"9,000億円の離婚届" 第15話
全部、あなた自の欲さが招いた結果です」
それだけ言い、私は浩司から目を逸らした。
その、浩司は懲戒解雇され、退職も支されなかった。横領の返還、宅ローンの残債、会社からの損害賠償請求がなった。
あのは競売にかけられ、子が見ていた級マンションも、温泉も、エステも全て消えた。
親戚からも見放された2は、築50い古いアパートへ引っ越したと聞いた。浩司は雇いの仕事で暮らし、子は腰を悪くして、ほとんどへられなくなったという。
彼らが私のへ関わることは、2度となかった。
数週、私はさんと京駅の改札をた。
見げるほどいガラス張りの丸の内セントラルタワー。父が私へ残してくれた、約9,000億円の資産だった。
最階のオーナー専用へ入ると、京のを望できる窓のに、古い族写真が飾られていた。
若い父と母、そして幼い私が笑っている写真だった。
「お父様は、ここからいつも京のを眺めておられました」
さんが教えてくれた。
「ゆみは今頃、どこかでパートをしているだろう。く自由にしてやりたいと、何度も話しておられました」
私は父の写真のに置かれた革張りの子へ座った。
涙がからから溢れた。
浩司や子に傷つけられたには、決して流せなかった涙だった。
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泣けばが壊れてしまうと分かっていたから、28、全てをみ込んできた。
今流れているのは、父のいに触れた温かい涙だった。
「お父様は、ゆみさん自が決断するのを待っていたのだといます」
さんが静かに言った。
「誰かに言われて別れるのではなく、ご自のでちがり、鎖を断ち切る力を取り戻してほしかったのでしょう」
私は父の写真を見つめた。
父は、私が「自分1ではきていけない」とい込んでいることまでっていた。だから箱の罠を残し、私自ので最の決着をつけさせたのだ。
「これから、どうされますか」
さんに尋ねられ、私はし考えた。
「豪華なマンションにも、級なにも興はありません。さな平のが欲しいです。当たりがよくて、庭にしを植えられるようなが」
私は、自分のを見つめた。
「それから、このビルの収益のくを、介護施設や、1で暮らす齢者を支援する団体へ寄付したいです」
父を介護していた病院には、族に見放され、孤独に過ごす齢者が勢いた。これほどの財産を私1で使うことなどできない。
父や私のように、静かにきたいたちのために使いたかった。
さんは微笑み、古い帳を取りした。
「実は、お父様から、こう言われていました」
帳をき、読みげる。
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『ゆみはきっと、贅沢はいらないと言う。庭にを植え、困っているのためにを使うと言うはずだ。そのは、あの子の好きなようにさせてやってくれ』
私は驚いて息をんだ。
写真のの父が、しだけ照れたように笑っている気がした。
半、季節はになった。
私は都からしれた、静かな宅の平で暮らしている。さな庭には、父の好きだったパンジーとチューリップを植えた。
朝は自分のためにお茶を入れる。子の声で起こされることも、浩司の嫌を取るためにや汗をかくこともない。
静かで穏やかな、私だけのが流れている。
財団を通じて寄付した介護施設からは、折、謝のが届く。縁側でそのを読みながらむお茶は、何よりもおいしかった。
ひび割れて血の滲んでいた指先も、今ではすっかりきれいになった。それでものひらには、昔の傷跡とさない部分が残っている。
私は、それを恥ずかしいとはわない。
父を最まで介護した、私の誇りい勲章だからだ。
のある、さんと父の墓参りへった。
当たりのよい霊園では、桜のびらがにっていた。墓をきれいに洗い、父が好きだった100円のプリンを供えた。
価な菓子より、父はきっとこちらをぶ。
線へをつけ、静かにをわせる。
「お父さん。私、今とても幸せだよ」
ので語りかけた。
「毎、庭のにをあげて、ゆっくりお茶をんでるの。
お父さんが残してくれたものも、ちゃんと誰かの役にっているからね」
が吹き、桜のびらが肩へ落ちた。
父が「よくやったな」とを撫でてくれているようだった。
帰り、緩やかな坂をりながら、私は胸いっぱいにの空気を吸った。
たいので浩司に突きばされ、だらけになったが、い昔のことのようにえた。
私を苦しめた偽りの族は、もうどこにもいない。彼らは自分の欲に溺れ、自ら全てを失った。
今の私には、む気持ちさえ残っていなかった。
ただ、私のから完全に消えたことへ、静かに謝している。
振り返り、父の墓がある方をもう度見げた。
28続いたいは、終わった。
これからは誰かのためにするのではなく、自分のに正直にきていく。
父が守ってくれた命と、しいを抱きしめながら、私はを向いた。
そしてののへ、自分ので力く歩を踏みした。
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