"51%の警備員" 第5話
類、松蔵は成精と何の関係もないになった。
夫は持ち分を必ず買い戻すと言った。
副社として再び迎えるとも、何度も約束した。
だが、そのたびに松蔵は首を振った。
「もういいさ。俺は副社の名刺が、昔から照れくさかったんだ」
「松蔵……」
「その代わり、ひとつ頼みがある」
松蔵はの窓から、働く社員たちを見た。
「俺を、この会社ののに置いてくれ」
「の?」
「俺ので建てた会社だ。老いてぬまで、この目で見ていたい」
こうして松蔵は、警備を着た。
それが30のことだった。
歳は流れ、成精は成グループとなり、夫は会と呼ばれるようになった。
夫の息子が経営に入り、その息子として貴彦がまれた。
夫は毎週曜の夕方になると、必ず警備へち寄った。
財界でらぬ者のいない会と、古びた制を着た警備員。2は狭い警備でコップのインスタントコーヒーをんだ。
社員たちは、会の気さくな性格によるものだとっていた。
ある曜、夫がコップを指先で回しながら尋ねた。
「松蔵。お、本当に悔していないのか?」
「何をだ?」
「あの、持ち分を放さなければ、今頃は者番付におの名が載っていたはずだ」
松蔵は警備の窓から、退勤していく社員たちを見た。
「夫、俺は毎朝、4000がこのから入ってくる姿を見ている」
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「……」
「その4000のろには、1万を超える族がいる。そのたちの飯の種が切れなかった。それが、俺の持ち分がんだ利益だ」
松蔵はコップを持ちげた。
「世のに、そんなきな配当があるか?」
夫は何も答えなかった。
ただ背を向け、目をぬぐった。
その夜から、夫は初めて、自分の遺言状について考え始めた。
12の、森夫は病に伏した。
肺がんの末期だった。
余命を告げられてから、夫は族や役員を病からがらせ、松蔵だけを呼んだ。
ベッドの横には、若い弁護士がっていた。
「松蔵、紹介する。弁護士だ」
「弁護士?」
「これから、おの使いをするだ」
夫は痩せ細ったで、類を押しした。
信託契約。
そして、遺言公正証。
松蔵は老鏡をかけ直した。数読んだところで、類を持つが震え始めた。
森夫が所する成グループの持ち分51%を、信託へ委託する。
その議決権と収益権のすべてを指示できる受益者として記されていた名は、たった4文字だった。
――川松蔵。
「夫、これは受け取れない」
「これは、おにやるじゃない」
「だが、51%だぞ」
「俺の息子は、商売として悪い男じゃない」
夫は苦しそうに息を吸った。
「だが、器はそこまでだ。そして孫の貴彦は……松蔵、俺はあの子が怖い」
「怖い?」
「を、として見ていない。役につか、たないか。
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それだけで見ている」
夫は松蔵のを握った。
骨ばかりになっただったが、その力はかった。
「今までどおり、ので見守っていてくれ。俺の子供たちが会社を正しく引っ張っていくなら、この類は引きしからさなくていい」
「夫……」
「だが、もしあいつらが会社を私物だとい、を忘れたら」
夫の目は、40の神田のでを語っていた青の目に戻っていた。
「そのは、おが扉をけて入っていってくれ」
「……」
「成は、俺とおがラーメンをすすりながら作った会社だ。本当の主が誰なのか、おが見せてやってくれ」
3、森夫は息を引き取った。
遺言状が公されると、財界は騒然となった。
成グループの持ち分51%が、正体の信託へ移されていたからだ。
夫の息子である現会は、信託の無効を求めて訴訟を起こした。しかし、遺言公正証と信託契約は法に固く守られ、3に敗訴した。
それから12、信託は沈黙した。
配当は1円も引きされず、議決権も使されない。経営に問題がない限り、を保ち続けた。
財界は、そのを「幽霊株主」と呼んだ。
その幽霊株主が、毎朝5過ぎのに乗り、警備を着て正にっているとは、誰も像しなかった。
夫を失った翌、成グループの仙台で災が起きた。
産班の主任として勤務していた正雄は、逃げ遅れた入社員たちを助けした。しかし最に自分が戻った、崩れ落ちた資材の敷きになった。