"復讐とんかつの逆転便" 第3話
そうわなければ、復讐を続けられなかった。
ところが、予していなかったことが1つあった。
毎回届くとんかつ弁当が、驚くほどうまかったのである。
はきめ細かく、噛んだ瞬に気よい音をてる。
その奥から溢れす肉の旨にはみがあり、噛むほどに甘さが広がっていった。めても脂っぽさはなく、添えられたキャベツにもを抜いた気配がない。
最初は復讐の具として注文したはずだった。
しかし琢磨は、弁当の蓋をけるたび、無識に期待するようになっていた。
今も、あのがべられる。
殺景なオフィスで社員たちが帰った、琢磨は1で弁当を広げた。
広いマンションの窓から夜景を眺めながらべることもあった。
とんかつをに運んでいるだけは、議と代のりも、会社へのもから消えた。
復讐で始まった注文が、いつのにか1ので唯、琢磨が穏やかになれるをみしていた。
注文を続けて3週ほどたった夜、いつものようにインターホンが鳴った。
玄関をけると、綾音がっていた。
ここまでは、いつもと同じだった。
だが弁当の袋を差しした、綾音はそのをれず、くをげた。
「堀川君」
琢磨は眉を寄せた。
「何だよ」
「いつも注文してくれて、本当にありがとう」
綾音の声はかすかに震えていた。
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「うちのお、今すごく厳しくて。お父さんもお母さんも、毎ほとんど休まず働いてるの。それでも返済が追いつかなくて……」
琢磨は黙って彼女を見た。
綾音は両を体のでね、さらにをげた。
「堀川君が何度も注文してくれるおかげで、本当に助かってる」
琢磨が待ち望んでいた景だった。
かつて自分を見していた女が、目のでをげている。
本来なら、胸がすくはずだった。
だが実際に湧いてきたのは、予していたほどのびではなかった。
琢磨が何も答えられずにいると、綾音はしばらく迷った、もう度をいた。
「それと……ののこと」
琢磨の表がくなった。
「私、堀川君にひどいことをたくさん言ったよね」
綾音は顔をげなかった。
「自分が恵まれてることを当たりだとって、何も考えてなかった。を傷つけて、みんなが笑ったら、それで自分が偉くなったような気がしてた」
指先がさく震えていた。
「ずっと謝りたかった。本当に、ごめんなさい」
琢磨は何度も、この瞬を像していた。
いつか綾音が落ちぶれ、自分ので謝るが来る。
その、自分は笑ってやるのだとっていた。
おが馬鹿にした男は成功した。
おのは落ちぶれた。
ざまあみろと、そう言ってやるつもりだった。
しかし、目のでさくなっている綾音を見ても、胸のりはったほど燃えがらなかった。
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残ったのは、奇妙な居の悪さだけだった。
「……弁当、めるから」
ようやくた言葉は、それだけだった。
綾音は寂しそうに笑った。
「そうだね」
彼女は保バッグのから、さな包みを取りした。
「これ、うちで発してる凍とんかつの試作品なの。お父さんはに自信があるって言うんだけど、まだ商品にできるか分からなくて」
包みを琢磨へ差しした。
「よかったら、べてみて。にわなかったら、無理にを言わなくてもいいから」
琢磨が受け取ると、綾音はさくをげた。
「じゃあ、おやすみ」
エレベーターへ向かうろ姿を、琢磨は無言で見送った。
ドアを閉めた、しばらく包みを見つめた。
復讐するつもりだったのに、謝されている。
待ち望んでいた謝罪を受けたのに、像していたはどこにもない。
自分は何のために、何度も注文していたのか。
その問いに答えがないまま、琢磨は凍とんかつを凍庫の隅へ放り込んだ。
数の夜、琢磨は仕事を終えてマンションへ戻った。
蔵庫には相変わらず何も入っていない。弁当を注文しようとスマートフォンをに取った、凍庫に入れたままの包みをいした。
捨てようかとも考えた。
だが、綾音が差ししたの表がをよぎり、琢磨は包みを取りした。
簡単な揚げ方がかれたが入っていた。
温度を測り、凍のまま油へ入れる。