"消えた父子の23枚" 第2話
最の1枚として、輝は毛布に包まれたハルトへレンズを向けた。赤ん坊は熊のぬいぐるみを胸に抱き、涙の残る瞳で父親を見つめていた。
「これがおの本当の姿だ。いつか、おがこの写真を見られることを願っている」
シャッター音が狭い洞窟に響いた。直、入のから再び音が聞こえ、輝は素くカメラを岩の隙へ押し込んだ。
彼はハルトを毛布に包み直し、その隣にいメモを置いた。
――どうか私の息子を見つけてください。
彼の名は伊藤ハルトです。
彼はされるためにまれました。
輝は息子の額へ最のづけをした。名残惜しそうに頬へ触れた、涙を拭い、洞窟の入へ向かった。
「ごめんな、ハルト。でも、これがおを救う唯の方法なんだ」
洞窟をた輝は、追跡者に自分の居所をらせるように、わざときな音をてて反対方向へりした。背から男たちの叫び声ががり、音が斉に輝を追ってざかっていった。
洞窟には、毛布に包まれた赤ん坊だけが残された。父を呼ぶこともできないハルトの泣き声は、誰にも届かぬまま暗い岩壁のに響いていた。
そのを最に、伊藤輝と8かの息子ハルトは、奥摩のから跡形もなく姿を消した。
6の2023、京学質学科の学である田優斗と佐藤奈は、奥摩で岩の浸に関する調査をっていた。
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朝から斜面の層を記録し、洞窟付のを採取する作業を続けていたが、午になる頃には2とも疲れを見せ始めていた。
優斗が細い岩の隙にスコップを差し込んだ、のから属に当たるい音がした。彼はきを止め、隣で記録を取っていた奈を振り返った。
「ここに何かあるぞ」
2は岩を傷つけないよう、と型の具を使って慎にを取り除いた。やがて、乾いたの根にストラップが絡みついた、半分錆びたデジタルカメラが姿を現した。
「どうして、こんな所にカメラがあるのかしら」
奈はを払いながら、両でカメラを持ちげた。い湿気にさらされていたはずだが、本体にきな破損は見られなかった。
優斗は首を傾げ、源部分を指さした。
「くか確かめてみよう」
奈が源ボタンを押すと、本体がかすかに振した。青いランプが点灯し、暗かった画面にが戻った。
「いた……」
奈が驚いて声を漏らした瞬、カメラから赤ん坊の笑い声が流れた。続いて、男性の穏やかな声が聞こえてきた。
『ハルト。父さんがおをどれだけしているか、分かるか?』
優斗と奈は顔を見わせた。単なる登者の忘れ物ではないと、2は同に理解していた。
画面に最初に表示されたのは、赤ん坊を胸に抱く男性の写真だった。
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付は2017317。優斗が携帯話で付と所を検索すると、6に奥摩で父子が失踪した事件が表示された。
「伊藤輝、42歳。8かの息子、ハルトとともに失踪……」
奈は記事を読みげながら、写真の男性へ目を戻した。
「このたちよ。カメラが撮されたも、失踪したと同じだわ」
2は調査を断し、カメラを学の研究へ持ち帰った。周囲に学がいないことを確かめてから扉を閉め、保されていた写真を1枚ずつ確認し始めた。
全部で23枚あった。くは輝とハルトがを歩いたり、展望台で空を眺めたりしている、ごく普通の親子写真だった。
しかし、写真がむにつれて、2の表はくなっていった。背景の々のに、同じ物とわれるが繰り返し写り込んでいたからだ。
最初の写真では、はくれた所にっていた。次の写真ではしづき、5枚目では輝たちのむのすぐろにまで迫っていた。
「偶然じゃない」
優斗は写真を拡し、の位置を確かめた。
「誰かが2を尾していたんだ」
最の写真は洞窟ので撮されていた。ハルトは熊のぬいぐるみを抱いていたが、の胸元にはさな血痕のようなものが付着していた。
さらに、洞窟の入から差し込むのに、のが伸びていた。撮者の輝とは別の誰かが、入のすぐまで来ていたことになる。