"車椅子妻の断罪" 第6話
々はくい茂り、携帯話の波を示す表示が1本ずつ消えていく。
健は言も話さなかった。
内にはエンジン音と、タイヤが砂利を踏む音だけが響いていた。
やがてSUVは、の通った形跡さえほとんどないでした。
健は子を広げ、部座席の加奈を乱暴に引きずりした。
病院で見せていた優しいつきは消えていた。
加奈を子へ座らせると、坂の始まる所まで押していく。真の太陽が患者のから容赦なく照りつけた。
その、健はスマートフォンを取りした。
加奈がすぐ目のにいるにもかかわらず、平然と話をかける。
相は玲奈だった。
健は妻が何も理解できないと信じ、スピーカーに切り替えた。
「健。あの女、へ置いてきた?」
玲奈の笑い声が、の空気へ響いた。
「もうすぐ、商業ビルも保険も全部私たちのものになるわね」
健は加奈を瞥した。
「ああ。今、子ごと置いてきたところだ」
「本当に丈夫なの?」
「瞬きしかできない体だ。の景でもう分見せてやるよ」
健は笑った。
「これで本当に終わりだ。今から戻るから、レストランを予約しておけ」
加奈は目を半分閉じたまま、すべてを聞いていた。
ブランケットののスマートフォンと、患者の内側の録音。その2つが、同じ会話を同に記録していた。
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通話を終えた健は、加奈の顔を最に見ろした。
罪悪も迷いもない。
背負っていた荷物を、ようやく捨てられたという堵だけが浮かんでいた。
「加奈。ここのの空気は気持ちいいだろう」
健は子のブレーキへを伸ばした。
「差しもいから、自然を眺めながら休んでいなよ」
ブレーキをかけるふりをしながら、わずかに引っかけるだけにした。
そして背を向けた。
度も振り返らず、軽い取りでSUVへ戻っていく。
ドアが閉まり、エンジンがかかった。
がをっていく音がしずつざかる。
完全に聞こえなくなるまで、加奈はかなかった。
に静寂が戻った。
聞こえるのは蝉の声と、の葉が擦れる音だけだった。
加奈は狭いの端に置かれていた。子のすぐ先から、急な坂が始まっている。
汗が患者を濡らし、布が肌へ張り付いていた。のは乾き、は滴もない。
その、斜面をってきたが子の側面を押した。
いだった。
だが軽く引っかけられただけのブレーキをすには分だった。
カチリ、とさな音がした。
子がゆっくりとき始める。
坂へ入れば速度がつき、その先の岩だらけの斜面へ落ちていく。止めるものは何もなかった。
加奈は両へ力を込めた。
2か以、夜ごと歯をいしばって目覚めさせてきただった。
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の指をかすことから始めた。首を回し、膝へ力を入れ、太ももの筋肉を収縮させるところまで戻してきた。
加奈はの裏で、子のフットレストをく踏みつけた。
子が止まった。
全が震えた。
太ももが細かく痙攣し、ふくらはぎから首まで、焼けるような痛みがる。
2かまで何の覚もなかったが、今は自分の体と子のさを支えている。
加奈は顎が砕けるほど歯をいしばった。
痛かった。
だがその痛みは、がきている証拠だった。
子が完全に止まったことを確認すると、加奈はきく息を吐いた。
そして顔をげ、健が消えていったを見た。
の姿はもうない。
今頃、健はエアコンの利いた内で、級レストランへ向かっているのだろう。加奈がぬまでにどれほどがかかるかなど、考えようともしていないはずだった。
加奈は乾いた唇をいた。
「田健」
声は細かったが、はっきりしていた。
「私の目ので玲奈と祝杯をげていた、その醜い声が、あなたのを終わらせるわ」
言葉は々のへ消えていった。
加奈はブランケットのからスマートフォンを取りし、伊藤へ話をかけた。
「今です。夫が逃しました。通話も録音できています」
話を切った瞬、全から力が抜けた。
加奈は首をろへ倒し、青い空を見げた。
頬を流れたのは汗だけではなかった。
薬で識を失ったふりをしながらみ込んだり。
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