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"車椅子妻の断罪" 第5話

「はい。伊藤です」

加奈はいたが、最初の言葉がなかった。

昨夜聞いた会話が蘇り、喉が詰まった。

「伊藤先……」

ようやく絞りした声は震えていた。

「鈴加奈です。助けてください」

伊藤は何も急かさなかった。

「鈴さん。落ち着いて話してください。今、どこにいますか」

その言で、加奈はようやく息を吸うことができた。

薬で識を失っているに指印を押されたこと。夫が嘘をつき、リハビリを止させたこと。そして昨夜、で殺すという計画を聞いたこと。

加奈は1つずつ、すべて話した。

話の向こうでい沈黙が流れた。

やがて伊藤がい声で告げた。

「今の午、病院へ伺います。ご主の面会ならないを教えてください」

2、伊藤は病を訪れた。

彼はドアを閉め、持ってきた鞄からさな黒い装置を2つ取りした。

1つは性能の型録音。もう1つはGPS発信だった。

「鈴さん。ご主が本当にあなたをへ置きりにするなら、その瞬を完璧な証拠として残します」

伊藤は録音を患者の内側へ縫い込み、GPS発信をブランケットの裏へ隠した。

「最まで、何もらないふりを続けてください」

加奈は黙って頷いた。

「すでに調査員をかしています。指印を押された類が、どの関を通り、どこへ移されたのかを追わせています」

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伊藤は加奈のを握った。

「今からこの病は、法廷へ提する証拠の収集現です。ご主がここでにする言葉は、すべて自分自へ向けられた刃になります」

伊藤がった、加奈は患者の内側に隠された録音の位置を確かめた。

からは何も見えない。

だがそのさな装置がそこにあるだけで、加奈の呼吸はくなった。

もう1ではなかった。

から、健の態度が自然なほど優しくなった。

果物の皮を剥き、加奈の髪を撫で、額へづける。週末がづくと、何度も同じ言葉をにした。

気が良かったら、に当たりにこうか」

加奈はその優しさのっていた。

奥へ連れてかれるづいているのだ。

額を撫でられるたび、指先がたくなった。それでも表にはさない。

首をし傾け、目を半分閉じ、相の言葉を理解するまでがかかる患者を演じ続けた。

「今週のへドライブにこう」

に言われると、加奈はゆっくり頷いた。

その夜、伊藤へいメッセージを送った。

です。くと言っています〉

3分、返信が届いた。

〈承しました。準備します〉

の朝、加奈はもしていなかった。

窓のが黒から紺へ、紺からへ変わっていくのを見ながら、今起きることを何度もで確認した。

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は自分をへ捨てにく。

そして自分は、それを止めずにへ乗らなければならない。

患者の内側にある録音。ブランケットに隠されたGPS発信。充を終えたスマートフォン。

すべてが所定の位置にあることを確かめた。

8、健が病へやってきた。

いシャツにはアイロンがかかり、サングラスをへ載せている。片にはクーラーボックスを持ち、元には余裕の笑みが浮かんでいた。

「加奈、今は最気だぞ。の空気を吸いにこう」

護師ので健は加奈を丁寧に抱きげ、子へ乗せた。

しでも気分転換になればとって」

護師はしたように微笑んだ。

「奥様もばれるといます」

エレベーターで1階へり、病院の玄関をる。

加奈の臓は激しく脈打っていた。それでも首を垂らし、目を半分閉じ、呼吸を定に保った。

の黒いSUVへ加奈を乗せると、健子をトランクへ積み、運転席へ座った。

病院をた直、健が変わった。

ダッシュボードのを伸ばし、ドライブレコーダーの源コードを抜く。続いてスマートフォンの位置能を切った。

バックミラーに映る夫の指のきを、加奈は見逃さなかった。

痕跡を残さないための準備だった。

は都を抜け、へ入った。

1ほどった部のりる。舗装されたはやがて途切れ、砂利だらけのへ変わった。

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