みかん小説
本棚

"勘違い常連の末路" 第2話

佐々は本気でそう考えていた。

佐々は、女性と話すことに慣れていなかった。

会社の女性社員が相でも、それは変わらない。仕事の確認や類の受け渡しなら問題なく話せるが、用件が済んだに自分から雑談を続けたり、相へ質問を返したりすることはほとんどなかった。

女性と何を話せばいいのか分からない。

だが、それを認めることを佐々のプライドが許さなかった。

結婚できていないのは、自分に問題があるからではない。職に縁がないせいであり、女性の方からづいてこないせいだとっていた。

自分から話題を探してまで、女性の嫌を取る必はない。落ち着いて構えていれば、女性の方から自然に話しかけてくるものだと信じていた。

たとえば、休みのは何をしているのかと尋ねる。

あるいは、読んでいる本を見て面そうだと声をかける。

その程度のきっかけを女性が作ってくれれば、自分も普通に会話を続けられる。佐々にとって会話とは、まず女性が扉をき、そこへ自分が応じてやるものだった。

しかし、実際の女性社員は佐々へ特別な話題を振らなかった。

業務連絡が終われば、それぞれ自分の席へ戻っていく。佐々は、それが自分の話しかけにくい雰囲気のせいだとは考えなかった。

方で、女性社員から何気なく話しかけられると、佐々はそのを必に考えた。

広告

なぜではなく自分に聞いたのか。

自分と話すきっかけを探していたのではないか。

単なる同僚同士の会話であっても、佐々では、女性が自分へ関を向けた来事へと変わっていった。

自分から女性へづくことはできない。それでも本は、自分が消極なのではなく、相の気持ちが見えるまで慎に待っているだけだとっていた。

佐々が待っていたのは、自然な会いではなかった。

自分は何もしないまま、女性の方からづき、自分の内面を見つけ、会話を始めてくれる状況だった。

たちと事をした翌、佐々は駅にあるち寄った。

探していたのは、最発売されたミステリー説だった。普段利用しているとは棚の並びが違い、文芸売りを何度歩いても目当ての本が見つからない。

くには検索があり、売りには何もの員がいた。それでも佐々は検索を使わず、員にも尋ねなかった。

自分から声をかけられないわけではない。

客が本を探していることに、員の方から気づくべきだとっていたのだ。

佐々は棚のを止め、並んでいる本の表を眺めた。しばらくして通ると、くで本を理している員へ線を送った。

しかし員は作業を続け、佐々へ声をかけなかった。

広告

胸のに、さな苛ちがまれた。

これだけ同じ所をき来している客がいるのだから、普通なら何かを探していると分かるはずだ。それに気づけないのは、周囲を見ていない証拠だと考えた。

佐々はもう度、同じ棚のへ戻った。

その、背から柔らかな声が届いた。

「何かお探しでしょうか?」

佐々が振り返ると、紺のエプロンをつけた女性員がっていた。肩にかからない髪をへかけた、すっきりとした顔ちの女性だった。

胸元の名札には、野とかれている。

野佳奈、41歳。こので働いて8になる員だった。

しくたミステリー説を探しているんですが」

佐々が作名と題名をにすると、佳奈はすぐに頷いた。

「こちらの刊でしょうか。ご案内します」

佳奈は迷いなく歩きした。佐々は、その斜めろをついていった。

ようやく自分の様子に気づける員がいた。

員として当然の対応であるはずなのに、佐々には、佳奈が以から自分を気に留めていた証拠のようにもじられた。

佳奈は刊の棚から1冊を取りし、表を佐々へ向けた。

「こちらでお違いないですか?」

「ええ、これです」

「最、よくお問いわせをいただいている本なんです」

「そうでしょうね。の作品もかなり評判になりましたから」

「以の作品も読まれているんですね」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: