みかん小説
本棚

"天井裏の元彼" 第7話

だからレンズに映らない位置からり、慎いていた。

里奈が友を泊めた夜には、井裏からてこなかった。

里奈がだけ、物音をて、べ物を取った。

それは単に活に必な物をに入れるためだけではなかった。

里奈を混乱させるためだった。

自分の記憶を疑わせる。

周囲から信じてもらえなくする。

精神らせ、孤させる。

そしていつか、自分を必とする状態に戻す。

それが誠の目だった能性がある。

井裏の穴から、誠は里奈を見続けた。

眠っている姿。

着替える姿。

恐怖で井を見げる姿。

話し、自分がおかしくなったのかもしれないと泣く姿。

療内科でもらった薬をむ姿。

誠は、わずか数センチにいた。

里奈が井を見つめている、誠も穴の向こうから里奈を見ていた。

管理会社の作業員が点検けたも、誠は奥の暗に潜んでいたと考えられた。

灯のが届かない配管の裏で、息を殺していた。

作業員が「誰もいない」と言い、点検を閉める。

その声を聞きながら、誠は再び暗き始めた。

里奈が引っ越しを決めたも、誠は見ていた。

段ボールに荷物を詰める姿。

具を捨てる姿。

井を見げ、「もう終わりだから」と呟く姿。

しかし里奈がていった、誠も井裏をれたわけではなかった。

広告

しいが入居するまで、部は数かだった。

そのに誠が何を考え、どのように暮らしていたのかは分からない。

ただらかなのは、彼がその井裏で命を落としたということだった。

司法解剖の結果、誠の遺体にから暴力を受けた痕跡はなかった。

致命傷も、薬物を摂取した形跡も確認されなかった。

因は脱と衰

しかし、遺体が発見された位置は自然だった。

誠は井裏のでも特に狭い、梁と換気用の配管に挟まれた所に横たわっていた。

実際には、自らその姿勢になったのではなかった。

きが取れなくなったまましたと考えられた。

井裏には、誠が寝として使っていた比較広い空がある。

そこから点検や別の所へ移するためには、細い梁のを通り抜けなければならなかった。

ある、誠はその隙ってもうとした。

里奈の部りようとしたのか。

あるいは建物のようとしたのか。

詳しい目は分からない。

だが、誠は自分の体が通れる幅を見誤った。

を配管のへ入れたところで、胸と肩が挟まった。

へもめない。

ろへも戻れない。

腕をかす空もほとんどなかった。

くにの入ったペットボトルはあったが、が届かなかった。

誠は助けを求めた能性がある。

広告

しかし、井板と壁に阻まれ、その声はまで届かなかった。

仮に里奈が聞いていたとしても、それまで何度も音を訴え、誰にも信じてもらえなかった。

井から微かな声がしたところで、また自分の聴だとったかもしれない。

誠は、自分で選んだ隠れ所のけなくなった。

すぐの部にはがある。

蔵庫がある。

活している。

しかし、その数メートルの距を越えることができなかった。

、誠は狭い隙しずつ衰していった。

そして2013の初め頃、脱症状によってした。

ちょうど里奈が、引っ越しを決した期だった。

里奈が最の荷物を運びしていた、誠がまだきていたのかは分からない。

井裏から聞こえた最きな音が、誠が配管のに挟まった音だった能性もあった。

静かに何かを引きずるような音は、抜けそうともがいていた音だったのかもしれない。

しかし、それを確かめる方法はなかった。

警察は、誠のを事故と判断した。

者が関与した証拠はなく、誰かを刑事責任に問うこともできなかった。

自ら居の井裏へ侵入し、自ら作った隠れ所でけなくなった結果のだった。

里奈にとって、真相をったことは堵であると同に、たな恐怖の始まりでもあった。

自分は正気を失っていなかった。

聞こえていた音は本物だった。

消えたべ物も、かされた物も、すべて誠の仕業だった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: