が、佐々には話がっている証拠に聞こえた。
自分には作品の本質を理解する力がある。そう言わんばかりに表へ目を落とす佐々を見て、佳奈は否定も肯定もせず、静かにをげた。
「ごゆっくりご覧ください」
本をにした佐々が会計へ向かうと、佳奈がレジに入っていた。
隣のレジには客がいなかったが、佐々はそちらへまなかった。刊を眺めるふりをしながら、佳奈のにいた客の会計が終わるのを待った。
「お待たせいたしました」
佳奈は本を受け取り、バーコードを読み取った。
「カバーはおかけしますか?」
「お願いします」
のカバーを折る佳奈の元を、佐々は黙って眺めていた。
客へう当たりの作業さえ、佐々には自分に対する丁寧なもてなしのように見えていた。
「お探しの本が見つかってよかったです」
「この作、最ったもいですけど、僕はから読んでいるんですよ」
「そうなんですね」
「名になった作品だけ読んで評価するもいますけど、初期の作品を読まないと本当の良さは分からないといます」
広告
佳奈は会計を済ませ、本を袋へ入れた。
「く読まれているんですね。ありがとうございました」
をた佐々の取りは、いつもより軽かった。
あの員はよく笑う、じのいい女性だった。自分の本の話もに聞いてくれた。
待っていれば、女性の方から声をかけてくれる。
自分が信じてきた自然な会いは違っていなかったのだと、佐々はくもい始めていた。
をた佐々は、歩きながらスマートフォンを取りした。
先ほど買った作の過作品を検索する。次に読む本を探すためではなく、佳奈ともう度話す材料を用するためだった。
気がつけば、佳奈のじのいい笑顔を何度もい返していた。
数、佐々は仕事帰りに同じへ入った。
入付の刊台を見るふりをしながら、まずレジの方向を確認する。だが、そこに佳奈の姿はなかった。
もう1周しようと歩きしたところで、若い男性員がづいてきた。
「何かお探しですか?」
「いや、丈夫です」
「検索もございますので、お気軽にお声がけください」
「結構です」
佐々はく答え、員から線をした。
しばらくすると、の奥から佳奈が戻ってきた。両には返却された本を抱えている。
佐々はすぐにはづかなかった。
こちらから追いかけるようなことはしたくない。
広告
佳奈が再び自分に気づける位置へ、自然に移すればいいと考えた。
佳奈がレジへ入ったことを確認すると、佐々はくの棚から文庫本を1冊取りした。のレジが空いていてもまず、佳奈の列へ並ぶ。
「いらっしゃいませ」
佳奈は本を受け取り、表へ目を落とした。その直、佐々の顔を見て、わずかに笑った。
「先はありがとうございました。お探しの本はいかがでしたか?」
佐々の胸がさく鳴った。
佳奈は自分を覚えていた。
何もの客を相にしているはずなのに、回探していた本のことを尋ねてきた。やはり、あの会話は佳奈にとっても印象に残っていたのだ。
「なかなか面かったですよ」
「そうでしたか」
「最まで読まないと分からない作りでしたけど、途で体見当はつきました」
「すごいですね」
驚いて褒めたわけではない。客のへ自然に相槌を打っただけだった。
それでも佐々は、自分の読みの鋭さを認められたようにじた。
「注して読めば、作者がわざと残している部分が分かるんですよ」
「そうなんですね」
「ただ筋だけを追って読むは、最になって驚くんでしょうけど」
佳奈はカバーをかけながら、さく頷いた。
この、佳奈のにはさな引っかかりがまれていた。
回の会話もかったが、今回は客と員のやり取りにしては質問がい。
「野さんは、どんなミステリーが好きなんですか?」