"9,000億円の離婚届" 第11話
表は穏やかだったが、胸のには静かな炎が燃えていた。
午10、弁護士とともに、浩司と子が待つへ向かった。
のには、すでに何台ものがまっていた。浩司の叔父や伯母など、親戚が集まっているようだった。
玄関をけると、居から声が聞こえてきた。
「本当に、とんでもない嫁をもらったものね。父親の遺産を独り占めしようとするなんて」
子が、私を悪女として親戚へ吹き込んでいるらしい。
私は靴を脱ぎ、静かに襖をけた。
広い居には、10ほどの親戚が座っていた。座には浩司が腕を組んでふんぞり返り、その隣に子がいた。
さらにろには、親族でもない美穂まで座っていた。
私が入った瞬、部はを打ったように静まり返った。たい線が斉に向けられた。
「よく逃げずに来たな、ゆみ」
浩司が歪んだ笑みを浮かべた。
「親戚の皆さんに、おの悪事を聞いてもらっていたところだ」
子はハンカチで目を押さえるふりをした。
「私たちは28、ゆみさんを本当の娘のようにがってきたんです。それなのに、こんな恩を仇で返されて……」
私は反論せず、座へ座った。さんはしれた所で、静かに控えた。
浩司が目ののテーブルを叩いた。
そこには、ので奪った父の箱が置かれていた。
「さあ、ゆみ。
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観して、この箱の鍵をせ」
浩司は親戚へ聞かせるように声を張った。
「このには、親父さんが隠していた本当の遺産が入っている。こいつはそれを独り占めするため、へ差し押さえをかけたんだ」
親戚たちがざわめいた。
「鍵を渡し、差し押さえを取り消す類へ署名しろ。そうすれば、箱のは慰謝料代わりに俺が管理してやる」
美穂もろで笑っていた。
私は浩司の目を見た。
「その箱のを、本当に皆さんのでけていいんですね」
「当たりだ。おの嘘を暴いてやる」
私はバッグから、古い鍵を取りした。
テーブルへ置いた瞬、浩司の目に欲なが宿った。彼は鍵を奪い、震えるで鍵穴へ差し込んだ。
鈍い音がして、錠がいた。
浩司はゆっくり蓋を持ちげた。
しかし、に入っていたのは札束でも、権利でもなかった。古い切帳と、消印の押された葉の束だった。
「な、何だ、これは」
浩司は切帳を乱暴にめくった。どこを探しても通帳など入っていない。
「はどこだ。隠し座の通帳は!」
切帳をテーブルへ叩きつけると、父が切にしていた記切が畳へ散った。
「価値はほとんどありません。ただの父のいです」
私が答えると、親戚のからたい声ががった。
「何だ、ガラクタじゃないか」
「あれだけ騒いで、親戚を呼びつけたのに」
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先ほどまで私へ向いていた疑いの線が、浩司へ移っていった。
子がちがった。
「騙されないわよ。ゆみさんが、おだけ抜き取ったんでしょう」
「そうですよ。3,000万円くらい、どこかへ隠しているはずです」
美穂がわず声を張った。
具体な額を聞き、親戚の1が美穂を見た。
「浩司。さっきからろにいる、その若い女性は誰だ。親族会議になぜ部者がいる」
浩司は慌ててを振った。
「彼女は会社の規事業を伝っているだけだ」
嘘をねるほど、彼の元は崩れていった。
浩司は話を逸らすように、内ポケットから類を取りした。仮処分の取りげと、私が判を押した婚届のコピーだった。
「箱にがないなら、もういい。さっさとこの類へサインしろ」
浩司は勝ち誇ったように婚届を叩いた。
「おはもう俺の妻じゃない。このに用はないだろう。ひとつでていけ」
子もから目線で続けた。
「この派なは、浩司の稼ぎで建てたのよ。嫁の分際で差し押さえるなんて許されないわ」
私は黒いペンを取りした。
「やっと諦めたか」
浩司が笑った。
しかし、私は署名しなかった。
「このは浩司さん名義です。でもと、毎のローンを払ってきたのは、私のパート代です」
部の空気が凍った。
「過10分の細も残っています。浩司さんの料は、子さんの買い物と、見栄のための交際費でほとんど消えていました」
親戚たちの目が、浩司と子へ向いた。
「子さん、それは本当なのか」
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