"午後4時の失踪日記" 第1話
1998815。休みも終盤に差しかかった曜、浜浴は朝から勢ので賑わっていた。
とりどりのパラソルが砂浜を埋め、波打ち際では子供たちが歓声をげていた。のから流れる音楽と呼び込みの声がなり、誰かが助けを求めても、すぐには気づけないほどの騒がしさだった。
そのの午、学の経営学部3に学していた佐藤健は、同じ学科の友たちと浴を訪れた。男性と女性をわせた6のグループは、岸の央付に空いている所を見つけ、敷物や荷物を広げた。
健は普段よりし静かだった。
友が話しかければ笑顔を見せ、冗談にもく返していたため、誰も刻には受け止めなかった。ただになって振り返ると、そのは自分から会話に入ることがなかったという。
午3頃になると、友たちは次々にちがり、へ入る準備を始めた。健だけは着に着替えず、敷物のに座ったまま経営学の専をいていた。
「健も来いよ」
へ向かおうとしていた友が振り返ると、健は本から顔をげた。
「俺はここにいる。荷物も見ておくから」
泳が苦で、に入ることも好まなかった健が残るのは珍しいことではなかった。友たちはそれ以誘わず、砂を蹴りながら波打ち際へっていった。
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健は1になると、しばらく本を読んでいたという。から戻る途で敷物の方を見た友も、俯いた健らしい姿をくから確認していた。
午430分頃、遊び疲れた友たちが敷物へ戻った。
しかし、そこに健の姿はなかった。
「健は?」
誰かが尋ねたが、答えられる者はいなかった。敷物のには、きちんと揃えられた運靴とタオル、そして健が読んでいた専が残されていた。
本には栞が挟まれ、でページがめくれないよう、端にさなが置かれていた。急いでちったというより、し席をしただけのように見えた。
友たちは、健がトイレか売へったのだろうと考えた。誰かと約束しているとも聞いておらず、荷物を置いたままくへくとはわなかった。
ところが、30分待っても健は戻らなかった。
友たちは分けをして、売やシャワー、トイレの周辺を探し始めた。のにも写真を見せ、同じ頃の男性が来なかったかと尋ねたが、力な報は得られなかった。
のも探した。
健が泳いでいる能性はかったが、万がを考え、友たちは何度も名を呼びながら波打ち際を歩いた。沖を見つめても、のや浮き輪が無数に見えるばかりで、健の姿を見分けることはできなかった。
が傾き始めると、友たちの表から笑みが消えた。
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健は泳ぎが得ではなく、を怖がっていた。もし何らかの理由でへ入ったのなら、自力で戻れなくなった能性もあった。
午7を過ぎ、友たちは浜の交番へ駆け込んだ。
「緒に来た友が戻らないんです」
息を切らしながら事を説したが、警察官の反応は慎だった。の繁忙期には、仲とはぐれたという相談が何度も持ち込まれていたからだ。
「携帯話は持っていますか」
「持っています。でも、何度かけてもません」
当の携帯話は、現ほど広く普及していなかった。位置報を確認する能もなく、源を切られれば追跡することはできなかった。
警察官は健の特徴と装をき留めた、友たちへ晩待つよう助言した。
「自分で宿へ戻っている能性もあります。の朝になっても連絡がなければ、もう度来てください」
友たちは納得できなかったが、く求めるだけの根拠も持っていなかった。健の荷物を抱え、何度もろを振り返りながら浴をにした。
翌朝になっても、健は戻らなかった。
友たちが再び交番を訪ねた、失踪からすでに20くが経過していた。警察はようやく本格な捜索を始めたが、現にはしい浴客が押し寄せていた。
の砂浜に残っていた跡は、波と無数ののによって消えていた。
健が最に座っていた所さえ、正確には特定できなくなっていた。