"夕焼けの後継者" 第3話
岡グループ会、岡総郎だった。
その差しは氷のようにたかったが、奥にはい閉じ込められてきたいしみが沈んでいるように見えた。
秘から訪問者名簿を受け取った総郎は、類へ目を落とした。
佐々満、26歳。
その名と齢を見た瞬、総郎のが止まった。
佐々という姓は珍しくない。それでも、息子の健を敷から追いしたと、目のの青の齢を計算すると、胸の奥で何かが静かに脈打ち始めた。
さらに記された所は、健が最にを隠していたとされる町だった。
総郎は努めて線をし、な聞を広げた。しかしを持つ指先は、本にも止められないほど僅かに震えていた。
「こちらへどうぞ」
斎藤に促され、満はをげて歩きした。
総郎は聞のから、具鞄を肩に掛けた青のろ姿を見つめ続けた。だが満は、その線に気づくことなく、劇へ続く廊をんでいった。
い扉ので、斎藤が振り返った。
「2以内に終わらせてください。本の予定がございますので」
斎藤は扉へを置きながら、さらに付け加えた。
「では、照設備以のものには切触れないように」
「分かりました」
満がく答えると、斎藤は扉をけた。
い閉ざされていたらしい扉は、い軋み声をげた。
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隙から、埃と古い材の匂いを含んだたい空気が流れしてくる。
扉の先は、い暗に沈んでいた。
台の緞帳は褪せ、井から吊られた照材にはい埃が積もっている。だけが30に止まり、誰かのしみがそのまま閉じ込められているような空だった。
満は具鞄をろし、照制御盤へゆっくりとづいた。
劇のは、の音さえ届かないほど静かだった。満は扉を背にしたままち、目が暗に慣れるのを待った。
先へ流れ込んでくるのは、埃と古いの匂いだった。ではあれほどくっていたが完全に遮断され、かえってその静けさが苦しくじられた。
満がをめると、台の板がく軋んだ。
かつて鮮やかな赤だった緞帳は、いを経て暗い茶へ変わっている。井には照用のパイプが幾にも渡され、そのに積もった埃が懐灯のを受けてく浮かんだ。
制御盤はの背丈ほどのさがあり、表面には無数のスイッチとダイヤルが並んでいた。指紋1つないパネルにはい埃だけが残り、い誰も触れていないことが分かる。
満は指先で角を軽く叩いた。
鈍い音が、空の客席へ広がって消えていった。
方では、斎藤が腕を組み、壁へ寄りかかっている。
「企業の技術者が3組来ましたが、全員が匙を投げました。
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あなた1で本当に直せるのですか」
満は答えなかった。
具鞄のファスナーをき、スパナーとドライバーをへ並べる。最に父の古いノートを取りすと、斎藤の眉が僅かにいた。
満は気づかず、擦り切れたページを慎に捲った。
その頃、敷の奥にある岡夫の部では、別のが流れていた。
窓際の子に座った夫は、膝のに古い記をいていた。しかし線は文字ではなく、窓ガラスを流れる筋へ向けられている。
美しく結いげられた髪と真珠の飾りは、彼女がく財閥夫としてきてきたことを物語っていた。だが、その顔に笑みが浮かぶことはなかった。
息子の健が敷から消えて以来、30、から笑ったことは度もなかった。
夫は引きしをけ、奥から古びたハンカチを取りした。布を広げると、から幼い子供の写真が現れた。
写真の子供は無邪気に笑っていた。
夫はその顔をく見つめ、胸へ抱き寄せる。だがすぐにハンカチで包み直し、誰にも見られないよう引きしの奥へ戻した。
廊では、総郎が劇の窓を見つめていた。
ポケットのには、い封筒が入っている。2、秘へ極秘に依頼した遺伝子鑑定に関する類だった。
満が事の見で敷へ来た際、子に残っていた髪の毛を秘が回収していた。
まだ結果をいてはいなかったが、総郎の胸には、すでに答えにい予がまれていた。