"51%の警備員" 第2話
朝く勤してきた経理部のが声をかけると、松蔵はその顔を見ただけで眉を寄せた。
「君、昨も残業だったんだろう。朝飯はべたのか?」
「いえ、ちょっとがなくて」
「やっぱりな。これを持っていきなさい」
松蔵は警備の引きしからチョコパイを取りし、のに握らせた。
「お母さんの具はどうだ?」
は驚いたように目を見いた。
松蔵は社員たちの顔と名を、ほとんどすべて覚えていた。が病気の母親を病しながら働いていることも、産管理部の入社員が方からてきてい宿泊施設で暮らしていることもっていた。
警備には、インスタントコーヒーと菓子が常に用されていた。
顔の悪い社員を見つけると、松蔵は何も聞かずにそれを差しした。
壁際には、30分のカレンダーが積みねられていた。古いものはが褪せ、数字も読みづらくなっていたが、松蔵は1枚も捨てなかった。
「312、産2課班の女、結婚」
「74、総務部・田、法事」
細かな字で、社員たちの冠婚葬祭がき込まれていた。
松蔵はのから5000円、には1万円を包んだ。自分の費を切り詰めてでも、祝い事や弔い事にぶらでくことはなかった。
「、空じゃいられんもんだ」
それが松蔵の癖だった。
曜になると、恵美と所の銭湯へき、帰りに商でおでんを1皿買ってべた。
広告
「おじいちゃんの願いって何?」
恵美に聞かれると、松蔵はいつも同じように答えた。
「恵美が嫁にくまで、じいちゃんが自分の2本ので歩いていられることだ」
「じゃあ、お持ちにしてくださいって神様にお願いしないと」
そのたびに松蔵は、困ったように笑った。
13歳の恵美はらなかった。
目ので根を半分に切って分けている祖父が、その気になれば、商の建物をすべて買っても余るほどの資産をかせるだということを。
社員たちは松蔵を慕っていた。
だが、彼らにとって松蔵は、どこまでも気てのいい警備員だった。それ以でも、それ以でもない。
松蔵が朝の巡回で械の音にを澄ませる理由も、設備の話になると目つきが変わる理由も、誰も気に留めなかった。
それは、松蔵自が望んでいたことでもあった。
自分は忘れられたでなければならない。
なくとも、会社が正しい方向へんでいるは。
松蔵の1ので、最もくじられるがあった。
駐から、黒いマイバッハががってくるだった。
森貴彦、37歳。
現会の息子であり、成グループの企画統括専務。アメリカ留学から帰国した経歴を持ち、首にはいつも級腕計がっていた。
貴彦は、この会社で働くを2種類に分けていた。
広告
自分に必なと、しないも同然の。
警備員や清掃員は、当然者だった。
砂りのがった曜の朝だった。
松蔵が入で傘用のビニール袋を渡し、濡れたを拭いていると、ロビーに入ってきた貴彦が理のでを滑らせた。
「何だよ、これ!」
「お怪はありませんか。今、気を拭き取ろうとしていたところでして」
「今から拭くってことは、まだ拭いてなかったってことだろう」
貴彦は濡れた靴先を見ろし、舌打ちした。
「朝から何やってるんだ。を取って体がかないなら、で休んでろよ」
「申し訳ございません」
「ロビーに滴が1つでも残っていたら、そので終わりだ。分かったか?」
松蔵は黙ってをげた。
「申し訳ございません」
その言葉は、いつのにか松蔵の癖になっていた。
またある、駐で、貴彦は自分ののくに止められていた古い自転を見つけた。
すぐに警備のインターホンが鳴った。
「この自転は誰のだ?」
「社員のものです。すぐに移させます」
「俺のに傷でもついたら、警備が弁償するのか?」
「申し訳ございません」
「おたちの仕事は何なんだ? のにって、何もせずに料をもらうことか?」
松蔵は反論しなかった。
貴彦が役員たちの予定を案内している松蔵を見つけたには、さらに骨な言葉を浴びせた。
「この爺さん、どうして役員の線をそんなにってるんだ?」