"51%の警備員" 第10話
のへ戻った正雄。
夜勤を続けるの社員。
病気の族を抱えながら働く。
何度昇試験に落ちても、会社の備品を切に扱った斎藤。
松蔵の目には、彼らの姿がはっきりと浮かんでいた。
「創業者の姓を持っているだけで、会社の主になれるわけではない」
「黙れ!」
貴彦は松蔵へ歩み寄ろうとした。
だが、そのに会議の扉がいた。
本社の警備責任者と、顧問弁護士が入ってきた。
昨まで松蔵の同僚だった警備責任者は、複雑な表で貴彦のにった。
「森さん。取締役会の決議により、役員用カードと会社支の端末を返却してください」
「俺を誰だとっている!」
「本付で取締役を解任された方です」
その言葉をにした警備責任者の声は震えていた。
それでも彼は逃げなかった。
貴彦は胸元から役員用カードを取りしたが、渡そうとはしなかった。
「父が戻れば、こんな決議は全部ひっくり返る」
「現会の保株式は18%です」
弁護士が答えた。
「仮に会が職務へ復帰しても、51%の議決権を覆すことはできません」
「祖父がそんな遺言を残すはずがない!」
「残した」
松蔵は、夫の署名が入った遺言の写しを貴彦のへ置いた。
そのには、夫が自で残したいが添えられていた。
――会社をよりに置くな。
――を数字として見る者に、成を任せてはならない。
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――松蔵が扉をけたは、その言葉に従え。
貴彦はを読んだまま、かなかった。
祖父が自分を恐れていた。
その事実を、初めて突きつけられたのだった。
「昨、あなたは私に言いました」
松蔵は胸元の名札へ触れた。
「今すぐてけ、と」
貴彦がゆっくりと顔をげた。
松蔵は、昨と同じ言葉を返さなかった。
鳴りもしなかった。
「荷物を理するは差しげます」
その丁寧な言葉が、貴彦には何よりもかった。
「ただし、会社の資料には切触れないでください。役員には第者委員会の担当者が同します」
「俺を犯罪者扱いするのか」
「犯罪かどうかを決めるのは、私ではない」
松蔵は答えた。
「おがしてきたことと、これから調べられる証拠が決める」
警備責任者が再びを差しした。
「カードをお願いします」
貴彦は周囲を見回した。
昨まで自分の顔をうかがっていた取締役たちは、誰ひとり目をわせなかった。秘も、監査も、すでに貴彦から距を取っていた。
やがて貴彦の指から、役員用カードが落ちた。
乾いた音をてて、に転がる。
昨、松蔵の名札が落ちた所と同じように。
貴彦はそれを拾おうとした。
しかし警備責任者が先に腰をかがめ、カードを拾いげた。
「こちらでお預かりします」
貴彦は、社員たちが見守る、会議から連れされた。
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エレベーターが1階に着くと、ロビーにはくの社員が集まっていた。
誰かがらせたわけではない。
臨取締役会で何かが起きているという噂が、社内に広がっていたのだ。
貴彦は、昨松蔵へコーヒーをかけた所を通った。
社員たちはを空けた。
だが、をげる者はいなかった。
黒いマイバッハが待つ駐へ向かおうとした、警備責任者が告げた。
「会社名義のですので、ご利用いただけません」
貴彦はち止まった。
級の鍵も、運転も、役職も、会社が与えていたものだった。
それらを失った彼のには、自分の鞄だけが残った。
自ドアがく。
貴彦は、誰にも見送られず、本社ビルのへていった。
貴彦がったも、松蔵はすぐに会社を掌握しようとはしなかった。
最初に命じたのは、全取引データの保全だった。
「誰かひとりの言葉で処分を決めてはならん」
松蔵は第者委員会の委員たちへ言った。
「貴彦にかったというだけで社員を切るな。命令に従わなければ族を養えなかったもいる。自分からを盗んだ者と、逆らえずに類へ判を押した者は分けて調べてくれ」
それは甘さではなかった。
松蔵は、責任を曖昧にすることを許さなかった。同に、いのへすべての罪を押しつけることも認めなかった。
監査は、自ら松蔵のへてきた。
顔は青ざめ、には辞表を持っていた。
「匿名のを専務へ渡したのは私です」
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