"午後4時の失踪日記" 第9話
すでに80歳を超え、以のように全国を回ることはできなくなっていた。それでも、息子を待つ気持ちは変わらないと静かに話した。
「私は、犯を決めつけたいわけではありません」
輔は机のに健の写真を置き、集まった記者たちを見渡した。
「息子に何が起きたのか、それだけをりたいんです。健が何を怖がり、誰と会い、最に何を言ったのか。親として、それをらないまま終わりたくありません」
2025になっても、佐藤健の所は確認されていない。
で発見された血痕は健のものだったが、遺体は見つからなかった。並介に向けられた疑いも完全には消えていないが、無罪判決を覆すしい証拠もていない。
K、H、Jの正体も分からないままだった。
古品へ鞄を持ち込んだ男が事件の関係者だったのか、偶然古い荷物を処分しただけなのかも判していない。
毎になると、浜浴には勢のが訪れる。
子供たちは波打ち際をり、学たちは敷物ので笑いう。1998815とよく似た景が、何もなかったように繰り返されている。
を見ろす慰霊碑には、今も折、しいが供えられる。
に刻まれた「忘れません」という言葉を読み、を止めるもいる。そのくは、佐藤健という青を直接らないたちだった。
広告
健は、計を助けようとして期の仕事を探していた。
自分が抱えた問題を両親へ言えず、友にも相談できないまま、記のだけで苦しみを吐きしていた。
最のページに残されていたのは、わずか1だった。
〈今、全てが決まるだろう〉
午4。
そのに健が誰と会い、何を話したのか。
なぜ運靴を揃えて残し、鞄だけを持って姿を消したのか。
答えをる者は、今もどこかで沈黙しているのかもしれない。
1998の、数千で賑わう辺から、1の学が消えた。
跡は波に消され、名もいのへ埋もれかけた。それでも、12に現れた鞄と記は、彼が自分ので全てを捨てたのではないと訴えていた。
佐藤健が最に残した言葉は、事件を解決する答えにはならなかった。
だが、忘れられかけていた青を再び々の記憶へ戻し、止まっていた捜査をかした。
青は戻らなかった。
真実も、まだ見つかっていない。
それでも辺の碑に刻まれた言葉だけは、今もののに残り続けている。
忘れません。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
兄の嘘、妹のリボン
2014年11月、再開発予定地の暗い路地で、17歳の女子高生・中村幸が遺体となって発見された。 自宅まで残りわずか100m。彼女の手には、兄への誕生日プレゼントが固く握られていた。 警察は当初、現場付近にいた前科のある男を疑う。だが捜査は決定打を欠き、事件は未解決のまま時間だけが過ぎていった。 誰よりも妹を思い、涙ながらに情報提供を呼びかけていた兄・拓也。家族も町の人々も、彼だけは疑わなかった。 しかし4年後、取り壊し前の家から封印された一通の封筒が見つかる。 そこに隠されていたのは、兄が守り続けた大きな嘘だった。 最後まで兄を信じていた妹は、なぜ家のすぐ近くで命を奪われたのか。 リボンの結び目に残された小さな痕跡が、誰も見ようとしなかった真実を暴き出す――。ミステリー|行方不明1.4萬字5 6 -
完結第9話
8年目の遺失物
1997年8月、東名高速道路の富士川サービスエリアで、28歳の岡田裕子が突然姿を消した。 夫と車で帰宅する途中、トイレへ行くと言って車を降りたまま戻らなかった裕子。夫はその場で通報せず、1人で車を出し、失踪届が出されたのは3日後だった。 財布も身分証も、幼い息子と写った家族写真も見つからないまま、事件は未解決のまま時だけが過ぎていく。 そして8年後。 遺失物センターの棚の奥から、古びたベージュ色のバッグが発見される。中には裕子の身分証、家族写真、そして震える文字で書かれた手紙が残されていた。 「私は今、1人では家に帰ることができません」 あの夜、裕子は本当に消えたのか。 夫はなぜ、妻を残して走り去ったのか。 そして、バッグを届けた“別の女性”は何を知っていたのか。 8年間止まっていた家族の時間が、古いバッグの中の手紙によって、静かに動き始める。ミステリー|行方不明1.3萬字5 159 -
完結第13話
霧葬の山岳会
1998年10月、長野県の山岳会で、ただ1人の女性会員・高木真美が白い霧の中から姿を消した。 翌年に結婚を控えていた28歳の真美。仲間たちと向かった秋の黒岩岳で、彼女は突然行方不明となり、事故による滑落として処理された。赤いキャップとちぎれたザックの一部だけを残して、遺体は見つからなかった。 残された母は、娘の死を受け入れられないまま、毎年10月12日になると警察へ手紙を書き続けた。 「あの日、娘に何があったのか。どうか、もう一度調べてください」 そして16年後。 黒岩岳の岩の隙間から、古い登山靴と人骨が発見される。そこは、滑落した人間が偶然たどり着くにはあまりにも不自然な場所だった。 さらに遺骨には、事故では説明できない傷が残されていた。 16年前、霧の中で本当は何が起きていたのか。 そして、山岳会の仲間たちはなぜ同じ証言を繰り返したのか。 母の手紙が止めなかった時間が、ついに閉ざされた山の沈黙を破り始める。因果応報|行方不明|孤獨2.0萬字5 214 -
完結第8話
消えた背番号1
平成12年、都内のホテルで開かれたプロ野球選手・藤原健二の引退会見。 肩の故障でも、年齢でもない。彼がマイクの前で語り出したのは、18年前の春に消えた天才エース投手・宮崎武志の名前だった。 昭和57年、選抜大会を目前に控えた大阪の工業高校。背番号1を背負う武志は、病気の母と幼い弟妹を支えるため、プロ入りを夢見て投げ続けていた。一方、幼い頃から常に武志の後ろにいた藤原は、誰にも言えない嫉妬を胸に抱えながら、控え投手としてその背中を見つめていた。 選抜出発の前夜、家族の苦しみと将来への不安に追い詰められた武志は、学校を出ていく。 その後を追った藤原。 月明かりの下で交わされた言葉は、2人の運命を大きく狂わせることになる。 なぜ天才エースは甲子園を目前に消えたのか。 そして18年後、すべてを手に入れたはずの藤原が、自らの引退会見で語った“本当の理由”とは――。ミステリー|行方不明1.1萬字5 375 -
完結第8話
10年目の地下室
2004年12月、忘年会の夜。 会社員の田村孝介は、2次会で訪れたカラオケ店から妻へ電話をかけた。 「もうすぐ出る。少し地下に降りるだけだから」 それが、家族が聞いた最後の声だった。 翌朝になっても田村は帰らず、携帯電話の電源は切れたまま。財布も口座も動かず、どこかへ逃げた形跡もない。妻は何度も「夫は地下に降りると言った」と訴えたが、警察は事件性を認めず、行方不明として処理した。 その後、カラオケ店は突然廃業し、店長は海外へ出国する。 誰も調べなかった地下。 不自然に塗り固められたコンクリートの壁。 そして、田村の名前の横に残された謎の星印。 10年後、老朽化したビルの解体工事中、閉ざされていた地下から人骨が見つかる。 田村はなぜ地下へ向かったのか。 あの夜、彼は誰と何を話したのか。 そして、真実をコンクリートの奥へ封じ込めたのは誰だったのか。 忘れ去られたはずの忘年会の夜が、10年の時を越えて再び動き出す。ミステリー|行方不明1.2萬字5 211 -
完結第8話
床下に消えた29年
2023年、岐阜県の山中にある古民家で深夜に火災が発生した。 焼け跡から見つかったのは、この家で1人暮らしをしていた高齢男性の遺体。古い木造家屋の痛ましい火事として処理されるはずだった。 しかし、消防士が焼け落ちた床を踏み抜いた時、事件はまったく別の顔を見せる。 床下に広がっていたのは、誰も存在を知らなかった暗い空間。そこには、木の板に縛りつけられたまま長い年月を過ごした、女性の乾燥遺体が横たわっていた。 遺体のそばに残されていた古い医療カード、切り裂かれた写真、そして日記に記された不気味な一文。 「もう彼女は逃げることができない」 29年前、自ら姿を消したと思われていた女性は、本当に新しい人生を選んだのか。 それとも、誰にも知られない山中の家で、ずっと助けを待ち続けていたのか。 すべてを灰に変えた火が、長年閉ざされていた床下の秘密を暴き出す。ミステリー|行方不明1.2萬字5 202