"兄の嘘、妹のリボン" 第3話
町の々は、警察の結論がるから彼を犯だと決めつけた。
しかし、捜査を続けた警察はいがけない事実へき着いた。
田は事件が起きた刻、れた別の町でひったくりをしていた。その姿が防犯カメラに残り、事件現にいることが能だったと証された。
窃盗事件では捜査を受けることになったが、幸の事件については証拠分で釈放された。々が田だけへ注目しているに、事件発直の貴なは失われていた。
のが何度も現へり注ぎ、民や捜査員の跡がになった。残されていたかもしれない微細な証拠は汚染され、鑑定できる価値を失っていった。
伊は捜査会議の、1で拓也の資料を見直した。
輩の佐藤刑事が隣へ座り、入退記録を指でなぞった。
「この記録で証できるのは、学証が読み取られたことだけです」
佐藤は声を抑えながら続けた。
「そのカードを使ったのが、本当に本だったとは限りません。誰かに預けていた能性もあります」
理屈のでは正しかった。
だが、代理で学証を使った物も、それを示す映像も見つかっていなかった。推測だけで、妹を失った遺族を殺事件の容疑者として追及することはできなかった。
何よりも、拓也自が疑いをざけていた。
広告
泣きながらチラシを配り、捜索の先につ兄。名学へ通う優秀な学で、受け答えも落ち着いており、警察へも積極に協力していた。
捜査チームのにも、あれほど妹をう青を疑うのは残酷だという空気がまれていた。
それでも伊は、京と事件現の移を自分の帳にきした。幹線を利用すれば片約3で、午の半が空いていれば往復は能ではなかった。
朝に学へ入り、誰かへ学証を預けて現へ向かう。犯に京へ戻り、夕方の記録を残す。
計算は成した。
しかし、その仮説を裏付ける証拠は何もなかった。伊は帳を閉じ、疑問だけを胸の奥へ残した。
が過ぎるにつれ、捜査は勢いを失っていった。捜査本部は縮され、担当していた刑事たちも次々と別の事件へ配置換えされた。
幸の事件は、期未解決事件として扱われるようになった。分い記録と証拠品は、県警の倉庫へ移され、棚の奥で静かにをねていった。
伊もの事件を担当するようになったが、幸のファイルだけは定期に取りした。最まで渡されなかった誕プレゼントの写真を見るたび、胸にいものが残った。
「何かを見落としている」
伊はそうじていた。
だが、どれほど資料を読み直しても、しい答えはてこなかった。
広告
その、残されたはしずつ崩れていった。
母親の幸子は、娘から届いた最のメッセージを消すことができなかった。携帯話の画面をき、「夜にまたね」という文字を毎見つめた。
娘が倒れていたへも、何度となくを運んだ。現のへつと、あとしで帰宅できた娘がどれほど怖かったのかを像し、胸を押さえて泣いた。
父親は酒をむ量が増えた。娘の名をにすることは減ったが、夜になると仏壇のでいかずに座っていた。
幸の部は、くなったのまま残された。
机のには教科とノートが並び、制の替えがハンガーに掛かっていた。幸子は何つ片づけることができなかった。
対照に、拓也は京で自分の活を続けていた。
名学に通う優秀な学として周囲から扱われ、やがて企業でインターンを始めたというらせが両親へ届いた。娘を失った夫婦にとって、息子の成功だけが最に残された希望だった。
お盆や正になると、拓也は必ず実へ戻ってきた。
妹の仏壇のでくをわせ、親戚のでは涙を流した。周囲の々は、しみに耐えながら派にきる兄を褒めた。
「幸ちゃんの分まで、拓也君には幸せになってもらわないと」
そう言われるたび、拓也は目を伏せ、静かに頷いた。
ただ、々の線がなくなると、彼は幸の部へづくことを嫌がった。幸子が娘の遺品を理しようとすると、拓也は神経質なほどく止めた。
広告
おすすめ作品
-
完結第9話
午後4時の失踪日記
1998年8月15日、夏の白浜海水浴場で、大学生の佐藤健二が忽然と姿を消した。 友人たちが海で遊んでいる間、健二は1人で荷物番をしていたはずだった。だが戻ってきた時、敷物の上に残されていたのは、揃えられた運動靴と読みかけの専門書だけ。本人の姿も、鞄も、どこにもなかった。 事故なのか、自ら消えたのか、それとも誰かに呼び出されたのか。 手がかりのないまま、家族の時間は止まり、事件は長い沈黙の中へ埋もれていく。 それから12年後。 白浜町の小さな中古品店で、健二の学生証が入った古い鞄が見つかる。さらに内ポケットから出てきた日記には、失踪直前の彼が抱えていた“ある人物”との金銭トラブルが記されていた。 日記に何度も登場する謎の頭文字「K」。 そして最後のページに残された一文。 〈今日、全てが決まるだろう〉 午後4時、健二は誰と会い、何を決めようとしていたのか。 12年後に見つかった日記が、消えた大学生の夏を再び動かし始める。ミステリー|行方不明1.3萬字5 5 -
完結第9話
8年目の遺失物
1997年8月、東名高速道路の富士川サービスエリアで、28歳の岡田裕子が突然姿を消した。 夫と車で帰宅する途中、トイレへ行くと言って車を降りたまま戻らなかった裕子。夫はその場で通報せず、1人で車を出し、失踪届が出されたのは3日後だった。 財布も身分証も、幼い息子と写った家族写真も見つからないまま、事件は未解決のまま時だけが過ぎていく。 そして8年後。 遺失物センターの棚の奥から、古びたベージュ色のバッグが発見される。中には裕子の身分証、家族写真、そして震える文字で書かれた手紙が残されていた。 「私は今、1人では家に帰ることができません」 あの夜、裕子は本当に消えたのか。 夫はなぜ、妻を残して走り去ったのか。 そして、バッグを届けた“別の女性”は何を知っていたのか。 8年間止まっていた家族の時間が、古いバッグの中の手紙によって、静かに動き始める。ミステリー|行方不明1.3萬字5 159 -
完結第13話
霧葬の山岳会
1998年10月、長野県の山岳会で、ただ1人の女性会員・高木真美が白い霧の中から姿を消した。 翌年に結婚を控えていた28歳の真美。仲間たちと向かった秋の黒岩岳で、彼女は突然行方不明となり、事故による滑落として処理された。赤いキャップとちぎれたザックの一部だけを残して、遺体は見つからなかった。 残された母は、娘の死を受け入れられないまま、毎年10月12日になると警察へ手紙を書き続けた。 「あの日、娘に何があったのか。どうか、もう一度調べてください」 そして16年後。 黒岩岳の岩の隙間から、古い登山靴と人骨が発見される。そこは、滑落した人間が偶然たどり着くにはあまりにも不自然な場所だった。 さらに遺骨には、事故では説明できない傷が残されていた。 16年前、霧の中で本当は何が起きていたのか。 そして、山岳会の仲間たちはなぜ同じ証言を繰り返したのか。 母の手紙が止めなかった時間が、ついに閉ざされた山の沈黙を破り始める。因果応報|行方不明|孤獨2.0萬字5 214 -
完結第8話
消えた背番号1
平成12年、都内のホテルで開かれたプロ野球選手・藤原健二の引退会見。 肩の故障でも、年齢でもない。彼がマイクの前で語り出したのは、18年前の春に消えた天才エース投手・宮崎武志の名前だった。 昭和57年、選抜大会を目前に控えた大阪の工業高校。背番号1を背負う武志は、病気の母と幼い弟妹を支えるため、プロ入りを夢見て投げ続けていた。一方、幼い頃から常に武志の後ろにいた藤原は、誰にも言えない嫉妬を胸に抱えながら、控え投手としてその背中を見つめていた。 選抜出発の前夜、家族の苦しみと将来への不安に追い詰められた武志は、学校を出ていく。 その後を追った藤原。 月明かりの下で交わされた言葉は、2人の運命を大きく狂わせることになる。 なぜ天才エースは甲子園を目前に消えたのか。 そして18年後、すべてを手に入れたはずの藤原が、自らの引退会見で語った“本当の理由”とは――。ミステリー|行方不明1.1萬字5 375 -
完結第8話
10年目の地下室
2004年12月、忘年会の夜。 会社員の田村孝介は、2次会で訪れたカラオケ店から妻へ電話をかけた。 「もうすぐ出る。少し地下に降りるだけだから」 それが、家族が聞いた最後の声だった。 翌朝になっても田村は帰らず、携帯電話の電源は切れたまま。財布も口座も動かず、どこかへ逃げた形跡もない。妻は何度も「夫は地下に降りると言った」と訴えたが、警察は事件性を認めず、行方不明として処理した。 その後、カラオケ店は突然廃業し、店長は海外へ出国する。 誰も調べなかった地下。 不自然に塗り固められたコンクリートの壁。 そして、田村の名前の横に残された謎の星印。 10年後、老朽化したビルの解体工事中、閉ざされていた地下から人骨が見つかる。 田村はなぜ地下へ向かったのか。 あの夜、彼は誰と何を話したのか。 そして、真実をコンクリートの奥へ封じ込めたのは誰だったのか。 忘れ去られたはずの忘年会の夜が、10年の時を越えて再び動き出す。ミステリー|行方不明1.2萬字5 211 -
完結第8話
床下に消えた29年
2023年、岐阜県の山中にある古民家で深夜に火災が発生した。 焼け跡から見つかったのは、この家で1人暮らしをしていた高齢男性の遺体。古い木造家屋の痛ましい火事として処理されるはずだった。 しかし、消防士が焼け落ちた床を踏み抜いた時、事件はまったく別の顔を見せる。 床下に広がっていたのは、誰も存在を知らなかった暗い空間。そこには、木の板に縛りつけられたまま長い年月を過ごした、女性の乾燥遺体が横たわっていた。 遺体のそばに残されていた古い医療カード、切り裂かれた写真、そして日記に記された不気味な一文。 「もう彼女は逃げることができない」 29年前、自ら姿を消したと思われていた女性は、本当に新しい人生を選んだのか。 それとも、誰にも知られない山中の家で、ずっと助けを待ち続けていたのか。 すべてを灰に変えた火が、長年閉ざされていた床下の秘密を暴き出す。ミステリー|行方不明1.2萬字5 202