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"霧葬の山岳会" 第9話

「やっと、見つけてくれたんですか」

子の内から採取された細胞は、遺伝子鑑定のため県内の学法医学教へ運ばれた。結果がるまで、およそ1週かかった。

20146末、鑑定が笠原の机へ届けられた。遺骨の遺伝子型は、子と母子関係にあると判定された。

16に黒岩岳で消えた真美。そののもので違いなかった。

笠原は鑑定を机へ置き、く息を吐いた。だが報告には、もう1つな所見が記されていた。

蓋骨部に、らかな打撃痕が2か所認められた。いずれも円形にく、属製の器具によるい衝撃でじた能性がいとされていた。

の岩への衝突では説がつかない損傷だった。笠原はその文を何度も読み返し、子の背からゆっくり体を起こした。

「事故じゃない」

い声が、誰もいない部に落ちた。

そののうちに、笠原は野県警本部へ報告した。検討の結果、16の遭難事故は、殺または傷害致体遺棄の疑いがある事件として再捜査されることになった。

71良警察署3階の会議に特別捜査本部が設置された。現り、事件を忘れずにいた笠原が、捜査の指揮を執ることになった。

発令を受けた夕方、笠原は1で古い類棚のった。茶い封筒の束を両で取りし、机へ運んだ。

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1通、2通と数えると、全部で15通あった。封筒の表きはねるごとにしずつ震えていたが、すべて同じ丁寧な字でかれていた。

野県警察本部御 子」

笠原は袋をはめ、最も古い19991012の封筒からいた。便箋には、娘がいなくなって1が経った母親の言葉が並んでいた。

読みめるうち、夕が署の窓から差し込み、机のの封筒を赤く染めた。笠原は誰にも聞こえない声で呟いた。

「お母さん。やっと、こちらから返事ができそうです」

そのの夕方、事件再捜査のニュースがラジオで流れた。の片隅にある井では、45歳になった井が湯みを持つを止めていた。

「16、黒岩岳でになった女性の遺骨が発見されました。部に審な損傷があることから、野県警は事件の能性を野に――」

みのの茶が揺れた。井の指先は震え、頬からが消えていった。

特別捜査本部が設置された夜、笠原は16の記録を机のへ並べ直した。表にはきで「199810 黒岩岳遭難事件」と記されていた。

には還した会員6の供述調、捜索報告、現図面、発見された赤いキャップとザックの肩ひもの写真が残されていた。若い頃の自分の名も、捜索隊員の1として類の隅にあった。

笠原は夜遅くまで、6の供述を読み比べた。

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2ほど経った頃、子へくもたれ、眉に指を当てた。

「おかしい」

6は別々のに、別々の部で事を聞かれていた。それにもかかわらず、記録された言葉が自然なほど似ていた。

「ガスが急に濃くなり、界を失った」

「すぐに先へ声をかけて隊列を止めた」

「引き返して探したが、本からの応答はなかった」

さらに全員が、界は「10m程度」だったと証言していた。っていた所も、も、見えていた方向も異なるはずなのに、数字まで致していた。

岳遭難では、目撃者ごとに細かない違いがじるのが普通だった。ならなおさら、誰がどこにいたのか、どれほど見えたのかについて証言は揺れる。

だが6の記録には、その揺れがほとんどなかった。まるで事に同じ文章を覚えたかのようだった。

笠原は当の会員名簿を広げた。井哲夫、沢田孝志、藤本信也、酒井悟、井、久保健太郎。

藤本はすでにくなっていた。沢田は京、久保は関へ移り、残る3周辺にんでいた。

笠原はまず、元会井を訪ねた。退職井は、田畑に囲まれた古いで妻と暮らしていた。

庭ではナスやキュウリ、ピーマンが差しを受けて育っていた。井は麦わら子をかぶり、トマトの脇芽を慣れたつきで摘んでいた。

「笠原さんとおっしゃいましたか。

の捜索隊にもいらしたとか」

井は穏やかな笑みを浮かべ、笠原を縁側へ招いた。

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