"残り物少年の奇跡" 第5話
その頃、翔太との夕は3週目に入っていた。ある夜、がいつものようにを置いた、孝志はの指先がごくわずかにいたようにじた。
あまりにもさなきだったため、自分の像かもしれないとった。だが、翔太がをしたも、の奥にはかすかな覚が残っていた。
「翔太。俺のに触れると、何か分かるのか」
「命をじます。ゆっくり流れるみたいに、いけれど確かに流れています」
「どういうだ」
「体が、くことをいそうとしているんです」
「神経は切れている。勝に元へ戻るはずがない」
翔太は難しい言葉を考えるように目をげた。
「神経はケーブルみたいなものですよね。切れたが使えなくても、体がしいを探すこともあるんじゃないですか」
翌、孝志は主治医のを訪ねた。医師は脊髄損傷を専とする神経内科医で、事故以来ずっと孝志の状態を診てきた。
「に、しびれと温かさがあります。昨夜はわずかにいたとうんです」
医師は慎な表になった。
「半随の患者さんが、実際にはない覚やきをじることはあります。脳が過の覚を再現することがあるのです」
「もう度、検査してください」
検査はをかけてわれた。反射、覚、筋肉の反応を確認した医師は、最に何度も同じ箇所を確かめ、困惑した顔をげた。
広告
「完全に反応を失っていたはずの筋肉に、ごくい収縮があります」
「それは、どういうですか」
「正直に言えば、まだ分かりません。以の検査では、脊髄損傷は完全と判断されていました。こうした反応がるはずはないのです」
医師はたなMRI検査と詳しい神経検査を配した。孝志は翔太のことを話そうとしたが、科学な説を求める医師に笑われる気がして、を閉ざした。
翌、輝が数かぶりに父親のオフィスを訪れた。孝志は建築設計図から顔をげ、成した息子を見つめた。
「輝、会えてうれしい。学はどうだ」
「まあまあ。それより、話したいことがある」
輝は父親の机のにち、ためらいながら翔太の話を切りした。恵子が探偵を雇ったことを孝志が言い当てると、輝は驚いて目を見いた。
「どうして分かったんだ」
「おの母さんのことだからな。それで、何が分かった」
「あの子は、本当に孤児だった。でも、それだけで全だとは限らないだろ」
孝志は、事故以来、自分よりもずっとくびてしまった息子を見つめた。
「最に、俺たちが本当の話をしたのはいつだった」
「どういうだよ」
「学や会社の話ではない。おが何をじているかを話したのは、いつだ」
輝は線をそらした。
「分からない。事故のかもしれない」
広告
「俺にっているのか」
直接尋ねられ、輝はしばらく黙った、く頷いた。
「ってるよ。父さんが族を壊したからだ。事故が起きて、母さんと婚して、全部変わった。母さんは働き始めたし、僕はくにならなきゃいけなかった」
輝は拳を握り、父親を見た。
「それなのに父さんは、全部諦めた」
その言葉は孝志の胸にく突き刺さった。以なら鳴るか、会話を終わらせていただろうが、孝志は翔太が語った父親の言葉をいした。
「その通りだ。事故の、俺は希望を失った。俺が族かられた方が、おたちのためになるとい込んだ」
孝志は机ので両を組み、息子へ向き直った。
「だが、おたちが何を望んでいるか尋ねもしなかった。あれは俺の自己な考えだった」
輝は父親が素直に非を認めたことに驚き、何度か瞬きをした。
「どうして今、そんなことを言えるんだ」
「ある子供が教えてくれた。違いがを決めるのではなく、そのどうするかが切だと」
「翔太が言ったのか」
「ああ。8歳だが、俺より賢い」
輝はしばらく父親を見つめた、さく息を吐いた。
「僕も会っていいか」
その夜、輝は孝志と共にレストランへ向かった。翔太は初めて見るに驚いたものの、すぐにちがってを差しした。
「初めまして。輝さんですね。
お父さんが、あなたのことをよく話しています」
輝はさなを握り、汚れたとは対照に、翔太のがきれいに洗われていることに気づいた。