"21年目の誤公式" 第7話
「桜井ひなさん、台へお越しください」
博士に名を呼ばれ、ひなは母のをした。
元が震えているのをじながら、歩ずつ台へんだ。照に照らされたさなが、背の幕へきく映った。
マイクのにつと、目のには数えきれないほどの顔があった。
ひなは度を向き、祖父の声をいした。
――違っていても、正しくても、数字とまっすぐ向きえばいい。
ひなは顔をげた。
「私は、特別なことをしたとはっていません」
さな声だったが、ホールの隅まで静かに届いた。
「数式が、変な音をしている気がしたので、しだけ直したかったんです」
客席から笑い声はがらなかった。
全員が、ひなの次の言葉を待っていた。
「でも、誰も信じてくれなかったは、すごく怖かったです」
声がし震えた。
「私が違っていたら、変な子だとわれるかもしれないし、また笑われるかもしれないといました」
母は台袖で、元を押さえながら娘を見つめていた。
「それでも、私は数字を信じました。おじいちゃんが、数字は嘘をつかないって教えてくれたからです」
ひなは客席を見回した。
「私は本で、おじいちゃんから、数はでじるものだと教わりました。言葉が通じなくても、数字なら世界のと話せるって」
ホールので、くのが静かに頷いていた。
広告
「正しく並んでいる数字は、静かな音がします。でも、違っているは、どこかの音が変わります。だから私は、その音を聞いただけです」
ひなはマイクので、さく息を吸った。
「これからも、違っているかもしれないとっても、自分がじた音を確かめたいです。誰かに笑われても、数字とまっすぐ向きいたいです」
会の番ろから、ゆっくりと拍が始まった。
それは次第にきくなり、ったままの々全体へ広がった。拍のには、女の才能への驚きだけでなく、自分たちが見落としていたものへの反省も込められていた。
メイヤーズ博士はひなの隣にち、再びをげた。
「桜井ひなさん。あなたは私たちに、科学にとって最も切なことを教えてくれました」
ひなは博士を見げた。
「それは謙虚さであり、違う見方を受け入れることです。そして、正しいとった声にを傾ける勇気です」
拍はい、鳴りやまなかった。
ひなのには、それがきな音の塊ではなく、しずつなりって1つになった、美しい数式のように聞こえていた。
特別講義の翌、学は公式記録を更した。
21に発表された公式の部に誤りがあり、部からの指摘を受けて再検証した結果、修正がわれたことが正式に記載された。そこには、指摘者が本から訪れた8歳の女であったことも記された。
広告
物理学棟の入には、、さなのプレートが取り付けられた。
「この公式の修正は、8歳の本女の指摘によってわれた。学びに齢も国境もない」
ひなは完成の原稿を見せてもらったが、自分の名をきく残すことには戸惑いを見せた。
「私だけがすごかったみたいになるのは、嫌です」
その言葉を聞いた学側は、ひなの名を記録には残しながらも、プレートには発見のをに刻むことにした。
ひなが求めていたのは、賞賛ではなかった。
違っていたものが正しくなり、次にその式を見るが同じ誤りを受け継がずに済むこと。それだけで分だとっていた。
数、母娘が本へ帰国する朝を迎えた。
まだ空がみ始めたばかりの朝、アメリカの国際空港には、いがけない々が集まっていた。学の教授や研究員、公式に関わる研究を続けていた物理学者たちが、ひなを見送るために来ていたのである。
ひなはの袖をえながら、母のを握ってっていた。
学での騒ぎが始まると同じように、さな体にはきめのリュックサックを背負っていた。しかし、その表は数とはし違っていた。
女性スタッフも、見送りの々のにいた。
最初にひなの指摘を受け流した物だった。
彼女はひなのに歩み寄ると、目線をわせるために腰を落とした。
「最初に笑うような言い方をして、ごめんなさい」