"霧葬の山岳会" 第1話
199810、野県部のあいにある良は、稲刈りを終えたばかりの静かな季節を迎えていた。町のを通る県沿いには、米や文具、写真館、昔ながらの堂が並び、夕方になると古い軒先にぽつぽつとかりがともった。
町の側には畑が緩やかに広がり、その向こうにはアルプスの並みが青く連なっていた。の朝には川からちったが町全体を包み、商のシャッターがく頃になって、ようやく柔らかな差しがへ差し込んだ。
役所裏にある古い公民館の2階では、に2度、さな岳会の例会がかれていた。青嶺岳会と名乗るその会に所属していたのは、わずか7だった。
会を務める井哲夫は54歳で、内の私学に勤める教師だった。鏡の奥に穏やかな目を持ち、学代から30以へ通い続けてきた、良でも指折りの登経験者だった。
副会の沢田孝志は42歳で、内の信用庫に勤めていた。実直で几帳面な性格から井の信頼もく、にわたって会の運営を支えていた。
58歳の藤本信也は、役所を期退職してから歩きをきがいにしていた。36歳の酒井悟は元の気事で働く2児の父で、休になるたび妻にをげてへかけていた。
井周は29歳だった。
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内のさな務の跡取りで、無ではあったが先が器用な独の青だった。
最の久保健太郎は24歳で、県内の国学学院に所属し、質学を学んでいた。入会してまだ1にも満たなかったが、礼儀正しく、者の話を素直に聞く青だった。
そして、そのでただ1の女性会員が、真美だった。28歳の真美は良役所の民課に勤務し、るく芯のい女性として職でも親しまれていた。
真美が青嶺岳会に入ったのは、4の24歳のだった。代に岳部へ所属していた経験があり、元へ戻った、もう度を歩きたいとっていたところ、役所の先輩から会のを教えられた。
男ばかりの会で若い女性が続くだろうかと配する会員もいたが、そのはすぐに消えた。真美は寒いでも険しい岩でも音を吐かず、い荷物を背負いながら、へ着けば誰よりも先に事の準備を始めるような女性だった。
疲れている者がいれば、何も言わずに筒を差しした。歩みの遅い久保が列かられそうになれば、ち止まって振り返り、笑顔で声をかけた。
「急がなくても丈夫。は逃げないから」
そんな真美の言葉に、久保だけでなくの会員たちも何度となく救われていた。4が経つ頃には、彼女は青嶺岳会に欠かせないになっていた。
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私活では、内の県で英語を教えている同いの婚約者がいた。翌4には、内のさな式でささやかな結婚式を挙げる予定だった。
母の子は、娘がへかける支度をするたび、配そうにその背を見つめていた。父の元蔵もにはさなかったが、聞で岳事故の記事を見るたび、決まって眉をひそめた。
「結婚したら、はもうやめなさい」
ある晩、子が冗談半分に言うと、真美は湯みを両で包みながら笑った。
「お母さん、結婚してもはやめないわよ。あのも分かってくれているから」
その言葉を聞いた元蔵は、黙って聞をめくった。だが元には、わずかな笑みが浮かんでいた。
10のは、真美にとって独で過ごす最のになるはずだった。目はアルプス部に位置する黒岩岳で、標は2780m、1泊2の本格な縦だった。
1011の曜、午5。まだ夜がけきらないうちに、7は良役所裏の駐へ集まった。
井のワゴンと酒井のワンボックスカーに分かれて乗り込み、翌の曜には全員が休暇を取っていた。頂を越え、夕方までに町へ戻る予定だった。
真美が赤いキャップをかぶり、ザックの肩ひもを締め直していると、藤本がい息を吐きながらづいてきた。
「真美ちゃん、寒くないか。
はかなりえるぞ」
真美は着の襟元を指でえ、笑って答えた。
「丈夫です。