みかん小説
本棚

"残り物少年の奇跡" 第2話

残り物をしだけください。その代わり、僕があなたにもう度歩く方法を教えます」

孝志の顔からわずかに表が消えた。次にいた、声にはりが混じっていた。

「よく聞け、坊主。俺は随だ。の神経はんでいる。世界の名医が治療法はないと断言した。奇跡も、希望もない」

孝志は幣をテーブルへ置き、翔太を追い払うように指先をかした。

「だからを受け取って、馬鹿なことを言うのはやめろ」

翔太は子の元を見つめた、静かに首を横に振った。

んでいません。眠っているだけです。あなたもんでいません。僕には、まだあなたの命があるのが分かります」

が警備員を呼ぶべきか尋ねたが、孝志はを見つめたまま答えなかった。翔太の揺るぎない目には、孝志が理解できない何かが宿っていた。

「田、この子に事をしてやれ」

が驚いて目を見くと、孝志はサーモンの皿を脇へ押した。

「ただし、今夜は厨べさせろ」

翔太は初めて、齢相応のるい笑顔を見せた。

「ありがとうございます。も同じに来てもいいですか」

「何のためにだ」

「差し支えなければ、あなたと緒に夕べたいです」

孝志は苦い笑いを漏らした。

「俺と夕だと。俺が誰かっているのか」

「佐藤さんです。

広告

そして、とてもしんでいるです」

飾り気のない答えに、孝志の肩から力が抜けた。誰からも見抜かれないよう隠してきたものを、8歳の言で言い当てられてしまった。

「分かった。の夜8だ」

翔太はげ、田に連れられて厨へ向かった。孝志はそのさな背が見えなくなったも、めたサーモンをにしたまま、の言葉を考え続けていた。

は眠っているだけだ。

その言葉を信じる理由など、どこにもなかった。それでも孝志の胸の奥では、3かなかった何かが、かすかに揺れていた。

、孝志は自分でも理由が分からないまま、午8よりくレストランへ到着していた。が本当に現れるのか確かめたいだけだと自分に言い聞かせたが、何度も入線を向ける姿は、誰かを待っているそのものだった。

専属護師の鈴陽子は、朝からその約束に反対していた。50歳の陽子は随の患者をく担当しており、孝志の健康と活を管理することを自分の責任だと考えていた。

「佐藤様、で暮らす子供と関わるのは賢ではありません。染症を持っている能性もありますし、あなたを利用しようとしているかもしれません」

孝志はメニューを閉じ、入へ目を向けたまま答えた。

「ただ夕べるだけだ。

広告

あの子はべて帰る。それだけだ」

「富裕層が、寄りのない未成者に同して詐欺に遭う例は珍しくありません。最初はさな頼み事から始まるものです」

孝志は返事をしなかった。の奥では、陽子の指摘が正しいのではないかという疑いも消えていなかった。

8になると、翔太は約束通り姿を見せた。と同じを着ていたが、顔とはきれいに洗われ、濡れた髪を指でえた跡があった。

支配満を隠しきれない顔をしながらも、翔太を孝志のテーブルまで案内した。翔太は子のち止まり、丁寧にげた。

「こんばんは、佐藤さん」

「座れ。何をべたい」

翔太は渡されたメニューをいたが、難しい漢字を最まで読むことができなかった。困ったようにページを見つめた、孝志へ返した。

「佐藤さんがおいしいとうものなら、何でもいいです」

孝志はローストチキンと温かいスープを注文した。料理を待つ、向かいに座るの顔を観察した。

「翔太。どこで寝ているんだ」

「ここから3ブロック先にシェルターがあります。空いていればそこです。いっぱいのは、公園か建物の軒で寝ます」

「怖くないのか」

翔太はすぐに答えず、質問のを考えるように首を傾げた。

「何を怖がるんですか」

「悪いや寒さだ。それに、1でいることだ」

「悪いは確かにいます。でも、良いもいます。僕は本当のでは1じゃありません」

の夜と同じ言葉に、孝志は眉を寄せた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: