"床下に消えた29年" 第1話
2023、岐阜県の部に点するさな集落で、夜に災が発した。
最初に異変に気づいたのは、古民かられた所にむ隣民だった。窓のに赤いが揺れているのを見つけ、の暗ので建物が燃えていることを確認すると、すぐに消防へ通報した。
現となったのは、20世紀半ばに建てられた古い造だった。
本で古民と呼ばれるその建物は、柱も壁も乾燥しきっていた。最初の消防隊がをって現へ到着したには、根から激しい炎が噴きし、全体が赤黒いに包まれていた。
消防士たちは両を止めると、すぐにホースを延ばして消活を始めた。放を受けた瓦が音をてて崩れ、燃えた片とのが夜空へいがっていった。
しかし、の回りはあまりにもかった。
古い梁や柱は数分のうちに燃え広がり、の内部へ入ることも困難な状態になっていた。消防士たちは周囲への延焼を防ぎながら放を続けたが、建物そのものを救うにはすでに遅かった。
に及ぶ作業の末、ようやく炎の勢いがまった。
根の部分は落ち、壁もところどころ倒れていた。かつて部だった所には、黒く焼けた柱や瓦、濡れたが折りなり、古民は原形をほとんど失っていた。
災が鎮圧されると、消防士たちは瓦礫の除と逃げ遅れたがいないかを確認する作業へ移った。
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このには齢の男性が1で暮らしていると隣民から聞かされていた。消防士たちは慎にを確かめながら、焼け残った部を1つずつ調べていった。
やがて、1階の部だった所から齢男性の遺体が発見された。
遺体の位置と現の状況から、男性は災に気づいたものの、のへ逃げすことができなかったと考えられた。予備な確認では、因は煙を吸い込んだことによる窒息とみられた。
それだけであれば、古い造宅で起きた劇な災として処理されるはずだった。
建物の老朽化、急速な延焼、そして逃げ遅れた独居の齢者。消防士たちも当初は、痛ましいものの特別に解な点のない災だと考えていた。
だが、現の確認はまだ終わっていなかった。
齢男性の遺体が運びされたも、消防士たちは焼け落ちた建物の内部に残っていた。が完全に消えているかを確認し、崩落の危険がある部分を調べながら、瓦礫をしずつ取り除いていった。
の奥にあった部は、と放によって特に激しく損傷していた。
板のくが炭化し、そのを支えていた材も脆くなっていた。消防士の1が焼けた柱を避けながらをめた、靴ので板が鈍い音をてた。
次の瞬、板がきく割れた。
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消防士の体は崩れたとともに沈み、腰からが暗い空へ落ち込んだ。周囲にいた仲がすぐに腕をつかみ、瓦礫のへ引きげようとした。
幸い、消防士にきな怪はなかった。
しかし、踏み抜いたのには、誰もをらなかった空が広がっていた。古民の図面にも、隣民の話にもてこなかった、暗く乾燥したの空だった。
消防士は瓦礫の縁にを寄せ、携帯していた懐灯を穴のへ向けた。
細いが焼けた材を照らし、その奥にある平らな板のをゆっくりとなぞった。そしてがある所で止まった、消防士はのきを止めた。
そこには、の形をしたものが横たわっていた。
黒く焼けた齢男性の遺体とは、まったく異なる姿だった。炎にもにも直接触れず、いをかけて乾燥したの遺体が、板のに固定されていた。
「がいる」
穴のそばにいた消防士が、い声で仲に告げた。
だが、その物がきていないことは、懐灯のだけでもらかだった。遺体は何、あるいは何ものを経たように乾燥し、皮膚との部が板へ貼りついていた。
さらにをづけると、消防士たちは遺体の胴体とに巻かれたものを確認した。
古く変した幅広の革ベルトだった。
女性とわれる遺体は、複数のベルトでの板へきつく縛りつけられていた。