"親友に夫を譲った日" 第1話
「おの親友を妊娠させた」
張から戻ってきたはずの夫・友幸は、リビングのに額をつけていた。
その隣には、学代からの親友だとっていた子が座っている。子は反省するどころか、勝ち誇ったようにきくなり始めた腹を撫でていた。
私は玄関のそばにったまま、しばらく声をせなかった。
このは、いったい何を言っているのだろう。
あまりにも現実れした景に、まるでのの揉め事を眺めているような覚になっていた。
そんな私を現実へ引き戻したのは、子の甲い声だった。
「まあ、そういうことだから。友幸とは婚してくれるわよね、弥」
「妊娠した相って……子なの?」
私が確認すると、子は唇の端を持ちげた。
「さすがに分かったわよね。旦はもらうから、あんたはこのからていって」
友幸はにをついたまま、私の顔をうかがっている。
泣いて謝るわけでもなく、私が鳴りすのを恐れているだけの顔だった。
私は2を交互に見たあと、静かに微笑んだ。
「んで」
子の笑みが瞬だけ止まった。
友幸も、驚いたように顔をげた。
「え……?」
「だから、婚してあげるって言ったの。あなたたちが望んでいるんでしょう?」
私は踵を返し、玄関へ向かった。
子も本当にが抜けている。私が何もらなかったとでもっていたのだろうか。
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2の関係に気づいたのは、もう5ものことだった。
ただ、婚の活をえるまで問い詰めなかっただけだ。
証拠を集め、収入を確保し、娘と義母が困らないように準備を続けてきた。
それなのに、2は自分から浮気と妊娠を告してくれたのだ。
これほどありがたい話はない。
「待てよ!」
背から友幸の声がんできた。
「婚だぞ。本当に分かっているのか?」
私は振り返った。
「分かっているわよ」
「お、パートしか収入がないだろ。俺と婚して活できるとっているのか?」
友幸の表に、いつもの見すような笑みが戻った。
私が結局は泣いてすがるとっているらしい。
「どうしても活できないっていうなら、お袋の世話係として雇ってやってもいいぞ」
「それがいいわ」
子が腹を抱えるようにして笑った。
「弥は寄りの世話をするのがお似いだもの。事と介護しか取り柄がないんだから」
私はもう度ため息をついた。
「子、やっと本性を隠さなくなったのね」
「はあ? 何のこと?」
「親友だと言って私にづいたのも、友幸を紹介したのも、最初から私を都よく使うためだったんでしょう?」
瞬、子は目を丸くした。
だがすぐに、つまらなそうにを尖らせた。
「なんだ。分かってたの? つまらないわね」
その言葉を聞いた瞬、胸に残っていた最の迷いが消えた。
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私はこの2に、もう何ひとつ慮する必はない。
「それじゃあ、あなたたちが私にしたことを、利息をつけて返してあげる」
私は微笑んだまま、バッグからスマートフォンを取りした。
「覚悟しておいてね」
私の名は島弥。34歳。
スーパーでパートをしながら、事と育児、それに義母の介護を続けてきた。
友幸は名自メーカー系列のディーラーで営業をしている。料は決してくなかったが、わがの活に余裕はなかった。
娘の葵は学4で、将来は私学を受験したいと言っている。
塾代や受験費用を考えれば、私も働かないわけにはいかなかった。
本当ならフルタイムで働きたかった。
けれど、の悪い義母が所で1暮らしをしており、通院や買い物、掃除や事の支度には私の助けが必だった。
義母は、くなった義父と暮らしたかられたくないと言い、同居を断っていた。
そして友幸は、事にも育児にも介護にも切関わろうとしなかった。
「俺は仕事が忙しい」
その言で、すべてが私の役目になった。
朝は族の朝と弁当を作り、葵を送りしてから義母のへ向かう。買い物や掃除を済ませたあと、スーパーで数働き、帰宅は夕を作る。
葵の宿題を見て、洗濯物を畳み、翌の準備をしているうちに夜になる。
それでも私は、自分が幸だとはっていなかった。
結婚から、友幸の母親には介護が必になるかもしれないと聞いていた。