"10年目の地下室" 第3話
作業員がビルの所者に尋ねると、老朽化したを支えるための補壁だと説された。
だが施記録はしなかった。
気になった作業員の1が元聞へ報を寄せた。
記事は域欄の片隅にさく掲載されたが、田の方事件と結びつけられることはなかった。
族がその記事をったには、修理事は終わり、の入は再び施錠されていた。
「どうして、誰も調べてくれないの」
妻は警察官に詰め寄った。
「コンクリートで塞がれた所があるんですよ。夫はにりると言ったんです」
「壁があるというだけでは、令状は取れません」
「夫が消えた所なんです」
「ご配は理解します。しかし事件性を示す証拠がありません」
妻は何も言えなくなった。
証拠を探すために調べてほしいのに、証拠がないから調べられない。
その矛盾ので、族のだけが止まり続けた。
2008、遺族は田の会社に対し、忘会での来事に関する資料の示を求めた。
会社側は、宴会終は社員個のであり、会社には責任がないと主張した。
調査の過程で、当の経費記録の部が欠落していることが分かった。
1次会の居酒代は法カードで支払われていた。
しかし、2次会のカラオケ料は会社の帳簿に残っていなかった。
遺族は民事訴訟を起こしたが、田が会社の業務に失踪したと証できず、請求は退けられた。
広告
忘会に同席していた課は、質問を受けるたびに同じ説を繰り返した。
田とは仕事の話をしただけだ。
自分は午1に帰った。
そののことは何もらない。
2012、その課は交通事故でした。
田が消えた夜の核をっているかもしれない物の1が、何も語らないままこの世をった。
2013、妻は政府の相談窓へ再調査を求める文を提した。
初捜査の備と、会社による報隠蔽の能性を指摘した。
返ってきたのは、「関係関の記録を確認する」というい回答だけだった。
実際に捜査がくことはなかった。
そして2014、老朽化した雑居ビルが再発区域に指定された。
解体計画が発表されると、田の族は最の望みをかけて訴えた。
「建物を壊すに、を調べてください」
それでも正式な捜索はわれなかった。
113。
解体事の初を迎えた。
のバケットがの角を掘り返した瞬、コンクリートの塊のから、錆びた属フレームが現れた。
作業員が作業でを取り除くと、く乾いたものが転がり落ちた。
最初は物の骨だとった。
だが、その先端にはの指と同じ形をした骨が並んでいた。
作業員は具を落とし、ずさった。
10閉ざされていたが、ようやくをいた。
警察が到着した、の奥には約30平方メートルの密閉空がしていた。
広告
空気は湿気とカビの臭いに満ち、壁には黒い染みが広がっていた。には錆びた属片、マイクスタンド、切断されたスピーカーケーブルが散乱していた。
奥の隅に、骨が集していた。
蓋骨。
の骨。
とわれる繊維。
鑑識官たちは、誰も言葉を発しなかった。
骨のくには、割れたプラスチック製の名札の部が落ちていた。
汚れを慎に拭き取ると、そこに刻まれた文字が現れた。
「邦テック」
田が勤めていた会社名だった。
壁に薬品を噴すると、部が青く発した。
血液に反応するルミノール反応だった。
反応は入とは反対側の壁面に集し、から約80センチから120センチのさに点していた。誰かがそこで激しく血した能性があった。
警察は田の族に連絡した。
妻は話を受けると、い何も言えなかった。
「から、の骨が見つかりました」
警察官は慎に言葉を選んだ。
「田さんの能性があります。DNA鑑定にご協力いただけますか」
妻は夫が使っていた髭剃りと、古い歯ブラシを提した。
結果がるまでの2週、族は眠れない夜を過ごした。
きていると信じ続けた10。
どこかで記憶を失って暮らしているのではないか。
いつか玄関をけて、「配をかけた」と帰ってくるのではないか。
そのわずかな希望が、鑑定結果によって消えるかもしれなかった。
広告
おすすめ作品
-
完結第8話
床下に消えた29年
2023年、岐阜県の山中にある古民家で深夜に火災が発生した。 焼け跡から見つかったのは、この家で1人暮らしをしていた高齢男性の遺体。古い木造家屋の痛ましい火事として処理されるはずだった。 しかし、消防士が焼け落ちた床を踏み抜いた時、事件はまったく別の顔を見せる。 床下に広がっていたのは、誰も存在を知らなかった暗い空間。そこには、木の板に縛りつけられたまま長い年月を過ごした、女性の乾燥遺体が横たわっていた。 遺体のそばに残されていた古い医療カード、切り裂かれた写真、そして日記に記された不気味な一文。 「もう彼女は逃げることができない」 29年前、自ら姿を消したと思われていた女性は、本当に新しい人生を選んだのか。 それとも、誰にも知られない山中の家で、ずっと助けを待ち続けていたのか。 すべてを灰に変えた火が、長年閉ざされていた床下の秘密を暴き出す。ミステリー|行方不明1.2萬字5 22 -
完結第8話
天井裏の元彼
2012年、福岡市の古いワンルームで一人暮らしを始めた小林里奈。 束縛の激しかった元恋人・山田誠と別れ、ようやく自由な生活を取り戻したはずだった。ところがその直後、誠は突然行方不明になる。 数か月後、里奈の部屋で奇妙な出来事が起こり始めた。 冷蔵庫の食べ物が少しずつ消え、置いたはずの物が別の場所へ移動する。夜になると、誰もいないはずの天井から、何かが這うような音が聞こえてくる。 警察も管理会社も、友人も、誰も里奈の言葉を信じなかった。 「疲れているだけ」 「気にしすぎだ」 そう言われ続けた里奈は、自分の記憶さえ疑い始める。 やがて彼女は、その部屋を逃げるように去った。 しかし2年後、寝室の天井裏から発見されたものが、里奈の恐怖が妄想ではなかったことを証明する。 あの夜、彼女が見上げていた天井の向こうには、確かに“誰か”がいた――。ミステリー|真相|行方不明1.1萬字5 11 -
完結第11話
消えた父子の23枚
2017年3月、奥多摩の山中で、元消防士の伊藤大輝と生後8か月の赤ん坊が跡形もなく姿を消した。 父子は遭難したのか。それとも、誰かから逃げていたのか。遺体も手がかりも見つからないまま、事件は6年の時を経て忘れられようとしていた。 しかし2023年、地質調査に訪れた大学生2人が、岩の隙間から古いデジタルカメラを発見する。そこに残されていたのは、赤ん坊を抱く父親の写真と、背後から近づく不審な人影だった。 さらに調査を進めるうち、2人は「伊藤ハルト」という名前を消され、「鈴木湊」として生きる青年にたどり着く。 彼は本当に、6年前に消えた赤ん坊なのか。 そして大輝が命をかけて守ろうとした“真実”とは何だったのか。 1台のカメラが、封じられた過去と、血よりも深い父の愛を静かに暴き出していく。ミステリー|真相1.6萬字5 749 -
完結第11話
湯殿床下の女将日記
1999年、銀山温泉の老舗旅館「白糸屋」で、女将・鍛原沢子が忽然と姿を消した。 部屋は整えられ、財布も草履も残されたまま。争った跡もなく、まるで朝霧に溶けたように、彼女だけが消えていた。 夫を亡くしてから10年、たった1人で旅館を守ってきた沢子。だが失踪の数日前、東京から来た見知らぬ男と長く話し込み、その後、彼女の顔は真っ青になっていたという。 捜査は進まず、白糸屋はやがて閉ざされた。 それから6年後、取り壊しが決まった旅館の湯殿の床下から、油紙に包まれた一冊の帳面と銀色の帯留めが見つかる。 そこに残されていたのは、沢子が誰にも言えなかった苦しみと、息子の名前。 そして、40年以上湯殿を守ってきた三助の老人だけが知る、霧の朝の本当の出来事だった――。ミステリー|真相1.6萬字5 468 -
完結第10話
10年目のハザード
1999年10月、夜明け前の阪和自動車道に、1台のタクシーがハザードランプを点けたまま残されていた。 運転席は無人。車内に争った跡はなく、鍵も残されたまま。所有者は、大阪・堺で個人タクシーを営む藤村達夫だった。 警察が自宅を訪ねると、妻・安子と娘・真奈美の姿も消えていた。台所には冷めた味噌汁、まな板には切りかけのネギ。家族3人は、夕食の途中で突然この世から切り取られたように姿を消していた。 達夫が最後に乗せた客は誰だったのか。 そして、なぜ一家は財布も通帳も残したまま消えたのか。 10年後、取り壊しが決まった団地の室外機の裏から、1本の古いカセットテープが見つかる。 そこに残されていたのは、達夫が命がけで吹き込んだ、震える声だった――。ミステリー|行方不明1.5萬字5 1126 -
完結第15話
土俵下の12年
昭和47年、東京・両国の相撲部屋から、期待の若手力士・林岳司が突然姿を消した。 能登の小さな漁村から上京し、家族の期待を背負って土俵に立っていた21歳の青年。部屋には荷物も手紙も残されたままで、まるで少し外へ出ただけのように、彼の生活だけがそこに残っていた。 両親は息子がどこかで生きていると信じ、12年間待ち続けた。 しかし昭和59年、故郷の古い土俵を解体した時、土の下から思いがけないものが見つかる。 東京で消えたはずの岳司は、なぜ故郷の土俵の下にいたのか。 稽古場で何が起き、誰が12年間も真実を隠し続けたのか。 若き力士の失踪は、故郷の土の中から静かに動き出す――。ミステリー|行方不明2.2萬字5 1130