"21年目の誤公式" 第5話
教授たちが待つ、ひなは黒板の数式をいしながら、ゆっくりとをいた。
「音が、っていなかった気がしました」
教授たちが目を見わせた。
「音、ですか?」
「おじいちゃんが、数式は音楽と似ているって言っていました。流れがっていると静かだけど、どこか違うと、そこだけ変な音になるって」
科学な専用語ではなかった。
しかし、ひなが示した修正が実際の計算と致している以、その覚を単なる子どもの空だと切り捨てる者はいなかった。教授たちは初めて聞く説に戸惑いながらも、真剣にを傾けていた。
その夜、学の公式サイトに掲載されていた公式の画像が、修正のものへ差し替えられた。画像の隅には、「再検討により部を修正」とだけ、さな文字で記されていた。
ひなの名は載らなかった。
母はそのことを気にしていたが、ひなはしい画像を見つめながら、どこかしたように息を吐いた。
「これなら、もう変な音がしない」
名がられなくても、数式が正しくなったことが嬉しかった。
けれど、学のでは、ひなの話がしずつ広がっていた。
「例の公式は、8歳の子どもの指摘で直されたらしい」
「何もの教授が徹夜で確認したそうだ」
「本当に本から来た見学者なのか」
噂は学から研究員へ、研究員から別の教授へと伝わり、ついに物理学部の主任教授であるメイヤーズ博士のにも届いた。
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メイヤーズ博士は、公式が最初に発表された当の資料まで取り寄せ、修正と修正の計算を自分で確かめた。過21の記録をたどるほど、女の指摘が偶然ではないことがらかになった。
午になり、ひなと母は学側から改めて呼びされた。
今度案内されたのは、先ほどよりも広い特別会議だった。そこにはメイヤーズ博士、学部、複数の研究者に加え、学から招かれた2の審査員が座っていた。
全員のには資料が積まれ、央の壁にはきな黒板が用されていた。
部の雰囲気は、回よりもはるかにかった。違いを見つけた女を歓迎するというより、誰も説できない事実を確かめる審査のにかった。
しかし、議なことに、ひなのは静かだった。
ここまで来た以、自分がじたことをそのまま伝えるしかない。違っていたとしても、数字ので嘘をつかなければいいとった。
「桜井ひなさんですね」
メイヤーズ博士が子からちがり、穏やかな声で呼びかけた。
「まず、あなたの指摘に謝します。私たちは公式の部に誤りがあったことを確認しました」
ひなは母の横で姿勢を正した。
「ただ、どうしてあなたが気づけたのかを、もうし詳しく教えてほしいのです」
メイヤーズ博士の言葉には、のスタッフのような軽さはなかった。
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ひなを子どもとして扱うのではなく、1の発見者として向きおうとしていた。
ひなはポケットから、さく折りたたんだを取りした。
祖父のノートから写した、波の形と数の並びが描かれただった。余には幼い頃のひながいた音符のような印が、いくつも残っていた。
「私は、数字を音みたいに覚えています」
ひながそう言うと、部の空気がわずかに変わった。
「正しく並んでいると、静かなんです。でも、あの式のあの部分は、音がなって、がちゃがちゃしているじがしました」
メイヤーズ博士はを受け取り、しばらく見つめた。
「ここで、もう度やってみてもらえますか?」
部審査員の1が、慎に尋ねた。
ひなは黒板を見げた。
母がをすと、さな背で部の央まで歩いた。黒板のにち、用されていたチョークを握る。
く息を吸ってから、ひなは式をき始めた。
記号、係数、変数。
1つずつ確かめるように、ゆっくりときめていく。途で何度かを止めると、を澄ませるように目を閉じた。
誰も声をさなかった。
やがてまでたどり着いたひなは、チョークの先で1つの係数を示した。
「ここです」
黒板にかれた数字を、別の値へ直す。
「この係数が0.01だけきすぎます。このままだと、振の流れがしずれてしまいます」