"霧葬の山岳会" 第4話
が2を覆っていた。れた所から仲たちの声が聞こえたような気もしたが、に流されてすぐに消えた。
井はそのに座り込み、両でを抱えた。何をすればよいのか分からないまま、目のに横たわる真美を見つめ続けた。
やがて彼は、すぐくの岩と岩のに、が1入れるほどの暗い隙があることに気づいた。ちがると何度も周囲を見回し、真美の体を抱えるようにして、その奥へ押し込んだ。
真美のザックから寝袋を取りし、体のへかぶせた。次にナイフをしてザックの肩ひもの部を切り、崖へ投げ落とした。
最に赤いキャップを拾い、滑落したように見せかけるため、崖際の岩へ引っかけた。ほんの10分か20分のに、井は真美が事故で消えたように見える形を作りげた。
作業を終えた井は、震えるでザイルのカラビナをした。のへ垂らすと、息をきく吸い込み、仲たちがいる方向へった。
「止まってください!」
井の叫び声が、い稜線に響いた。
「真美さんが……真美さんが見えません!」
井たちはきを止めた。方から聞こえた切迫した声に、井はすぐにザイルを固定し、のを引き返した。
「井君、どこで気づいた!」
井が声を荒らげると、井は青ざめた顔で、れたザイルの先を差しした。
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「ガスが急に濃くなって、ほんの瞬目をしたんです。気づいたには、もう応えがなくて……」
井、沢田、藤本、酒井、久保は、声で真美の名を呼びながら周囲を探した。岩の隙やガレのくぼみ、崖の縁からを乗りして確認したが、応答はなかった。
井は仲たちのろにち、誰よりもきな声で真美の名を呼んだ。その声をすたび、岩の隙へ隠した彼女の姿がに浮かんだ。
午8、は黒岩ヒュッテまで戻り、無線で麓の駐所へ通報した。そのの午には野県警岳救助隊、元消防団、警察犬、岳会の志が集められ、規模な捜索が始まった。
没、岩稜帯の約150mにあるガレで、ちぎれたザックの肩ひもが見つかった。さらにくの岩には、内側に「」と丁寧にかれた赤いキャップが引っかかっていた。
捜索隊員たちは、真美が濃のでを滑らせ、い崖へ落ちた能性がいと考えた。その崖は黒岩岳でも特に険しく、度滑落すれば還は難しい所だった。
捜索は1週続いた。役所の同僚や町内会のたちも休暇を取り、次々とへ駆けつけた。
臓を患っていた父の元蔵はへ入ることができず、毎登までをらせた。捜索隊がりてくるたび、子を脱ぎ、々とをげた。
「娘を、どうかお願いします」
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その声はににかすれていった。誰かが元蔵の肩を支えようとしても、彼は黙って首を横に振った。
母の子は、麓にある古い旅館ので待ち続けた。夜になると真美の写真を胸に抱き、布団のへ顔を伏せて声を殺して泣いた。
「寒いでしょう。真美、寒いでしょう」
だが真美は見つからなかった。1018、野県警は捜索の打ち切りを発表し、事故は岩稜帯での滑落による遺体未発見の遭難として処理された。
数、役所と青嶺岳会の同で、ささやかな告別の会がかれた。公民館のには真美の写真が置かれ、そのには彼女が好きだった犀の枝が1本、そっと添えられていた。
婚約者の青は、写真を両腕で抱えたままち尽くしていた。最まで言も発することができず、参列者が帰り始めてもそのをこうとしなかった。
井は会員を代表し、震える声で弔辞を読みげた。
「真美さんは、私たちの会の宝でした。のでどこからをしたのか、私たちはこれから悔やみ続けるでしょう」
井はを持つを震わせ、くをげた。
「本当に、本当に申し訳ありませんでした」
並んでいた会員6も、同にをげた。ただ井だけは、最まで顔をげることができなかった。
真美が消えたも、良の季節は変わり続けた。
が終わり、にが積もり、町は何事もなかったかのように末を迎えた。
だがのだけは、19981012の朝で止まったままだった。