"梅の下に眠る不動産王" 第6話
それに、この町では誰の墓かは皆っています。誰も来ない墓でも、誰が眠っているかはっているんです」
志垣はその言葉をので繰り返した。
誰も来ない墓でも、誰が眠っているかはっている。
昼過ぎ、志垣は共同墓へ向かった。
刈り取りの終わった田のを、15分ほど歩いた。が乾いた音をてて稲株のを渡り、の半分はのへ消えていた。
墓はさな丘の斜面にあった。
段をると、数基の墓が揃いに並んでいた。しいが供えられた墓もあれば、台座が苔で緑になっている墓もある。
番奥の隅に、崎の墓はあった。
膝ほどのさしかない、さな墓だった。苔むし、正面に刻まれた文字も化して浅くなっていた。
も線の跡もなかったが、周囲に雑はえていない。町のがの墓と緒に入れしているのだろう。
志垣は墓へち、周囲を見回した。
8の314、宇井源郎はここにっていた。
京では秘の宮田がえた茶を見つけ、志垣たちが会へ入っていた。その、消えたはずの男は田としかない所で、古い墓を見つめていた。
なぜ、ここなのか。
答えのないまま墓をりると、畑の脇で根を抜いている老に会った。
腰の曲がった柄な男性で、80歳を超えているように見えた。
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志垣が会釈すると、老はを止めた。
「よそから来なすったか」
「京からです。墓を見に来まして」
「墓?」
「崎さんというの墓です」
老の顔から、面そうな表が消えた。代わりにい昔を見るような目になった。
「崎さんを、ごじですか?」
「ってるも何も。戦すぐに、で京へていっただ」
志垣は息を詰めた。
「京へ?」
「昭24か25頃だった。わしはまだ垂れ僧だったから、はっきりとは覚えてねえけどな」
老は抜いた根を面へ置き、ゆっくり腰を伸ばした。
父親は戦争から帰らず、母親が1で子供を育てていた。崎は特に貧しく、べるものにも困っていたという。
「子供は何ですか?」
「男の子が2だ」
老は指を2本てた。
「母親と、その2で京へたんですか?」
老はしばらく黙り、ゆっくり首を横に振った。
「いや。京へたのは母親との坊やだ」
が田を渡った。
「では、のお子さんは」
老は志垣を見た。
その目にあったのは、しみでも警戒でもない。ただいだけだった。
「ここに残ったのは、末の坊やの墓だけだ」
志垣は来たを戻り、再び段をった。
崎の墓にしゃがみ、墓の側面にえた苔をのひらでそっと払った。
化した文字が現れた。
指でなぞらなければ読めないほど浅い。
「昭231221没 7歳」
そのに、名があった。
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「崎源郎」
志垣の指が止まった。
昭23に7歳でくなった子供の名。
1995に京から消えた産王と、全く同じ名だった。
京へ戻った志垣は、まず自分のという壁に突き当たった。
現の彼は資料係であり、正式な捜査権を持っていない。捜査本部は8に解散し、形の墓に同じ名があったというだけでは、戸籍を取り寄せる理由にもならなかった。
志垣は資料係の係の机へ、3枚のを並べた。
社代慎介の帳の写し。8の会の写真。そして久保沢の墓でき写した2つの名。
係はいそれを見た、志垣の顔を見た。
「温泉じゃなかったのか」
「入りませんでした」
「志垣さん、あんた8もこの事件をやってたよな」
「はい」
「これが事件かどうか、分かるのか?」
志垣は正直に首を横に振った。
「分かりません。ただ、8に度もてこなかった名がてきました。それだけは確かです」
係は子の背へ体を預け、井を見げた。
しばらく考えた、引きしから1冊のファイルをした。表には「未解決事件記録備計画」とかれていた。
「うちは資料係だ。過の事件の記録を正確に備する。それが仕事だ」
係はファイルを志垣の方へ滑らせた。
「関係者の調査に備があった。それを直すということなら、うちの仕事の範囲だな」
志垣は係の顔を見た。
だが、係はすでに別の類へ判を押し始めていた。
「はかかるぞ。役所というところはな」