みかん小説
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"捨てた妻の春" 第1話

「吉田静さん、署名を」

戸隼は、私ののペンを放り投げた。ペンは艶のある製テーブルのを転がり、え切った部に澄んだ音を響かせた。

彼の首にはめられた級腕計が、区役所の井からり注ぐい照を反射していた。隼計へ目を落としたのは、この部へ入ってからすでに3度目だった。

3

4台のに乗り、青麗華が待つ所へ向かわなければならないのだろう。初恋の女性と再婚するため、私との婚を刻もく終わらせたがっていることは、その態度を見れば嫌でも分かった。

私は目のに置かれた婚協議線を戻した。

財産分与として、港区のマンション1戸、自1台、そして現5000万円を私へ渡すとかれていた。額だけを見れば、婚する妻に対して分すぎる条件なのかもしれない。

けれど私は、に並ぶ文字を1つずつ、ゆっくりと目で追っていた。

の指先が、苛たしげにテーブルを叩く。

とん、とん、とん。

それはまるで、私たちの5を終わらせるためのカウントダウンのようだった。

「そんなにく読む必がありますか」

私が顔をげると、隼子の背にもたれ、たい目でこちらを見ていた。

「弁護士に確認させたものです。あなたの取り分が当になくならないよう、分に配慮しています」

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その言葉が終わると同に、彼の隣に置かれた携帯話が震えた。画面に浮かびがった名を見た瞬、隼の険しかった表がわずかに緩んだ。

麗華。

は携帯話をに取り、窓際まで歩いていった。私に背を向け、声をくして話していたが、話の相へ向けた甘い響きまでは隠せていなかった。

「もうすぐ終わるよ。うん、すぐ空港へ向かう。チケットは予約してあるから、配しなくていい」

話を切って戻ってきた隼は、私がまだ署名していないことに気づくと、骨に眉をしかめた。

「いったい、何をぐずぐずしているんですか」

私は答えず、協議の最のページをめくった。

子供に関する項目には、はっきりと記されていた。

婚姻の子供なし。

私のが、無識に腹部へ向かった。

から見れば、まだ何の変化もない平らなお腹だった。けれど、その内側には妊娠3ヶになるさな命が確かに宿っている。

、病院で渡された超音波写真を見た、私は震える指でさなをなぞった。隼に伝えなければといながらも、彼はそのの夜、麗華とをやり直したいと告げてきた。

初恋の女性を忘れられなかった。

私との結婚は違いだった。

刻も婚し、麗華と正式に夫婦になりたい。

彼は迷いなくそう言った。

私はお腹を押さえたまま、正面に座る隼を見つめた。

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端正な顔ちだった。い目元も、通った筋も、結婚当初から何も変わっていない。

変わったのは、その顔が私へ向けるだけだった。

今の隼の目には、苛ちと嫌悪しかなかった。まるで私が、級なスーツに付着したさな汚れであるかのように。

「隼さん」

私が静かに呼ぶと、彼は面倒そうに顔をげた。

「私たちが結婚して、5になりますね」

はくだらない冗談でも聞いたかのように、からく息を漏らした。

「だから何ですか。もっとが欲しいと言うつもりなら、額を言ってください」

彼は財布から黒いカードを取りし、協議へ投げた。

「暗証番号はあなたの誕です。座に入っているは、好きに使って構いません。これで分でしょう」

私はカードへ目を向けなかった。

「私をしたことはありましたか」

その言葉を聞いた瞬、隼の表に苛ちが広がった。踏んではならない所へ私がを踏み入れたとでも言いたげに、目を細める。

「そんな幼稚な質問はやめてください。私たちはでしょう」

「私たちは夫婦でした」

「過形です」

たく訂正した。

「もうすぐ、そうではなくなる」

彼は私のから協議とペンを奪い、署名欄を指でく叩いた。

く署名してください。これで終わりです。あなたはを受け取り、自分のきればいい。

もう私に執着しないでください」

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